ラストエリクサーをすてろ!
「ラストエリクサー」を知っているだろうか。
ファイナルファンタジーやクロノ・トリガーといったゲームに出てくるアイテムのひとつだ。
このラストエリクサーというアイテム。
これがなかなかに使えないのである。
その使えなさといったら、手に入れてからクリアするまで1度も使わずに終わってしまう人も多く、アイテム欄の容量を圧迫するので、もういっそゲームから除外してもいいんじゃないかと思うぐらいだ。
もちろん僕自身もほとんど使えたことがない。
もったいなくて。
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ラストエリクサー
味方キャラクター全員のHPとMPを全回復することができる、かなり上級なアイテムである。
ほとんどの場合、アイテム店等での購入はできず、できても相当高価なため、シリーズを通して貴重なアイテムとして認知されている。
こんなのやすやすと使えるわけがない。
「いまじゃない」
窮地におちいるたびに頭の奥から声が聞こえるのだ。
「まだ他のアイテムでなんとかなる」
ぎりぎりの状況でも心が許してくれないのだ。
「なんか持っておきたい」
なんか持っておきたいのだ。
そうこうしているうちにいつの間にか存在を忘れたまま、ゲームをクリアしている。
静かにたたずむラストエリクサー。
ねえ、僕は一体なんのために生まれたの?
そんな悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。
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思えば現実世界でもそんなことが多々ある。
macbookの箱を二度と使うことはなさそうなのに
「なんか格好いいから」という理由で長らく持ち続けたり、
イベントで使った小道具を「いつかまた使うかもしれない」と押入れの奥にしまい込んだり、
一瞬、料理熱が上がって買い込んだ調味料を、また料理をしたくなった時のために残し続け、気づけば期限が2年も切れていたり、
病院でもらった薬を余らせて、なんの効果がわからなくなってもなぜか持ち続けてしまったり、
使わないまま忘れ去っていくものが驚くほどある。
調べてみると、まさに「ラストエリクサー症候群」と呼ばれていた。
要はもったいない病である。
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このラストエリクサー症候群、物ならば笑い話で済むが、アイデアだったり、自分の中の常識に作用してしまうと笑えない事態を引き起こすことになる。
人生とは選択の連続だ。
決断にはスピードが重要だ。
選択が増えすぎると決断は鈍る。
余計な荷物があるとスピードも体力も奪われる。
新しい道を選んだほうがいいのはわかっているのに、今までのやり方や、アイデアを捨て切れずに固執して、結局何も変わらず終わってしまう。
変わらないだけならいい。変わらないことで終わってしまうことだってある。
ゲームはまだいい。
使わずに置いておいてもいつか本当に役立つ時が来るかもしれない。
しかし現実ではそうはいかない。
使わなかったアイテムはどんどん腐っていき、やがて毒になっていたりする。
ラストエリクサーだと思っていたものが、そもそも何も起こらないただの水だったりもする。
もったいない病は一見すると持ち物が増えてお得なように感じるけど、実はコストとリスクと管理費がかさんで損をすることの方が多い。
アイテムは使いどきが来たらすぐに使ってしまおう。
もしくは、迷いをなくすため、いっそ捨ててしまおう。
そんな僕の冷蔵庫には、使うことのない黒酢がたたずんでいる。
ごとだい は せっとくりょく を うしなった!
ごとだい は しんでしまった!
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おしごとのこと