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「がんばれ!」の表賞状

小学2年生のマラソン大会はビリから2番目だった。

スタートダッシュこそ好調、というか後先考えずに最初は前の方におどり出るものの運動場を抜けて校外にでるころにはもうゴール手前かというぐらいヒイヒイと息を切らしてしまっていた。

竜頭蛇尾。あれよあれよと順位は下がっていく。もう諦めて歩こうかと何度も思ったけどビリになるのだけは嫌だ。なさけない。恥ずかしい。そんな羞恥心を燃やして残りカスみたいなエネルギーしか残っていない手足を動かした。

学校に戻ってきた。僕を迎え入れるたくさんの保護者や先生や先にゴールした同級生たち。「がんばれ!」の声が僕をどんどん惨めにしていった。もうビリだろうがビリから2番目だろうが関係なかった。ただただ恥ずかしくて泣きそうだった。


思い返してみればマラソンだけではなくて僕の人生やることなすことほとんどがそうだったように思う。

最初は勢いよく飛び出して、うまくいかなくなって、追い抜かれて、恥ずかしさで止まることもできなくて、自分が惨めになってばかりだった。

少し違うのはマラソン大会は学校行事だから嫌でもゴールしなきゃいけなかったけど、自分で決めたことは勝手に止めることができる。止まる勇気がなかったからこっそり競技自体をやめて中途半端に逃げてきたのだ。


昨日公園をゆっくりと散歩してみた。花の名前をひとつひとつ見ておもしろいなあと思ったり、草木の世話をするおじいちゃんや入学式を待つ学生たち、知らない建物に入っていくサラリーマンたちを見て、みんな同じに見えるけどそれぞれに好きなものや抱えるものがあるんだなどと考えたりした。

自転車で走るより5倍ぐらいの時間がかかったけど、ゆっくり歩いた方があっという間だった。帰ってツイッターを見ていると今まで普通に感じていたタイムラインがとても忙しく、余裕なく見えた。

みんな走っていて、足の速い誰かに追いつきたくてペースを上げて、後ろからくる誰かに抜かれるのが怖くてもっと無理して、それを見た周りの誰かがまたギアをあげる。地獄のマラソンになっていたのかもしれない。

1位はすごい。格好いい。モテるだろうし賞状だってもらえる。でもビリでもなんでも走りきることは格好いい。すごいかはわからないけど、栄誉ももらえないけどやめずにゴールをめざせば「がんばれ!」って言ってもらえる。


そうだ。あの「がんばれ!」は僕がかわいそうだからじゃなくて、最後まで走ろうとした僕への目には見えない表賞状だったのだ。

僕を惨めにしていたのはいつも完璧主義の自分で、周りの人はかわいそうなんて思っていなかった。

足の速い人を見て焦らなくていい。花の名前や一生懸命に生きる心を見失わないスピードで、視野が狭くならないペース配分で、自分自身がゴールできることに喜びを持って、格好良く走りきってやればいい。

今度はこっそりやめたり、最終トラックでうつむかずに、胸をはって笑顔でゴールラインをまたぎたい。

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出会えてよかった。過去のいろんな出来事にそう言っていれるように生きていきたい。

後藤大
「弱虫のままで理想に嘘をつかない」
音楽と文章を中心にものづくりをしています。

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後藤大
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