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デジタルエージェンシーで見えた世界〜広告業界で働く人、目指す人に伝えたいこと〜

久しぶりにnote書きます。
簡単に自己紹介しますと、総合広告代理店で11年従事し、その後起業。コロナ禍の中再就職を決断。
移りゆく時代の中で、社会が何を求めているのか、広告やマーケティングの再定義するべくリスキリングとしてデジタルエージェンシー大手で働くことを決めました。
この度デジタルエージェンシーにて約一年半ほど勤務しましたが、広告業界20年以上歩んできた自分が思い描く世界とは想像以上にかけ離れていました。

デジタル広告台頭でもたらした構造変化

今やデジタル広告はテレビ広告を抜き、広告市場の中で存在感を示している。失われた30年間のど真ん中を広告業界で過ごしてきた私にとって右肩上がりの市場と企業を初めて体感する機会となった。
企業が広告宣伝費と計上される科目に類するものが、広告サービスとして取り合いとなる構図のため総合広告代理店もデジタルエージェンシーも同じ枠組みの中で競合することになる。今までの広告の在り方に疑問を持つクライアントや風呂敷を広げていい加減にセールスしてきた広告代理店を次々とリプレイスしていく。この競争原理は政治で例えるなら新興の政党が次々と票を獲得していき政局が変わっていく。そんな時代が到来したのだと思う。しかしそんな時代ではあるが電通は全く動じない。そこにはまだデジタルエージェンシーの考えやサービスでは到底及ばない世界があるからと言える。

ポジショニングでデジタルがリプレイスに成功

総合広告代理店はデジタルエージェンシーにリプレイスされてきた背景として、デジタルの課題を解決できないなどの理由がある。時代の流れとデジタルエージェンシーなら解決できるというイメージから、デジタルへシフトすることやDX化を求められた企業側のマーケッターもまた参入を認めた格好である。総合広告代理店はメディアを扱える既得権益がビジネスの中心だったが広告の在り方そのものの考え方を問われることになり逆風となっていった。効果測定をするということをあまり求められなかった領域に数値の把握が可能になり、デジタルエージェンシーが台頭することとなった。

ダイレクトマーケティングの延長線上にあるデジタル広告

私は幸いにしてダイレクトマーケティングに携わってきた経験がある。折込チラシのスプレッドランを行ったり、インフォマーシャルなども手がけてきた。そのノウハウやナレッジはデジタルにも転用してきた。実際デジタルでも数本のバナーやLPを制作し検証したり、売れるネット広告社のシステム導入をしてみたりと様々な取り組みを行ってきた。一方で一番大切なのはビジネスへのインパクトがどこにあるのかを考えること。見える数値を追い続けるのは決して間違ってはいないが、KPIだけに捉われてしまうと全体像が掴めなくなることは今までの経験での落とし穴があるというのはクライアントからも教わった。広告の数値化できるポイントは新規獲得の入口しか見えない。そのため議論が終始新規獲得をどう効率良く行っていくかという視点になりがちである。そのための広告はまず疲弊していく。なぜならば事業が拡大すればするほど広告投下する予算が膨らんでいくからである。クライアントもそこに気づいた瞬間に広告に頼ることを辞める。やずやもハズキルーペもライザップもほぼ同じ道を辿っている。新規獲得したユーザーをどうナーチャリングしていくのかまでのイメージしながら、広告をどんな目的でいつまで使うのかを考えながら行っていくことを示唆する必要がある。ダイレクトレスポンスにしか寄与できない広告(デジタル、オフライン問わず)はもはや使い捨てに近い。広告というものは投資という側面があることを忘れてはいけない。

KPI設計のコミットについて

デジタルエージェンシーだけでなく今の時代広告業界はこのKPIに振り回されていることが実情にある。KPIを立てることができない施策は採用できないという企業がたくさんある。私の根っこには1人でも多くファンを育成するためにどうするかという視点で向き合っている。そのためKPIに対して重要視していない。その理由は「絵に描いた餅」だからである。もちろん立てることは必要だとは感じているが、指標としてふわっとしておくものと思っている。そのためKPIを達成したから喜んだり、ダメだったら怒られたりすること、コミットするという代物ではない。何が見えたかなど数値以外に得たことの方が大切であり、この施策で思いがけずこういう人が反応したという新しいヒントが得られることの方が重要だと考える。
そういう観点から目標KPIが達成できたことで喜べず、達成できなかったら謝るという構造にあるためあまり重要視するべきものでもないと私は思っている。施策に対しての報告書作成に時間を費やすことになり、報告書を作ることが仕事になっていく。むしろ本来は一つでもヒントが見えたことを口頭で伝えることの方が重要である。

デジタルとオフライン。認知型と獲得型という施策の切り分けした考え方

先日team laboの猪子さんの話を聞いた。見えている世界や自分たちで切り取った世界ではなく、一連していて融合している世界であることを理解する必要があると感じた。広告の世界ではオフラインとデジタル。認知型や獲得型などの切り分けや棲み分けが当たり前になっている。人の心とはもっと多面的であり、五感で認知したり行動したり経験したりする。体験価値の考え方が重視されるべきだと昨今言うようになっている。認知だの獲得だのという考え方自体が薄くて浅く、様々な生活者の心を動かすことは容易ではない。体験とは三次元で考える一方、数値化していくと二次元で描かれてしまう弱点がある。企業の商品やサービスを通じて社会的に貢献できるかを描くための広告であると考える。それはどういうメディアを使うのかではなく、まず何を伝えるべきなのかを考えることが最優先である。オフラインかオンラインかなどを切り分けること自体がもはや古い考え方である。デジタルエージェンシーもアップデートしていくことが求められている。

デジタル広告運用のプロだがコミュニケーションのプロではない

結局電通の牙城は崩れない。現在電通はもはや国内は視野に入れておらず海外でどう戦っていくかにスイッチしている。デジタルエージェンシーを見てみるとデジタル運用広告を取り入れたいニーズに対応できる、サイバーエージェント、セプテーニ、アイレップ、オプトなどとほぼ数社で寡占している状態がある。この目先のニーズを取り込める強さが市場を牽引してきたデジタルエージェンシーの強さである。その一方でなぜ電通が大きく崩れることがないのかも考える必要がある。その理由として「広告の価値やコミュニケーションの在り方を正しく理解してる」ことが大きいと言える。どんな世界が来てもコミュニケーションの基本は変わらない。どう心を動かせば行動が変わるかを考え続けてきた電通のアセットは企業もまた求めている。デジタルエージェンシーでは数値に対する運用の在り方に目を向けすぎている。目先の売上を上がるビジネスモデルとしてはここで戦うことは正解だと考える。しかし企業とのコミュニケーションの伴走者としては物足りない。対クライアントへクリエイティブ発想で考え続けることがそのクライアントからの信頼を勝ち得るために必要であるという点ではまだまだ電通には及ばない。

最後にディズニーランドのDXで感じたこと

まだまだ書き足りないところもたくさんあります。冒頭の写真はディズニーランドに行ってきたときのものです。ディズニーランドでは中に入れないと買えない商品がたくさんあります。また通販も来園日でしかお土産は買えない仕組みになっています。デジタルでの体験価値とはそのためにあるものだと思っています。売上至上主義で行くならデジタルでどうやってグッズを売るのかということになります。行く前の準備としてグッズを購入し、お土産は来園日に荷物にならないように買えるようになっている。これこそが体験価値の統合マーケティングだと考えます。オフライン、デジタルを切り分けることなく生活者の行動の利便性を使い分けていく。その視点で考えることこそ、広告代理店の礎だと思っています。その視点がデジタルエージェンシーにも生まれてくればチャンスになると思いますが、中にいる人たちがこういう視点を磨くことから遠ざかっているためなかなか難しいとも言えます。デジタルエージェンシーこそリスキリングが必要なのかもしれませんね。

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シゴトー社長(後藤寛満)
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