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草野最高裁判事定年退官後の最高裁はどうなる?
2022年6月福島第一原発事故に関して国に責任はないという判決をくだした最高裁第2小法廷の草野耕一判事が3月21日に定年退官する。
これまで最高裁の3つの小法廷には東京電力と結びつきがある巨大法律事務所の弁護士が判事に就任していた。弁護士出身4人の判事は、いずれも第一東京弁護士会に所属していた。
今回、草野氏に代わって最高裁判事に内定したのは、高須順一弁護士だ。所属は東京弁護士会。巨大法律事務所の出身ではなく、所属弁護士4人の小さな法律事務所だ。高須氏は法政大学の教授も務めている。法務省法制審議会民法部会幹事として平成の民法大改正にも取り組んだ。
高須氏の就任により、巨大法律事務所出身、企業法務専門、第一東京弁護士会所属という原則が崩れた。
高須氏が最高裁で勝った興味深い事件がある。2003年6月に出された「地代等の自動増額改定特約を認めない」判決だ。
バブルまっ最中の1987年、ある人(法人かも)が土地を借りた。借りるにあたって、こんな特約がつけられた。「 本賃料は3年毎に見直すこととし,第1回目の見直し時は当初賃料の15%増,次回以降は3年毎に10%増額する」。
しかし、更新時にはバブルが崩壊し、地価が暴落していた。借りた人は、その状況で地代を上げるのは無効だと主張した。最高裁は、借地人の言い分を以下のような理由で認めた。「本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は,いわゆるバブル経済の崩壊前であって,本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併せて考えると,土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で,時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として,3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は,そのような経済情勢の下においては,相当な地代改定基準を定めたものとして,その効力を否定することはできない。しかし,土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては,上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより,本件増額特約によって地代の額を定めることは,借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。」
こんな判決を勝ち取った弁護士が、最高裁判事となり、どんな判決を言い渡すのか、期待を持って見守りたい。