見出し画像

どこにも行けないときの本

連休である。先週も連休であった。どこかに行きたいなあ、と思うのだけれど、諸般の事情というか一身上の都合というか、言い訳ばかりで結局どこにも行かない。

私の諸般の事情というは昔から主に経済的な事情と相場が決まっているのだけれど、近年ではそれに加えて体力が落ち、夜目も効かず、大好きだったはずの0泊2日のドライブのような強行軍が億劫になってしまった。

気力に欠けるせいだろう。行く先々にやけに人が多かったりするのもしんどい。インバウンドだけではなくて、「なんで?」と思うようなところになんだかいろんな人がいっぱいいる。いつからラーメンショップまでが待たないと入れない店になったのか。諸般の事情は増えていくばかりです。

というわけで、連休などは本でも読むかということになることが多い。ヒマに飽かせて以前に読んだ本など開く。たいていは旅が絡んだ本で、なんだか未練がましい。もっとなにか他のことを考えればいいのに。

そんなときによく開く本があるので、ご紹介してみたいと思った。以前にも書いたけれど、書評っぽいことをやる能力はないです。ただのご紹介です。


ブルー・ハイウェイ (上)(下)
ウィリアム・リースト・ヒート・ムーン /著 真野明裕 /訳


少し前に「ノマドランド」という映画が話題になった。キャンピングカーで仕事を探しながら旅して暮らすアメリカの女性を主人公にしたドラマ仕立ての作品だったけれど、原作は「ノマド:漂流する高齢労働者たち」というノンフィクションです。

で、その原作を読んでいたところ、その中で漂流労働者たちのバイブル的存在ということで、この「ブルー・ハイウェイ」が出てきた。「ノマド」自体も面白い本なのだけれど、なんとなく興味がわいて「ブルー・ハイウェイ」をアマプラで買って読んでみると、なんだか私はこっちが気にいってしまった。

著者がポンコツのバンで北米大陸2万キロを旅する。私はアメリカなんていったことがないので出てくるのは知らない地名ばかりだし、アメリカのライフスタイルにしたって知らないことだらけなので、Googleマップで検索をかけながら読んだ。日本にくる外国人だって新宿や渋谷は知ってても、町田は知らないと思う。いや、意外と知っていたりして(私は町田が好きです)。とりあえずそんな感じのポジションの地名(どんなポジションだよ)がいっぱい出てくる。どこにある町かなんてよくわかんない。

んで、著者がネイティブ・アメリカンの血を引いていることで、この本はただの旅日記では済まないものになっている。よほど興味でもなければ私のような日本人では知ることもなかったアメリカのさまざまな歴史や文化が、旅の途中でわりと淡々と、けれど豊富に語られる。

気候や風景の変化もダイナミックで旅情もあり、ユーモアもあり、お勉強にもなり、複雑な気分にもなれるという素敵な本です。

本書の翻訳はハードカバーが1985年にTBSブリタニカから出ている。私は1990年代に河出書房新社から出た文庫で読みました。どっちも絶版だけど、きっと図書館にはあると思います。もう古い本ですけど、面白いですよ。

なんだか、これだけで長くなってしまいました。「どこにもいけないときの本」については、また書きたいと思います。しばらくnoteがほったらかしになってしまったので、取り急ぎ、今日はこのお話で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?