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来年は埋蔵金でひと山当てます(虚言)
今年は日々の生活に必要なあれこれが値上がりし、贅沢なんかしているつもりも事実もないのになんだか出費がかさむ。そこへもってきて折悪しく私の稼ぎも悪かった。そこらに小判でも落ちていないだろうか。今日も業務スーパーへ買出しに行きながら思う。一分金2枚とかでも助かりやす、へい。
若い方はピンとこないと思うのだけれど、その昔、徳川埋蔵金ブームというものがあった。TBSが糸井重里さんをリーダーに埋蔵金発掘プロジェクトを展開し、その特番がけっこうな人気を博した。
先日、久しぶりにテレビで埋蔵金探しの番組を見かけてちょっと懐かしい気分になった。出演者は埋蔵金業界(?)の第一人者である八重野充弘さん。お元気そうで何よりです。けれど、まあ、なんというか、もうテレビのロケというだけで埋蔵金が見つかる気がぜんぜんしない笑。
個人的には埋蔵金の謎を追うのはとても興味深いことだと思っているのだけれど、映像メディアが扱うエンターテインメントとしてはいわゆるオワコンなのかもしれない。糸井さんとTBSがとどめを刺してしまったのだと思う。あれだけ盛大に掘っても出てこなかったんだものなあ。
けれど今でも、本で読む埋蔵金の話はやっぱり面白い。古い絶版本ばかりですが、私も手許に何冊かとってあります。
・日本の埋蔵金(上)(下) 畠山清行 番町書房
・日本の埋蔵金 畠山清行 中公文庫 ※上記の再編集版で原本より内容少なめ
・徳川埋蔵金検証事典 川口素生 新人物往来社
・日本の埋蔵金100話 八重野充弘 立風書房
埋蔵金の本は、糸井さんとTBSが熱心だった頃が最盛期でしょうか、硬軟取り混ぜいろいろと出版されてきました。もちろん、それぞれに著者独自の見解や知識・経験が盛り込まれているわけなのですが、他の分野に較べて引用や孫引きの関係にある内容も多いのが特徴のように思います。
そうした中で引用元としてよく登場するのが、昭和に活躍した作家・畠山清行の「日本の埋蔵金」です。埋蔵金関連の書籍群のオーソリティといえる存在かもしれません。初版は昭和47(1972)年。もう50年以上前の本です。
昭和30年代、高度成長期の前夜ぐらいまでは東京の建設現場などでも小判が発見されていたりして、たぶん昭和の中頃になっても埋蔵金はそれなりにリアリティがあり、心躍るテーマだったのだろうなと想像します。もっとも、実際に出てきたのは徳川がーとか武田がーといった浪漫溢れる感じのものではなく、江戸時代の商人だかお武家さんだかが、こっそりしまい込んだり隠したりといった金品だったようです。
というわけで、やっぱり外野から指をくわえて眺めていて面白いのは、どこぞのお殿様なんかが絡んだ、まだ見つかっていない(というか、あるかどうかもよくわからない)埋蔵金にまつわる謎と歴史ということになると思うのですが、この「日本の埋蔵金」はそのあたりを全国的・網羅的に概観できる本なのですね。
ですが、私がこの本でとりわけ惹かれてしまうのは、埋蔵金を取り巻く人々の業とでも申しましょうか、そうしたどろどろ話だったりします。
工事や運搬にたずさわった人足を口封じのために殺害したとかいう、埋蔵金にはありがちな伝承の類にはじまり、探している側は探している側で仲間割れしたり、どうやら発見したらしいけど行方知れずになったり等々、どこまでホントかわからない話がさまざま散見されます。とにかく真相は闇の中、なんとなく未解決事件にも似た不気味さも漂ってきます。
また、人生をかけて関わり続けることになってしまった人々の境涯はちょっぴり切なかったりしますし、羽振りのよかった人が発掘に関わったばかりに家運を傾けたなんて話になると、もしかして埋蔵金の呪いでは?などと野暮な妄想も膨らみます。史料・資料を持ち逃げされた・知らない奴が急にやってきて所有者に断りもなく土地を掘って帰った・集めた発掘資金を使い込みました等々となってくると何やらもうピカレスクなキナ臭さです。
畠山先生が当時のメディアの中でどのようなスタンスでご活躍されていたのか、同時代ではない私にはよくわかりませんが、熱心に研究を重ね、客観的な記述を大切にしていることが感じられる一方、やはりある種のエンターテインメント作品でもあったのでしょう。埋蔵金に関する資料としてはもちろん、単純に読み物としても、とってもエキサイティング。
この「日本の埋蔵金」もそうですが、埋蔵金関連の本を読んでいていつも面白いなぁと思うことがあります。それは、読んでも「よっしゃ!おれも一発当ててやるか!」とはぜーんぜん、まーったくならないこと。あれこれとハードルが高すぎです笑。
というわけで、おヒマな方は年末年始の読書に埋蔵金の本はいかがでしょうか。景気のいい初夢が見られるかもしれません。
新年早々うなされたりもしそうですが。