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ドサクサ日記 1/13-19 2025

13日。
渋谷でライブ。街の全景がはっきりと変わってしまって、もう何が何処やら分からなくなってしまった。しかし道玄坂のあたりの猥雑な感じは相変わらずで、もともと迷宮のようで来ると不安になったが、今ではここに来ると自分が知っていた渋谷が残っていて不思議な気持ちになる。eastern youthやThe Rentalsを観に行った学生時代を思い出す。メロコア好きの友人がダイブを決めて、吉野さんにむちゃくちゃ怒られていた。恐ろしかった。TFCを観に行ったときには、隣のお兄さんが「日本人はライブの見方がわかってない」と連れに能書きを垂れ、ビール缶を足で潰したところ残っていたビールが飛び散り、周りから白い目で見られていた。こういう人間にはなるまいと思ったが、大差ない大人に仕上がったような気もする。ラブホ街は兎も角、このあたりのライブハウスはずっと残ってほしいなと思う。

14日。
スタジオで作業。去年からお願いされていた客演の案件をエイヤ!と考えて録音。勢いのようなエネルギーを使っているが、場当たりで出来たものではなく、音源をもらってから膝を曲げるような形でバイブスを調整し、時が来たので飛び上がってみた、という感じだろうか。音楽の場合はこの屈伸がとても大事で、はっきりと伸ばすよりもかがみ込んでいる時間が重要なのだと思う。春樹的井戸の時間とも言う。

15日。
丸亀製麺の鴨葱饂飩の提供が始まった。今年も低価格で信じられないくらい柔らかい鴨肉が提供されていて、その企業努力を恐ろしいとすら思う。もう少し硬くて野生的でも良いのではないかと思うくらいだ。高齢化した社会ではこのくらいにしないと噛みきれない、飲み込めない、という苦情が来るのかもしれない。繁忙する12時過ぎに注文すると店員に申し訳ないので、閑散とした時間に食べるのが吉。

16日。
久々にアジカンのレコーディング。全体に朗らかな雰囲気であり、なるべくそれをキープしたいが、何らかの決意はしている。この曲を素晴らしい音で収録することに対しては、一歩も退くつもりはないが、少しの緩みや遊びのない現場から面白いものが生まれる可能性は少ないと思う。指の先まで気を通すことと、強張ることはイコールではない。力が漲っているが、むしろ脱力に近いこと。偏らないこと。

17日。
クラファンのリターンの宛名書き。この一人ひとりが寄付をしてくれたのかと思うと感慨も一入。感謝の念を込めて書いた。ラジオ収録後は明日からの録音作業に向けて移動。着いた街は気温0℃。むちゃくちゃ寒い。ホテルの近所の料理屋で藁で焼いた刺身などを食べた。藁で焼くとハードな燻製感が出るというか、香ばしくなって美味しい。「藁で焼いたら一番美味いもの選手権」をやってみたいと思った。

18日。
先週にスルーした黄色いカレーと運命の再会を果たす。美味しいけれど、俺がカレーに求めているものとは角度の違う美味しさだった。ただ、自分の味覚などは世界でもっとも信用のならないもののひとつで、もっと色が茶色かったら「やっぱりこれだね」とか言うのかもしれない。そうした思い込みも含めて、カレーの栄養素も概念としてのカレーも腑に落としていく以外にない。朝の繁華街を散歩した。昭和歌謡のアウトロみたいな雰囲気。あるいは、これから物語が爆発するインディーロックの、フィードバックノイズのような予感なのかもしれない。花屋には、夜のキャバクラに運び込まれるだろう花々が運び込まれていた。狭い路地の奥から3人組の男女が街道に向かってふらつきながら歩いていく。商店街は少しずつ、老いるように枯れていて、それでもどっこい私も血流、息吸って吐いて、スタジオに戻る。

朝晩、どちらも歩いてみた。歩き回ると、その街のことを好きになってしまう。新築マンションがずんずんと立っても、どっこい根を張る人間のしぶとさというか、キラキラでピカピカにはならない、くだを巻くような私たちの人間らしさに愛着を感じる。同時にそれらとは距離を置きたいような感覚もあって、ことごとく人間はマーブル状なのだと思った。

19日。
若い人たちがバンバンと新しい扉を開いて歩みを進める様を見ると、ポケットの中でくしゃくしゃになった希望がみるみると皺を伸ばして、真っ新な出来立ての紙みたいな気持ちになる。こうした進歩には年齢と関係ない角度もあり、俺にだってできるはずで、日曜大工で自作した柵ボックスのような場所に閉じこもらずに、いろいろな人たちと話をして意見やビジョンを交換したり、一緒にご飯を食べたり息を吸って吐いたりしてバイブスやフィーリングを整えて、死ぬまで自分のことを微調整し続けたいなと思う。はっきりと一銭ももらえないどころか、みんなのご飯代を払って大赤字みたいな仕事をしているが、得るものは山ほどあって、これらはお金をいくら積んでも体験できない。素敵な現場に居られるのは、ありがたいことだと思う。TAGO STUDIOは高崎のみならず、社会の宝。1000年も残りますように。

このスタジオがこの価格で!という意味では、日本一のスタジオだと思う。市民からの寄付によって実現したスタジオ。高崎市の行政の文化への理解によるところも大きい。インディのバンドはここを使うと本当に良いと思う。ただ、響きがかなり明るいので、シンバルをバシバシ叩くドラマーは注意が必要。ブースはデッドなので、そのあたりを工夫してセッティングするといいと思う。藤枝のスタジオの商売敵ではなくて、本当にロールモデルだと言える。

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Masafumi Gotoh
サポートは全額、僕が主催している音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award-」の賞金に使わせていただきます。賞金は自費と寄付で捻出しています。 http://www.applevinegarmusicaward.com