混合モデルとは何か 久保拓弥「データ解析のための統計モデリング入門」
混合モデルとはなにか。固定効果とは、変量効果とは、疑似反復とは何か。そもそも、なぜ混合モデルが必要なのか。本書はこれらを初学者に、どういう意味なのか、なぜその手法なのかを分かりやすく読者に語りかける。さらに、本書は混合モデルにとどまらず、実践的である階層ベイズモデルまで説明するのである。
本書の良い点は2つある。
一つ目は、全体像が明確になっていることである。大まかに、線型モデル(最小二乗法)→一般化線型モデル→一般化線型混合モデル→階層ベイズモデルのように展開している。このようにすることで、自分が今どの地点で何を学んでいるか分かり、迷子になりにくくなる。また、例題に統一性があるので、各モデルを比較することでき、特徴がわかりやすい。さらに、読みすすめるにつれて、モデルの広がりが感じれるようになっている。混合モデルをいきなり理解することは難しい。まず、一般化線型モデルを学び、その拡張したモデルとして、混合モデルを学ぶのが分かりやすい。
二つ目は、各章の終わりに統計学の書籍のガイドがついていることである。これによって、さまざまな本の位置づけが分かるし、そのモデルの一般的な事柄を知りたい際に役立つ。自分が知りたいことが書いてある本を探すのは意外と難しいことがよくある。そういった意味でも統計学、統計モデリングの入門書であるため、初学者には特にオススメなのだ。
「よくわからないけどP値が5%以下だから有意差がでたからいいや」という考え方を一端として、自分がやっていることが自分でもよくわからないという人がいるのではないか。そういった態度で、自然科学をはじめとする分野での数理モデリングを行っていいのだろうか。そもそも、それで面白いのだろうか。自分の頭で論理的に考えて、科学する。その道具としての数理モデリングを学ぶために、本書は最適である。
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