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復活を遂げた宋家豪。活躍を支える3つの変化

※掲載データは昨日までのものです

5月の全日程が終了し、ここまで楽天は混戦ながら2位と良い位置に付けている。
その中でも今年の楽天の強みとなりつつあるのが、勝ち試合を支えるリリーフ陣の存在だ。
ここまで楽天救援陣の防御率は2.91、これはパリーグ2位・12球団3位昨年パリーグ最下位だったことを考えると、現段階の首位争いの大きな要因と言って間違いないだろう。

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守護神の松井裕樹を始め、宋・安樂・酒居らが良い働きを続けており、ここまで救援敗戦数は12球団最少タイの3敗(松井1敗、福山2敗)のみ。
その中でも特に注目したいのは、前年かなり苦しんだ宋家豪(ソン・チャーホウ)投手の復活である。
上記の楽天救援陣の成績を見ると、現在チーム2番目の登板数/イニング数を任され、守護神の松井裕樹と遜色ない防御率0.92を記録している。
今回は昨年との変化にフォーカスを当てながら、今年の活躍の要因を探っていく。

1.  年度別成績

まずはシーズンごとの成績を振り返る。

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2017年の加入から3年間で93登板し、安定した成績でリリーフ陣を支える活躍を見せていた宋選手。
しかし、昨年は勤続疲労や調整問題もあってか大きく成績を落とし、防御率6.94と大きく安定感を欠いた成績に終わった。
昨年はチームとしての投手運用がまずい面も多々見受けられたが、それ以前に宋自身のボールの威力が欠けており、ファンからの信頼感も0に近い投球内容であった。

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しかし今年は一転、ここまで21登板 19 2/3回を投げ防御率 0.92、わずか2自責点のみと抜群の安定感を見せている
パリーグで15登板以上投げた投手の中で5番目の防御率で、パリーグ屈指のリリーバーとなっている。

では苦戦した昨年とどこが変わったのだろうか?

2. ウイニングショットの"副作用"

昨年は何がいけなかったのか。
不調の原因はいくつかあるかと思うが、その一端としてチェンジアップへの過度の依存による悪影響の可能性を挙げたい。

楽天ファンの多くが宋選手のウイニングショットとしてチェンジアップを思い浮かべるだろう。
例年25~35%ほどをチェンジアップで構成しており、本人も自信を持つ球種であったことは間違いない。
しかしこのウイニングショットへの過度な依存がストレートへの"悪影響"を及ぼしていた可能性が考えられる。次に紹介する記事はチェンジアップを得意とする投手のある"副作用"について語られている。

…「そう。チェンジアップは劇薬です。笠原のは効き過ぎているから。田口(麗斗、巨人)や濱口(遥大、DeNA)もそうでしょう? あれに頼りすぎるとね、真っ直ぐがいかなくなるんですよ」
… 実例としてあげた投手は故障ではなく、ストレートの走りが以前より悪くなったために勝てなくなったからだ。その原因がチェンジアップへの頼りすぎにあるのではないか。だからこそ「劇薬」という表現になる。よく効くが、使いすぎるとあとが怖いというわけだ。

権藤氏の言葉を引用させていただくと、チェンジアップの依存により「ストレートの走りが悪くなる」ことがあるのだ。
宋選手にもこれが当てはまる可能性がある。

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こちらは昨年の球種別の成績をまとめたものである。
上の表で確認すると、ストレートの被打率は.188ながら、長打率.417と長打を多く打たれていることが分かる。

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2年目までストレートのPitch Valueはプラスを作っていたが、防御率2.18を記録した3年目、昨年と2年連続でストレートのPitch Valueはマイナスを記録
ストレートの平均球速はさほど大きな変化はなかったが、実は好成績を残していた一昨年からストレートの劣化は始まっていた可能性が高い

※Pitch Value :
その球種による失点増減の合計。投手視点では、ストライクカウントが増える/アウトを取ることがプラスとなる。

そして昨年は頼みのチェンジアップのキレも悪く、前々年・前年のPitch Value 6.3・6.7から -3.7まで大きく数字を落とし、苦しいピッチングが続く結果となった。
更に悪いことに、これはストレートとチェンジアップが機能しなくなってしまったことによる苦肉の策だと思うが、前年よりスライダーの割合を倍に増やしたが、結果ここで大きくマイナスを作ってしまったのである。
昨年のスライダーのPitch Value -10.7は全投手中ぶっちぎりの最下位であった。
このような負の連鎖もあり、苦しいピッチングになっていたことが考えられる。

3. 昨年と比較した球種構成の変化

こちらは昨年と今年の球種構成を比較したものである。

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構成の変化でまず注目したいのが青色で示したチェンジアップである。
前述のとおり昨年はチェンジアップで苦しんだシーズンであったが、今年はそのチェンジアップの使用を抑え、ここまでの成績を残している。
特に対右打者に対しては10%未満に抑えつつ、一方で効果が期待できる左打者に対しては存分に使い効果を発揮している。

そしてもう一つの変化として挙げたいのがスライダーの良化である。
前年は割合を増やしたスライダーで大きなマイナスを生んだことを先ほど紹介したが、今年に入って前年より割合を更に増やし20%前後投じている。

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正直どのような経緯でここまで良化したかは定かではないが、1つの変化として平均球速が133.9 ⇒  137.0へ大幅に上昇している。
これはチェンジアップにも言えることだが、平均球速が上がりストレートとの球速差は前年よりかなり小さくなっており、スライダーの高速化による相乗効果が生まれていることが推察される。

ここについて私自身気付いていなかったので、今後注目していきたいポイントである。

4.  チェンジアップの副作用はどうなったのか?

"チェンジアップの悪影響"について紹介したが、チェンジアップを減らした今年はストレートへの影響はどうなったのか。

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ここまで平均球速こそ昨年までと大きな変化はないが、被打率.120・空振り率 10.2%と上々の数字を残している
映像で見るからに昨年よりキレが良く打者を押し込むことができている。
チェンジアップを減らした効果だけではないだろうが、前年までマイナスだったストレートですでにPitch Value 4.7を稼いでおり、これが復活の大きな原動力となっている。

威力を取り戻した宋家豪のストレートにぜひ注目して頂きたい。

5.  数字で見る心境の変化 3つの塁を使う意識? 

最後に気になる数字の変化について考えていきたい。

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こちらは前年と本年のPlate Disciplineを比較したものである。

Plate Discipline:
打者がストライクゾーン/ボールゾーンで振った/振らない、当たった/空振りしたとかそんなのを数値化したもの。

そこまで大きく変化はないのかなと感じていたが、少し気になるポイントを色付けしてみた。
まずはZone %とF-Strike %、この2つが昨年と比べると数値的には悪化している。

Zone %:ストライクゾーンへ投げ込んだ割合
F-Strike %:初球をストライクゾーンへ投げ込んだ割合

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昨年との各種成績を見比べると、奪三振が増えたが、合わせて四球も増えていることが分かる。
成績の良化とは裏腹に、初球はボールで入ることが増え、全体で見てもストライクゾーンに投げ込む割合が減り、ランナーを貯める四球が増えているのである。
ここで思い起こしたのが、石井監督の「ベース3つを使って抑えてくれればいい」という発言である。

「松井はここ最近の登板が苦しいけど、苦しい中で結果を残すのがクローザーとして重要な役目。ベース3つを使って抑えてくれればいいと思います

これは松井に向けた言葉であったが、宋もその意識の変化があったのではないか?と考えている。
四球を出して塁を埋めても最後に抑えたら良いという意識からか、安易にストライクゾーンで勝負せず、ゾーンを広く使う。
⇒その意識の変化も手伝いO-Contact %の低下、つまりボールゾーンで空振りを増やす結果に繋がったのではないだろうか。

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その中でも今季割合を増やしてきたスライダーの成績を比較すると、Swing %が減っているが、一方でスイングした際にバットに当てられる確率がかなり低下している。
ボールカウントが増えることを恐れず厳しく攻めた結果、見逃されるケースが増えても、スイングされた場合高確率で三振を奪えるようになったのではないだろうか。

今年は良い顔で投げてると一部で話題になっていたが、上記のようなメンタル面での良い変化があった可能性もあるのかな、と妄想している。

6.  最後に

昨年とは別人レベルに復活した宋家豪について、データを交えて分析してみました。

・チェンジアップ依存の脱却によるストレートの復活
・スライダー良化による組み立ての変化
・四球を恐れない攻めのスタイル

上記3点を昨年からの劇的な成績向上の要因として紹介しました。
3つ目に関しては数字ベースの事実と今年から就任した石井監督の発言を紐付けた私の妄想レベルではあるが、なんらかの心境の変化があったのは間違いないと確信している。
+各球種の組み合わせや状態の良さが、好影響を与えあっての成績ではないかと考えている。
今年はキャリア最高の成績でチームの優勝争いの原動力になってくれるのを期待している。

おしまい。


データ参考 :
Sportsnavi : https://sports.yahoo.co.jp/
日本野球機構(NPB): https://npb.jp/
1.02 Essence of Baseball : https://1point02.jp/op/index.aspx





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