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呼びかけ

父が、母に呼びかける言葉は、色々だ。

「お母さん」「あなた」
「40年以上、連れ添った連れ合い」
「優秀な人」「真面目な人」
「一生懸命になる人」「頑張り屋さん」
「奥様」「奥さん」「奥方」
「妻」「愛する女房」
「おまえ」「おまえさん」
「ベテラン主婦」「伴侶」
「師匠」「親方」
「シェフ」「メインシェフ」
「ファンの方」「お客様」
「お得意さん」「常連の方」…。

母の呼びかけは、「お父さん」がメインだ。
あとは、「優しい夫」「いい旦那様」。
まれに、「同居人?」。
最近は、「じぃじ」。

母の「お父さん」には、喜怒哀楽が込められている。
そんな呼びかけに、父は、その時々にあった、母への呼びかけをする。
母の不安を取り除こうとする日もあれば、なだめる日もある。
母をイラつかせてしまう日もあれば、返事ひとつで、母が納得する日もある。

2人のやりとりに、ドラマを感じてしまう。
ハラハラ・ドキドキの日もあれば、微笑ましい気持ちになる日もある。
泣きたくなる日もあるけれど、見守る。

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このエッセイは、2013年に書いたものだ。
2013年の母は、語彙が豊富だった。
今の母は、自分の気持ちを表現することが、難しくなってきている様子だ。
「察してよ」「分かってよ」という感じ。
そんな母に、父は、かわらず呼びかける。

そんなふうに、呼びかける父の姿は、母への愛に満ちている。
言葉のひとつひとつに、愛が溢れているのだ。
私は、ただただ2人の何気ない日常を見守る。
2人のやりとりをきくだけで、幸せだ。

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