認知症の母、近所のスーパーへ行く
父の体調がイマイチな日は、母は1人で近所のスーパーへサクサクとお買い物に行く。
一日に、2軒のスーパーに行くことも。
私 「お母さん、たまには、ゆっくりしたら?
動きすぎじゃない?」
母 「だって、足腰弱ったら、トイレに行く
時、しほやお父さんの手を借りなきゃい
けなくなるでしょ」
母の何気ない言葉にドキッとした。母は、母なりに、これから先の自分のことを考えているのだ。その言葉に、「母らしいな・・・」と思い、胸がいっぱいになった。
そんな母は、スーパーの広告を一生懸命に見ては、安い品や買いたい物を見つけて、お買い物リストを作り、買い物に行く。
母 「ねぇ、お父さん、これ買ってきていい?
」(広告を父に見せる)
父 「これは、まだ買い置きがあるから、買わ
なくていいよ」
母 「お父さんは、いつも私の買いたい物をダ
メと言うのね」
(少し、怒っている様子)
父 「そんなに買いたいの?
それなら、買ってもいいよ」
母 「ふんっ!今度は、お父さんに聞かない
で、買いに行くわ!」
玄関まで見送る父(または、私)に、母はこう言う。
母 「あと、ついてこないでねっ!!」
買い物をして、帰ってくる母は、なんだか生き生きしている。リストにない物を買った時には、そそくさと戸棚にしまう。
そんな母の様子を父と私は、横目で見て、「まあ、腐る物じゃないしね・・・」「これで、お母さんの気がすむならいいか・・・」と小声で呟き合う。
母が買い物に行こうとする時、ものすごい勢いで支度をして、あっという間に出かけてしまう。近所のスーパーなどで、今のところは、父も私も安心して送り出してはいるが・・・。
午前中に買い物に出かけ、午後にふと、母が言う。
母 「私、今日、どこかにに出かけたかしら?
ずっと家にいたわよね?」
父 「今日は、買い物に行ってくれたよ。
午前中にね。2軒回ったから、疲れた
んじゃない?」
母 「あら、そうだったの・・・」
(2013.2.14)
2020年、母は一人で買い物には行けなくなっている。
スーパーの広告を熱心に見るのは、変わらず。
熟読する。広告に、書いてある文字を読み上げる。でも、お買い物リストを作ることはない。父や私と一緒に、買い物に行くと、母が衝動的に菓子パンやシュークリームを欲しがる。
買って、家に帰る頃には、買ったことを忘れている。あんなに欲しがっていた菓子パンに、見向きもしない。
母が食べずにいて、仕方なく父が食べることは、しょっちゅうある。なんなら、そんな菓子パンたちに追われて、賞味期限を迎えたパンを泣く泣く棄てることもある。
ちなみに、母が欲しがる菓子パン第一位は、アップルパイだ。
母は、買い物についていくのは、楽しそうにしている。
お買い物は、いろんな動作の積み重ねだ。
広告を見たり、献立に合わせてお買い物リストを作る。買い置きがあれば、買わない判断をする。→お店に行く。→カゴとカートを手に取る。→リストを見ながら、店内を歩き、お買い物をする。→レジに並び、お会計をする。→お財布を開け、ポイントカード、現金あるいは、クレジットカードを出したりする。→お財布をしまう。→レジから、カゴを運ぶ。→カゴから、買った品を袋につめる。→カゴを返す。→帰宅。などが近所のスーパーに行った時の流れだ。
5,6年前までは、母がお財布を管理していた。
レジでお会計をするのも、母だった。
やがて、父がお財布を管理するようになった。
だんだんと、母が以前、できていたことが、できなくなってきている。病気の進行は、避けられないのだ。
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