大坪五郎

ハードウェアエンジニアから、Stanford University留学、海外勤務を経て…

大坪五郎

ハードウェアエンジニアから、Stanford University留学、海外勤務を経てソフトウェアエンジニア、リサーチャー、事業開発等を担当。現在はサービスデザインとともにデザイン思考・アート思考/ハート思考の研修講師を務める。https://goromi.com/

最近の記事

Desighship2024に行った

今や「デザイナー」という言葉はあまりに広く使われていて意味がよくわからない。というわけでご縁があってDesignship2024というイベントに行ってきた。感想や考えたことをつらつらと。ちなみに公演はほんの一部しか聞かず、ひたすらスポンサーブースを回ってました。 全般: 言いたいことは以下の通り。 デザイナーというからには、ちゃんと主張を持ったデザインを見せて欲しい。 私はデザイナーではなく、ストーリーテラーだ。なので素人考えで恐縮なのだが、印象的だったのが、「私たち

    • 古典との出会い

      先日ちょっとしたきっかけから「とにかく注文してしまえ」と本を注文した。 手に取ってその薄さに驚く。次に1ページあたりの活字の少なさに驚く。これは中身のない水増しの本か、と思った。 しかし 読み進めるにつれ、相当昔に書かれた本ということがわかる。日本語訳がでたのも私が生まれる前なのだ。 そしてそこに説かれている「アイデアの作り方」は私がAハート思考の本でよたよたしながらその一部を描き、今新しい本をまとめるべく苦闘している内容そのものであった。いや、それは違う。この本は私が

      • カーナビ開発者への讃歌

        先日旅行に行った際、レンタカーに乗った。そして久しぶりにメーカー純正(多分)のカーナビに触った。私がカーナビの開発に従事した二十年前とほぼ同じ画面なのに驚いた。当時は「こんなもんだろう」と考えていたが、Caplayの画面と比べるとその差は歴然。 今書いている本の一部を引用する。 しかしそのカーナビが稼働しているということはまだこれを作っている人たちがいるというわけだ。あの貧弱かつ原始的な環境の上で仕様を満足するソフトウェアを作ろうと懸命に努力している人たちがいる。おそらく

        • 背中に突き刺さったツルハシ

          「ルックバック」を2回観た。 元は漫画だから全てのセリフは吹き出しの形で描かれていた。映画では俳優さんが声を当てるので、吹き出しは必要ない。 しかし 一つだけ吹き出しの形で表示されるセリフがある。 観客はこの問いを突きつけられる。 監督と音楽を担当したharuka nakamuraさんが出演した舞台挨拶に行った。まず映画が上映される。1回目とは違う部分に目を惹かれる。そして1回目もそうだったが私は(理由は知らないが)映画が終わった後に泣く。映画終了後場内に静かな拍手が

        Desighship2024に行った

          自己中心的な人間中心設計者家

          某社からサービスデザインに関する仕事をいただいている。この「デザイン」界隈にもいろいろな流派があることに最近気がついた。 一部のサービスデザイン界隈で最近バズワードとなっているのが 「デザイナーは顧客だけでなく、地球環境のことも考えてデザインしましょう!」 「今のユーザだけでなく百年後のユーザーのことも考えましょう!」 という分母をやたらと大きくした崇高な理念である。 たとえばあるカンファレンスで、某社のデザイナーは「カスタマージャーニーマップを作る時に、必ず地球環境

          自己中心的な人間中心設計者家

          「デザイナー」に代わる呼び名

          「デザイナー」という言葉が乱用されるようになったのは、別に最近のことではない。過去にはこんな記事を紹介したこともある。 をを、これはもう十年前の記事だ。 ここからさらにデザイナーの幅は広がり、サービスデザイナー、ビジネスデザイナー(これはあまり聞かないか)などなどとにかく世の中はデザイナーに満ちている。 問題は、 UXデザイナーとか、UIデザイナーとか作るものがちゃんと存在している間はよかった。ところが「デザイン思考」が普及した結果として「人にデザイン思考のワークショッ

          「デザイナー」に代わる呼び名

          Missing piece for ゴール創生

          何を書いているかといえば、ゴール創生に必要な要素である。 最近あれこれやっていてつくづく感じるのが「ストーリー構築能力」というものは人によってものすごい差がある、ということ。 この「ストーリー能力の差」はデザイン思考であればHow might we?を定義できる力とほぼ同値である。 問題は その存在はわかるのだが、それを鍛えるためには何をすればよいのかが今ひとつわかっていない点にある。 単にさまざま分野の経験を積めばいいのだろうか?しかしそうだとすると去年職場見学に

          Missing piece for ゴール創生

          「デザイン思考」はテニスの素振り

          有名な「デザイン思考はクソだ」という講演がある。そこから引用する。 現状認識として私も全く同感。私の理解では「デザイナーのプロセスを公式化したもの」が「デザイン思考」である。さて、その定式化されたプロセスにどれくらい意味があるのか?先日のビザスク講演で、デザイン思考に対して私はこう答えた。 「デザイン思考は..素振りのようなものです。フォームを正しく素振りをすることは確かに役には立つ。しかしそれで試合に勝てるでしょうか?」 テニスの素振りではおそらくフォームを教わる。こ

          「デザイン思考」はテニスの素振り

          ビザスクで講演しました-質問に対する回答その1

          2024/2/14にビザスクで講演しました。 ありがたいことにたくさんの人に聞いていただけたようです。質問がくるか不安だったのですが、これまたありがたいことに多くの質問をいただけました。 記憶の範囲でいただいた質問と、それに対する回答(一晩立って考え直したもの含む)を書きたいと思います。 インタビューに関する質問 インタビューに関する質問をいくつかいただきました。NTTデータの仕事でデザイン思考の研修をやっておりますが、インタビューに関しては個別で要望もあり独立した研修

          ビザスクで講演しました-質問に対する回答その1

          2/14ビザスクで講演します

          見出し画像はMicrosoft copilotに「「2/14ビザスクで講演します」という記事の見出し画像を作ってください」と頼んで作ってもらったもの。なんだこれは。 というわけで直前ですが、講演します。 去年も講演しました。なぜ残念な新規事業コンテストができてしまうのか。それを防ぐためにはどうすればいいのか?について語ったなかなかの力作でした。残念ながらアーカイブ動画はないそうです。なので見なかった人は 「そんなに立派な講演じゃなかったぞ」 と文句をつけることができな

          2/14ビザスクで講演します

          デザイナーの4象限:定義編

          このnoteは前回の続きである。読んでいない人はまず前回を読んでね。ちなみに↑はMicrosoft copilotが作成してくれた意味不明な図なので無視してください。 デザイナーと呼ばれる人の仕事へのスタンスはHelperとCreatorがあり、また仕事の性質として-1→0と0→iがあると前回書いた。これを4象限にすると以下のような図になる。 それぞれがどのような役割を果たすかを以下に示す。 Facilitator はい、みなさんで現状のカスタマージャーニーを書きまし

          デザイナーの4象限:定義編

          デザイナーの4象限:前提編

          デザインという言葉は今非常に広い意味で使われている。それとともにデザイナーという言葉の意味も広がり、収集がつかなくなりつつある。 「デザイン思考」と関連して時として揶揄されるのが「付箋デザイナー」という職種。UIデザインも戦略デザインも服のデザインもできないけれど、「デザイン思考」のワークショップをやって付箋をぺたぺたはることはできます!という人たちだ。こうやっても文字にすると冗談のように聞こえるけど、某社にはこの「付箋デザイナー」が山ほど存在する。それどころか「デザイナー

          デザイナーの4象限:前提編

          アイディアを作る方法

          「標準的」なデザイン思考ではアイディア出しについてほとんど何も言っていない。耳にタコができるほど聞かされた 「批判禁止・質より量・他人のアイディアにのっかろう!」 ではゴミの山ができるだけ、というのは多くの人が知っているはず。やれブレイン・ライティングだ、他人が書いたアイディアに繋げていく方法とかやたら数はあるがそれは変形されたゴミ製造機にすぎない。 などと文句を言っているだけでは意味がない。先日面白い記事を見つけた。 この「解決策を作る」前に「ゴール創成」があるのだ

          アイディアを作る方法

          「デザイン思考」に関する幾つかの事実

          今日もデザイン思考研修の波に追われよれよれしている日々ですが皆様お元気でしょうか? デザイン思考の研修をおそらく数十回やった。その結果いくつかの事実が明白になった。 デザイン思考研修ででてくる提案の95%(主観評価)は教育的価値を除けばほとんど無価値。最低10回は聞いたことがある案、案にもなっていない案、ユーザが1名も獲得できそうにない案が大半。 デザイン思考で一番難しいのはHow might we?を定義するところ。他にも難しい点はあるがHow might weでは立

          「デザイン思考」に関する幾つかの事実

          「デザイナー」を自称する「議事録係」

          先日ある企業で「デザイナー」と称している人たちの集まりに出た。 そこで「何かが違う」と違和感を覚えた。 「デザイナー」には実に色々な種類がある。「デザイン」という言葉が意味するところも多種多様だからかもしれない。以前勤めた会社でこんなブログを書いたこともあったな。 「デザイン思考」でサービスデザインやってます、という「デザイナー」の90%は「議事録係」である。ワークショップをファシリテートし、自分は何もアイディアを出さず、お客様の言葉を付箋に書いて貼る。それを適度に誘導し

          「デザイナー」を自称する「議事録係」

          なぜデザイン思考は(簡単には)機能しないか

          会社でデザイン思考の研修をたくさんやってきたしこれからもやる予定である。研修と関係ない場面で時々「実は私デザイン思考が大嫌いでして」と発言してしまうのだが、誰も気にしていないのは面白い。というか私の話など誰も聞いていないのだろうな。 さて 研修をやっているといつもHow might we?でひっかかる。問題領域を決める。これは誰でもできる。ペルソナを作る。真面目すぎる人はここで時間を食うが見本があるのでできる。カスタマージャーニーとか、その人がやりたいこと、やりたくないこ

          なぜデザイン思考は(簡単には)機能しないか