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秋の深川

目抜き通りを歩いた。道の両側に、手作り人形が複数、間隔をあけて立っている。子どもくらいの背丈があり、両手を広げている。私たちを通せんぼする案山子のようだった。あるいは本当に案山子かもしれない。

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街の音楽会を案内するちらしが電柱に貼られている。雨で滲んだ黒のインクで文字が書いてある。とても楽しい音楽会だからみんなで遊びに来てね、と書いてある。

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名物の丼ぶりを店で食べる。身ぶりの大きなあさりが、食べても食べても顔を出す、という触れ込みだった。本当にそのとおりだった。ごはんの上にびっしり敷き詰められたあさり、その上にあさりだしのスープを注ぐ。

店では、名古屋弁の男子大学生と関西弁の女子大学生が二人、将来について語り合っていた。スープの湯気でメガネが曇るね、と女子大学生が口にしたとき、男子大学生のメガネは曇っていた。

どうしてお腹いっぱい食べるとこんなにお腹が苦しくなるのか、ということを議論しながら私たちは丼ぶりを空にした。

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秋である。2週間前はたしか夏だった。2週間前であればとても信じられないくらい袖の長い装いのまま、石造りの立派な図書館の前を通りすぎ、池の水が干上がった公園を横切り、水天宮に立ち寄ってお参りをした。お守りの値段に思わず声が出たよ。

次に引用するのは、秋にて、という題名の詩である。たった今この詩を読んで、以上の出来事をふと書き残そうと思った次第である。

向日葵が 垣根で輝いている
静かに 病んだ者たちは 陽の光を浴びて座っている。
畑では 歌いながら 女たちが仕事に精を出す、
修道院の鐘が そこへ流れてくる。

鳥たちが お前に 遠い国のおとぎ話を語る、
修道院の鐘が そこへ流れてくる。
中庭から 柔らかなヴァイオリンの音が響いてくる。
今日 人々は 褐色の葡萄をしぼる。

こういう時 人間は 陽気で優しく見える。
今日 人々は 褐色の葡萄をしぼる。

死者たちの部屋は 大きく開かれ
そして 美しく 陽の光に彩られる。

ゲオルグ・トラークル (著), 中村朝子 (翻訳)『トラークル全集 新・新装版 』青土社,p.56

夜、耳かきをしている妻が、耳から真珠が出てきたと言い始めた。何粒出てきたの?首輪が作れるくらいたくさんならいいねと答えた。

『ムーミン谷の彗星』に、ムーミンが海に潜って真珠を取る話がある。ムーミンが真珠を腕いっぱいに抱えて海から戻ってくるあの絵のことがふと思い出され、無性に確かめたくなり、本棚から引っ張り出した。奇妙な義務感に駆り立てられ、写真まで撮った。明日は朝早いのに、一体何をやっているのか。

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