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ライブ帰りの告白

「ななみん、最近どうー?」
「七海ー、いい人いないの?」
久しぶりに会う人たちみんなとこの話をしている気がする、大学2年生から3年生に進級しようとしている春。
「なんもないよ、相変わらず非リア。」
「マッチングアプリとかあるじゃん!やりなよ!」
「そこまでの気力はないかなぁー…」
「ななみん可愛いし普通に彼氏いそうなのになぁ…」

好きな人はいるけど言えない。何をどうこじらせたのかは自分でも分からないが、私はものすごく恋愛に関して奥手なのだ。そしてまた、私が好きな陽太先輩もどうしようもない奥手男子だった。

思い返せば昔からそうだった。好きになっても勇気が出なくてアピールすらできない。気付けば自分からアタックできる女の子が私の好きな人と付き合っていた。全く悔しくないわけではないけど、自分にはない勇気と行動力を持ち合わせている人には勝てないし脱帽するしかなかった。

陽太先輩はバドミントン部の1つ上の先輩だ。大学からバドミントンを始めた私とは違って、小学生の頃からの経験者だから部内戦でもいつもトップ3に入る、実力だけ見れば部内でも天と地以上の差のある眩しすぎる先輩だ。だけど、私がみている恋愛ドラマについてInstagramのストーリーに投稿していたら「俺もあのドラマ観てるよ!」とLINEをくれ、語っているうちに思っていたよりも親しみやすい人だと知った。

「こないだの観ました?自分からあんなに気持ち伝えれる子ほんとに尊敬します!私には無理だなーって思っちゃいました笑」
「だよねー、俺もそう!観ててこっちがドキドキしちゃった!」
先輩と付き合いたかったら自分から気持ち伝えるしかないんだ、私にできるかな。すぐには勇気が湧かなかったけど、自分なりに頑張ってみることにした。

「陽太先輩、こないだのお礼したいんでご飯行きましょ!お礼なんで私がご馳走します!お財布持ってきちゃダメですからね!」
無理矢理理由をつけて二人でご飯に行った。一口ひと口美味しそうに唐揚げを頬張る先輩を見て「好き」がもっと増した。お互いの近況とか世間話とか色々話した。

「実は俺、彼女できたんだよね…」
「ほんとですか!おめでとうございます、初めての彼女さんですよね!でも先輩奥手なのにどうやって…?あ、もしかして彼女さんの方からですか?うわーモテますねー!」
「向こうから言ってもらったね。」
「てか相手誰なんですか?」
私とも関わりがある、先輩と同学年の綺麗な方だった。あの人が自分から告白するんだってびっくりしたと同時に、綺麗より可愛いと言われる自分とは真逆の魅力を持つ彼女さんがタイプなら勝てないと思った。

「あーあ、また失恋しちゃいました。私、陽太先輩のこと好きだったのになぁー。」なんて言えなくて「好きじゃなくなったらすぐ振ってあげないと情で付き合い続けられても女は辛いですよー。」なんて、余計なことを言ってしまった。

それから9か月、先輩たちは別れた。3の倍数って本当に魔の数字なんだなぁなんて思いながら、また私は理由をつけて先輩をご飯に誘った。好きじゃなくなって陽太先輩から振ったことを聞いたときはちょっと嬉しかった。

陽太先輩とは今でもたまに共通の趣味であるJ-POPについて語り合う関係は続いている。目を輝かせて話す先輩はバドミントンをしているときより少しあどけなくて、普段見れない先輩の一面を見れる時間はとても幸せだ。話していて楽しいし安心するし、部活中はかっこいいのにオフは可愛い面も多い、そんな先輩が今もやっぱり好きだ。

また後悔してしまう前に、「奥手だから」なんていう言い訳は捨てて気持ちを伝えたい。バレンタインに何か渡せる度胸も好きな素振りを見せる度胸もないけど、ちょっとくらいお酒の力を借りてでも告白できるように頑張りたい。

今度陽太先輩と2人でライブに行くことが決まった。少し離れた県まで片道3時間、先輩の運転で連れて行ってもらう。「ずっと前から好きでした。先輩の彼女になりたいです。私じゃダメですか?」綺麗なライトに照らされる都市高速で告白したい。でもそれはきっと私には似合わないしなんか先輩にも似合わないな。地元の海で海風に吹かれながら少しずつにはなるかもしれないけど気持ちを伝えたい。

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