胃・食道のトラブルと姿勢
低い作業台で長い時間デスクワークをしていると胃・食道の負担になることがあります。なぜならそのような姿勢は胃・食道がずっと圧迫されることになるからです。また腹圧が高くなることにもなります。順番に見ていきましょう。
胃・食道がずっと圧迫される
胃の場所はわかりますか?だいたいみぞおちのあたりです。もう少し詳しい話をすると胃は肋骨の下縁を斜辺とした三角の中に収容されています。
この三角ゾーンはLABBE(ラベー)三角と言われています。ラベーさんが名付け親なんでしょうね(知らんけど)。
低い作業台でデスクワークをする場合、例えばソファーに座って目の前のローテーブルにノートパソコンを広げて作業するとします。背中はけっこう丸くなり、お腹のあらゆる臓器は圧迫されていそうな姿勢です。ちょうどトイレでなかなか出なくてめっちゃ踏ん張っている、けど出ないからいったん力を緩めて次のトライに備えている、そんな姿勢になっていると思います。
このような姿勢で長時間のデスクワークをしていると胃食道はずっと圧迫されていて動くことができません。そもそも健康な胃や食道は何もしていないときでも勝手に動いているのです。呼吸をするだけで上下に動いていたり、ポンプのように動いたり。時よりグルグルとか腹の音が鳴ることがありますよね。あれは胃や腸の動いている音です。
低い作業台で長時間のデスクワークをする姿勢によって、このような生理的動きを邪魔してしまいます。
腹圧が高くなる
お腹の内部空間のことを腹腔と言います。腹腔の天井は横隔膜というドーム状の屋根になっています。もしこのドーム状の屋根がつぶれ下がってきたらどうなるでしょうか?そうですね、水風船を上から押してつぶしているような感じです。そうすると内部の圧力は高まります。
もう一度低い作業台でデスクワークをする場合を想像してください。この姿勢は本来ドーム状であった横隔膜が平らになってしまうのです。
すると腹腔内部の圧力が高くなります。臓器も圧力を受けます。ただし穴でも開いていない限り臓器が外に飛び出すことはありません。が、実はいくつか穴が空いているのです。横隔膜にある穴はそのひとつ。それは食道裂孔と言って食道を貫通させている穴です。腹圧が高まると胃がその穴(食道裂孔)から飛び出そうとします。
このように胃が圧力を受けて食道裂孔から飛び出そうとしている状態は胸やけ、胃酸逆流を起こします。すでに飛び出してしまったものは食道裂孔ヘルニアと言われます。
※ベルトやガードルで腹部をきつく締めることも腹圧を高める原因になります。
このように低い作業台でのデスクワーク姿勢は、胃・食道を圧迫し、腹圧が高まって胃酸逆流や胸やけのリスクとなります。
病院でやること
問診と胃カメラ検査
胃酸を抑える薬
食道や胃の正常化を促す薬
食道粘膜を保護する薬
手術
詳しくはこちらを参照↓
胃食道逆流症(GERD)
オステオパシーによる評価
以下の点をチェックをし、問題があれば修正していきます。
・胃・食道を圧迫するような骨格になっていないか
・横隔膜がドーム状になっているか
・胃・食道の可動域は充分にあるか
デスクワーク環境とどう付き合うか
自分の体はある程度変えていくことができますが、デスクワーク環境を変えることは難しいこともあります。自宅であれば自分にあったデスクを用意すればいいだけなので簡単です。ニトリかイケアに行けば解決です。
しかし問題は職場のテーブルが低い場合。実際に当院に来ている「胃・食道トラブル」の人は職場のテーブルが低い場合がほとんどです。職場のテーブルが低い場合は、テーブルの上に台を置きその上にキーボードやマウスを置いているなど工夫が必要です。もしあなたが職場のテーブルを買い換えられる権力のある人なら買い換えてください。部下から好かれると思います。また日常的にベルトやガードルで腹部をきつく締めつけていると腹圧は高まります。少し緩めるとよいでしょう。
胃・食道の健康は姿勢から大きな影響を受けていますので姿勢を変えていくことは治療にも予防にもなります。
また他にも変えていったほうが良いことはストレス、食生活、嗜好品(高タンパク質食、高脂肪食、タバコ、コーヒー)と様々あります。これらの生活習慣を全部をいっぺんに正すことはできないので、できることから検討していってください。
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