非24時間睡眠覚醒症候群から回復した体験記。
はじめに。
これらの事は私が体験した記録です。
私の勝手な思い込みや、不確かなこともあるので、参考にされる場合は自己責任でお願いします。
2020年 コロナ過と昼夜逆転から
2020年、コロナウイルスが世界中で流行した年、私は大学4年生だった。感染拡大防止の観点から、授業はオンラインに移行し、大学に行くことがなくなった。
当時は卒業制作や個人で受けていた仕事を家でこなしていたため、家から出ることがほとんどなくなってしまった。地元の友達と遊ぶのも夜が多く、もともと夜型の生活だったこともあり、徐々に4:00〜12:00に睡眠する昼夜逆転の生活を送るようになった。
2021年 上京とnon24発症
2021年、大学を卒業後、上京した。作家事務所と専属契約を結び、基本的に家で仕事をしていた。
しかし、ただの昼夜逆転から異変が起きた。徐々に入眠時間と起床時間が遅れ始め、寝ようと思っても寝られず、起きようと思っても起きられなくなった。以前のように決まった睡眠時間ならば予定も立てやすかったが、睡眠時間が徐々に遅れていくことで、寝過ごしたり、寝ずに予定に向かったりすることが多くなった。
この時、「これはおかしい」と思い始め、ネットでこの症状について調べた。そして、非24時間睡眠覚醒症候群という病気の症状とほとんど同じであることを知った。
病院に行こうかと迷ったが、そもそも睡眠外来を受けている病院が少なく、ネットの情報によれば、根本的な治療方法が確立されていないということもあったため、病院に行くことをためらった。
また、当時仕事や恋愛が立て続けに失敗し、メンタルもボロボロになっていた。家にこもって一人で泣き続け、虚無な時間を2か月ほど過ごしていた。それも相まって症状が悪化した。
その結果、1日ごとに約1時間、入眠時間と起床時間がずれ込む、典型的な非24時間睡眠覚醒症候群の患者になった。
当時、カレンダーで1か月間睡眠記録を取ったことがあったが、きれいに1時間ずつ遅れて、グラフにすると階段のようになっていた。ネットで調べたところ、これらの状態を「フリーラン」と表現するようだ。私の場合は、約2週間で昼夜の起床時間が入れ替わっていた。
このフリーランを続けていると、メンタルに大きな負担がかかる。普通に考えられる負担としては、日中夜間問わず予定が合わせにくくなる外的ストレスがある。しかし、最も負担だったのは、昼夜逆転と正常なリズムが繰り返されることで、内的ストレスが蓄積することだった。夜勤を経験したことがある人はわかるかもしれないが、生活リズムを強制的に変えると自律神経が一時的におかしくなり、動悸を起こしたり、冷汗をかいたり、疲労が取れなくなったりする。こうした無自覚で襲ってくる内的ストレスが体を蝕んでいることに気づいたのは、完治してからだった。それぐらい無自覚だった。
そんな中で色々と調べ、改善方法を試してみた。朝に強制的に起きるとか、日光を浴びるために朝に散歩するとか、適度な運動をするとか、食事の時間に気をつけるとか試してみたが、全部失敗して自信をなくした。全て遂行できないのは、自堕落な自分の忍耐力のなさだと卑下し、メンタルがどんどん蝕まれていった。
何をしてもうまくいかない、そんな中でメンタルの限界を突破した私は、自殺願望が大きくなり、このままでは本当に死んでしまうと思った。そこで、実家に帰ることにした。今思えば、軽い鬱だったのかもしれない。1年間だけの東京生活だったが、今思えば楽しかったな…。
2022年 実家に戻って non24と向き合う
2022年、メンタルがボロボロの状態でしばらく実家で生活していた。その中でも、メンタルの負担となっていたフリーランを止めたいと思い、定期的にネットで情報収集を続けていた。その中で知ったのが、メラトニンの働きについてだ。
メラトニンは体内で生成されるホルモンの一種で、睡眠を促す効果がある。太陽の光を浴びて日中に分泌されるセロトニンが、夕方になるとメラトニンに変化する。このリズムが概日リズムという。このリズムが崩れることが非24時間睡眠覚醒症候群の原因だといわれている。
それに気づいた私は、これを改善する薬はないかと思い、いろいろと調べてみた。
最初にたどり着いたのは「ロゼレム」という薬だった。ロゼレムは脳内にあるメラトニン受容体を刺激し、メラトニンをキャッチしやすくするための薬だ。オンラインクリニックで処方してもらい、飲み始めた。飲み始めるタイミングも夜に寝るリズムの時に合わせ、なるべく夜寝るリズムをキープできるようにしてみた。
しかし、結局のところフリーランは止まらなかった。ロゼレムのおかげでフリーランのスピードは少しだけ緩やかになったが、完全には止まらなかった。
そこからしばらくは、フリーランを継続しながら生活することになった。過去の教訓から、失敗しても自分を責めないことにしたため、一度失敗したら時間を置くようにした。
2023年 メラトニンサプリを知る
2023年春、再び非24時間睡眠覚醒症候群についての文献を調べていた。そこで見つけたのが「メラトニンサプリ」というサプリメントだった。
メラトニンサプリは、メラトニンを直接経口摂取することで体内のメラトニンの濃度を上げて睡眠を促すものだ。ロゼレムと違ってメラトニン受容体を刺激するのではなく、直接メラトニンを摂取するため、体内にあるメラトニンの量に依存せず、摂取量でコントロールできる。
ただし、日本では法律によりこれらのホルモン剤の発売が認められておらず、入手する場合は「iHerb」などのオンラインストアで個人輸入するか、病院で特別に処方してもらう必要がある。
私は、iHerbで試しに3mgのメラトニンサプリを購入した。用法は、睡眠の30分前に1錠飲むというものだった。効果は非常にあったが、副作用が強かった。翌朝の腹痛と不快感がかなり重かった。人工的にリズムを崩しているので、それは当然だとも思った。言い換えれば、睡眠時間2時間で起床したようなコンディションに近い。しかし、起床後1時間もすればその症状は消えて、疲労感もなくなった。
そんなこんなで服用を続けてフリーランは止まった。しかし、しばらくするとフリーランは再開した。またかと思いつつ、しばらく時間を置いて再び文献を探す日々が続いた。
2023年末 完治に向けて
2023年末、ある論文を見つけた。メラトニンサプリが睡眠時間をコントロールできるという内容だった。詳しく見てみると、入眠時間を早めたい場合は夕方18時~19時の間に、入眠時間を遅くしたい場合は朝の8時~9時(当時の論文が見つからず詳しいことは忘れた)に低用量のメラトニンサプリを服用すると効果が出るという内容だった。
また、メラトニンの服用量については、ある医者の記事では20mgまではOKという意見もあれば、脳内のメラトニンの量は0.03mgしかないので、そんな大容量のメラトニンを摂取するのは無謀だという意見もあった。したがって、服用量については自身の体と相談しながら自己責任で調整する必要がある。
そこで、毎日18時半にアラームをかけてメラトニンサプリを飲み続けた。最初は効果を実感できなかったが、服用量を2倍にしてみたところ、フリーランは止まった。そして今に至る。
大切なのは、メラトニンサプリを飲むタイミングと量だということに気づいた。非24時間睡眠覚醒症候群の患者はメラトニンを分泌するリズムが崩れているため、正常な人が自然に18時~19時頃にメラトニンを分泌するリズムに合わせてサプリを飲むことで、これを改善できる。量については、非24時間睡眠覚醒症候群の患者はセロトニンの量が少なく、十分な量のメラトニンを分泌できないこと、またメラトニン受容体が何らかの影響で機能が衰えている可能性があると考えた。したがって、効果が出るギリギリまで少しずつ量を調整することが重要だと思った。
メラトニンサプリを上記の方法で使ってからは、フリーランは止まったが、副作用として不快感が残った。その不快感を何とかしたいと思い、これまでの調べた内容を基に考えた。メラトニンサプリを服用することで、自然なメラトニンの量よりも数倍の量が体内に残っているため、不快感が続いているのではないかと思った。そこで、朝起きたらすぐに日光を浴びるようにした。日光を浴びるとセロトニンが分泌され、何らかの効果があるのではないかと考えた。すると、思った通り、5分ほど日に浴びることで不快感がなくなっていった。
こうして、日光を浴びる習慣が身につき、より強固な概日リズムを作り上げることに成功した。
現在は朝10時に起きて夜2時に寝る生活を送っている。
メラトニンサプリの懸念点
だが懸念点ももちろんある。一つ目はメラトニンサプリの安全性だ。最近では、海外でメラトニンサプリの大量摂取により中毒を起こし死亡したケースもあるそうだ。特に若年層で広がっているらしい。これは持論だが、最初は0.03mgなどの低用量から始めて、効果がなければ徐々に増やしていくのが良いと思う。ある一定の量で十分な効果が得られるタイミングが訪れるので、そこで増量をストップすれば中毒になることはないのではないかと考える。ただし、これは個人差や持病、環境によって左右されるため、自己責任か、医師の判断にゆだねてほしい。
二つ目は薬依存になることだ。睡眠という生活に欠かせない行動を薬でしかコントロールできないということは、薬がなければ不安になってしまうということでもある。その不安が薬の精神依存を引き起こす可能性がある。私もそれを感じており、問題だと思っている。したがって、適切な期間を決めて服用し、飲まない日を少しずつ作っていくことが大切だろうと思う。私も1日飲み忘れたことがあったが、概日リズムはそんなに簡単に変わるものではない。リズムが適正になったら少しずつ減らし、もしフリーランが始まりそうなら飲み始める、といった方法でコントロールするのが良いのではないかと思う。
さいごに
もし同じ悩みで苦しんでいる人がいれば、参考にしていただければ幸いです。こういった睡眠障害については相談先が少なく、実際に相談できる人も少ないため、孤独な思いをするかもしれません。そういった方にこの情報が届けばいいなと思います。
また、こういった睡眠障害について研究が進み、より多くの人に簡単に情報や改善策が知れ渡ることを願っています。
最後に、これらの情報については個人で調べたもので、私見や思い込みも含まれています。もし実践や参考にされる場合は自己責任でお願いします。
ありがとうございました。