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かつやの漬物さえあればいい

どうも、筒子丸です。

あなたがもしもかつやに行った事があるならば、もう壺に入ったあの“魔物“の存在はご存知であろう。かつやに行った事がないから知らない?安心して欲しい。あなたにはこれから存分にかつやのテーブルの隅に潜むかつやの真の主役、
《割り干し大根漬》について存分に知って頂く。

普通の人間ならば今頃(なぜこいつはたかが漬物に“魔物“なんて大仰な言葉を使ってるんだ?馬鹿なのか?)などと思っている頃だろう。確かに俺は馬鹿かも知れない。だが、少なくともあの漬物を食べるまでは馬鹿ではなかった。あれには人をそうするだけの“力“があるのだ。そんなかつやの漬物の“力“はいったいどこから来るのか?それを探るために一先ず原材料を確認してみよう。

魔物の内訳

干し大根、昆布、砂糖類、醤油、保存料類、これだけだ。薬物並みの中毒性を誇りながら原材料はたったこれだけ。ご家庭でも再現できそうな構成だ。しかし、このシンプルな具材のハイブリッドであるからこそかつやの漬物は素晴らしい。余計な物は一切入っていない、完成されたレシピ。大根、昆布、砂糖、醤油はかつやの漬物になるために生まれてきた食材で、それ以外の物に使うのは食材を創りたもうた神への冒涜とまで言えるかも知れない。漬物にはうるさい俺にそう言わせるくらいこの漬物は美味いのだ。だが、このかつやの漬物にも1つだけ欠点はある。持ち帰りで買う際、100gずつしか買う事ができないのだ。100g100円、悪くない値段だが100gなぞ一食、持ったところで二食でなくなってしまう。やはりかつやの漬物はかつやで楽しむ事で無くなる事を心配せず、最高のユーザーエクスペリエンスが得られる。かつやで食うことで初めてかつやの漬物はその真価を発揮するのだ。では、どうしたらかつやの漬物を100%楽しめるのか?世間的には“はしたない“などと言われるかもしれないが、周りの目などどうでもいい、世の“ジャンキー“達の為に俺の漬物の流儀をここで伝授しようと思う。

漬物の流儀

まず、普通の人間がかつやに入って席に着いてから最初にする事は何か考えて欲しい。まあ大抵は水を飲むか、メニューを見るだろう。愚民共め。こんな事をしている内にも漬物はあなたの口に運ばれる事を今か今かと待っているのだ。生粋の漬物ジャンキーの俺は水を持ってきた店員さんにこう伝える。
「取り皿もらえますか?」
十中八九、店員の頭の上には?が浮かぶ。常人には理解できない行為なのだ。まだ料理の注文すらしていないのに何を取り分けるというのか。そんな疑問が脳内を駆け巡りながら彼、彼女らは取り皿を取りに行く。しかし、かつやのメインディッシュはもはや漬物と言っても過言ではない。一刻も早くメインにありつくために俺は取り皿を頼むのだ。

取り皿をもらったら、いよいよ漬物タイムの始まりだ。座ってからずっとこちらをチラチラ見ていたあの壺の誘惑に負け、その蓋を外す。
うっひょ〜〜〜〜!!!!!
そこに広がる黄金の光景。この店を出るまで、この壺の中身は俺だけの物なのだ。もう口から涎が垂れそうになっているのを何とか抑えながら、
壺に入った“この世の全て“を取り皿に盛る。ラフテルになんか行かなくていい。ここにあったんだから、俺のワンピースは。
てんこ盛りに盛った漬物を口に運びながらここでやっとメニューを見る。これが漬物プロとアマチュアの違いだ。ポリポリという心地よい音を立てながら漬物を噛み、今日の漬物のお供はどれにしようかとあれこれ思いを巡らせる。期間限定のメニューがあればそれを頼む事もあるが、大抵の場合俺はソースカツ丼に落ち着く。そうしてカツ丼を頼み、カツ丼届くまでの間もお茶を飲みながら漬物をつまむ。この漬物はお茶受けとしても非常に優秀なのだ。そうこうしているとカツ丼がテーブルに届く。流石はかつや、美味い安い早い。そうして届いた脇役の上に主役をたっぷりと乗っけながら俺はカツ丼をかっ喰らう。ポリッ、ザクッ、ジュワッ。お互いの良さを引き出しあう、漬物とカツ丼のスーパーコンボ。それはまるで悟空とベジータのフュージョン。ゴジータ並みの旨さがそこにはあった。

漬物のカツ丼のハーモニーを楽しみ終わり、器が空になると俺はひと息つく。(はー旨かったぁ…)
そう思いながら俺は空になった器にさらに漬物を盛る。終わりだと思ったか?馬鹿め、俺はこんな所で終わる男じゃねえ。“デザート“がまだだろ?そうしてカツ丼を食い終わった後もポリポリと漬物とお茶を楽しむ。かつやの漬物は食べ放題なのに時間制限なんてない。存分に舌がピリピリして来るまでデザートを楽しみ、お茶を飲み干すと俺は店を出る。

これだけ楽しんで500円前後。しかも毎回100円割引券を渡される。この地獄への片道切符が財布の中にチラつくのを見る度に俺はまたかつやに行きたくなってしまう。かつやにいる間は天国だが、店を出たが最後、また行くまでの間漬物が食えない地獄の始まりだ。こんなに中毒性が高いかつやの漬物、もはやドラッグと言って差し支えないだろう。そうして最高のかつやエクスペリエンスを終えた俺は、また次いつかつやに行こうか考えながら、店を出る。体はかつやから離れても、心はかつやの檻に囚われ続けるのだ。

ここまで読んでくれた諸君には間違いなく才能がある。さあ、君も俺と一緒にならないか?
 
 か つ や ジ ャ ン キ ー
“かつやの漬物中毒者“

にさ………


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