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薬剤師として、患者さんのナラティヴを把握しながら、対話する意義(前編)


タイトルつけてみたが悩ましい


皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

毎週日曜日は、しがないポンコツ薬剤師である、
私、町田和敏が薬剤師や仕事について語る日。

ここ2週は事例紹介なく終わりましたが、
今回はまた事例を紹介したいと思います。

なお、年齢などの詳細は変更しており、
個人情報が特定されないよう配慮しております。

また『薬剤師』がこんなことしている、というよりは
『私という薬剤師』がこんなことしたよ、
と捉えていただければ幸いです。

こんな薬剤師もいるんだぁとか、
こんなことあるのねぇとか、
へぇそうなんだぁくらいに捉えてくださ
いね。

ちなみに、タイトルをつけてみましたが、
タイトル通りの内容になるかちょっと自信ないですが、
ゆるりと書いていこうと思います。


◼️患者さんの背景(ナラティヴの説明も兼ねて)


80歳代男性


この方(仮にAさんとしましょう)は、
いつも朝早く来客されます。

隣の病院が8時には開院するのもありますが、
うちの薬局に来るのは8:30〜9:00といったところ。

最初に出会った頃は、どちらかと言うと、
ぶっきらぼうな印象だったAさんでしたが、
何度も何度も顔を合わせる内に、
お互い気心がしれてきます。

Aさんのお孫さんが薬学部にいるって話だったり、
Aさんは山登りや釣りが趣味だということだったり、
Aさんが以前働いていた場所や今の生活だったり、
そんなAさんの背景がわかってきました。

私は、そうした患者さんのナラティヴを、
薬歴という、医師でいうところのカルテのような、
記録にしたためていきます。

ちなみに、あらためてナラティヴについて、
宮坂道夫研究室というサイトから引用します。

リースマンによれば、ナラティヴという概念の定義は研究者によって異なりますが、整理すると以下のような特色を持つものと言うことができます。
1.特徴的な〈構造〉を持つ。
2.〈時間の流れ〉と〈起こった出来事の報告〉を含む。
3.語り手が聞き手に対して、出来事を〈再現〉してみせる(実際にあったのだと〈説得〉する)。
4.聴衆の〈感情〉に働きかける。
5.研究インタビューや治療的会話の中での〈長い語り〉である。
6.〈ライフストーリー〉である。
このうち、1.〜4.は、「語り」がナラティヴであるための条件を示しています。「今日、学校に行ったよ。」はナラティヴではないでしょう。時間の流れを表現していませんし、出来事の再現がほとんどな、これを聞いた人が感情を揺さぶられることもまずないでしょう。
ところが、「今日、学校で新しい友達ができたけど、ケンカをしちゃったよ。」はナラティヴと言えるかもしれません。なぜなら、時間の流れを感じさせます(「学校に行った」「ケンカをした」という2つの時間を含んでいます)し、この話を聞いた人はちょっと感情を揺さぶられ、「どうして?」「何があったの?」とさらに聞きたくなるでしょう。
これに対して、5.と6.は、研究者が行う調査や、医療従事者が治療などの中で行う会話の中で現れるナラティヴの条件を示しています。

(参照:宮坂道夫研究室 Michio Miyasaka Lab  医療倫理とナラティヴ理論の研究)


◼️薬歴についての私の考え


薬歴についてもサラッと書いてみる


先程、薬歴という言葉を書きましたが、
あらためて薬歴について簡単に説明しようと思います。

まずは、いつものように引用してみます。

薬歴は、正式には「薬剤服用歴」と呼ばれています。
患者情報を集積したもので、適切な服薬指導などには欠かせない資料となります。
また、調剤報酬請求の根拠ともなっている記録です。
出典:厚生労働省 保険調剤の理解のために
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/shidou_kansa_03.pdf )

(参照:薬歴とは)

今回、電子薬歴メーカーのホームページから
引用してみました。

このページに飛んでいただけるとわかるのですが、
基本的に、薬歴の記載事項も決められています。

保険調剤をするうえで、記載しておくべき内容が、
決められているということです。

ちなみに、その記載事項も先ほどのリンク先から
引用してみます。

ア. 患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先)
イ. 処方及び調剤内容(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、処方内容、調剤日、処方内容に関する照会の内容等)
ウ. 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向
エ. 疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。
オ. 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況
カ. 服薬状況(残薬の状況を含む。)
キ. 患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)及び患者又はその家族等からの相談事項の要点
服薬指導の要点
ク. 手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無)
ケ. 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点
コ. 指導した保険薬剤師の氏名

(参照:薬歴とは)

こうした記録をとりながら、
患者さんの薬物治療をサポートしたり、
副作用がおきないようにするのが、
我々、薬剤師の仕事の1つです。

といった感じで紹介した薬歴に、
私は患者さんのナラティヴ要素を記録していきます。

例えば、
・薬に対してどんな認識を持っているか
・患者さんの家族構成や生活背景(独居か?など)
・趣味や仕事にどんな気持ちを抱いているか
・今どんなことに喜びや悲しみや不安を抱いているか
・病気に対する印象は
 (親の病気を見てどんな気持ちを持っていたか?など)

ざっとあげただけですが、
他にも患者さんの記録として重要だなぁ、
と感じたものは記録していきます。

なぜなら、こうした患者さんのナラティヴが重要だと、
日々薬剤師として仕事をする上で感じているからです。


◼️Aさんの変化


いつもと様子が違う


さてさて、話をAさんに戻しましょう。

何度も顔を合わせる内に、
2〜3ヶ月顔を合わさないと、Aさんから
「しばらくだな!どっか行ってしまったのかと思った」
なんて声をかけてもらったりしました。

Aさんと対話するうちに、
最初のぶっきらぼうな印象からは様変わり、
明るく元気な印象を抱くようになりました。

そんなAさんが、
あるとき悩みを打ち明けてきたのです。

その表情は神妙で、
こちらも慎重に言葉を選ばないと、
と思わせるほどでした。

この続きですが…
来週書いていこうと思います。

勿体ぶってすみません。

もしよければ、
また来週の続きをお楽しみに。


こんなポンコツな私ですが、もしよろしければサポートいただけると至極感激でございます😊 今後、さまざまなコンテンツを発信していきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします🥺