睡眠薬を飲み過ぎている可能性が高い患者さんの事例(前編)
薬剤師のお仕事
ドラマ『アンサングシンデレラ』が放送され、
薬剤師という仕事が知られるようになりましたね。
しがない薬剤師である私にとっても、
とても嬉しい限りです。
今月からは薬剤師が主人公の漫画もはじまりました。
漫画好きな私としては『要チェックやでぇ』
と突然の相田彦一状態に陥ってしまいます。
というわけで
今週から曜日毎に書く内容を変えており、毎週日曜は
『薬剤師』について語っていきたいと思います。
私が経験した症例を書いたり、
薬剤師の仕事を紹介したり、
薬剤師の方にも、そうでない方にも、
読んでもらえるようにしていきたいです。
薬剤師を語る企画、第1回である今回は、
私の経験した症例をご紹介します。
なお、年齢などの詳細は変更してあり、
個人情報が特定されないように配慮しております。
また『薬剤師』がこんなことしてる、というよりは
『私という薬剤師』がこんなことしたよ、
と捉えていただければ幸いです。
こんな薬剤師もいるんだぁとか、
こんなことあるのねぇとか、
へぇそうなんだぁくらいに捉えてくださいね。
◼️眠剤を飲み過ぎている可能性
80歳代男性
妻と2人暮らし
処方内容は眠剤2種類
朝8:30〜9:00頃に来局
シフトの関係で、この患者さんとお会いしたのは、
この方が当薬局を利用し始めて暫くしてから。
薬歴を見て受診間隔が短いことが気がかりでした。
処方箋に書いてある日数は毎回14日分なのですが、
薬をもらって7〜10日すると病院に来る感じ。
患者さんとお話すると「眠れないのが辛い」
「薬がないので来た」とおっしゃられました。
何時に薬を飲むのか?
何時に就寝するのか?
眠剤は2種類だがどうやって飲んでいるのか?
患者の睡眠への希望は具体的にどうなのか?
そんなことを聴いていきました。
受診間隔という事実からは、
薬を紛失しているか、飲み過ぎているのか、
そういったことが考えられましたが、初対面なので、
そうした『疑い』は質問しないことにしました。
「そうだったんですね、薬がなかったんですね」
上記の質問以外には、そのように声かけし、
訴えに対して共感的繰り返しで対応しました。
◼️患者さんとのラポール形成
ラポールとは信頼関係
共感的繰り返しを用いたのは、
患者さんと初対面で信頼関係が形成されていない、
ということもありましたが、
この事例の場合には、他にも理由がありました。
お薬手帳を見ると、今回の処方箋に記載された、
眠剤2種類が色々な病院で出されていたのです。
処方されている日付を見ると、
日付が重複していないことや、
ある一定期間は1つの病院を利用された後、
病院が変わっていることがわかりました。
こうした事実から推測されたのは、
・病院で眠剤処方について注意されたのかな?
・病院から「これ以上出せない」と言われたのかな?
・薬を変えると言われて嫌だったのかな?
と推測というよりは妄想に近いものですが、
そんなことを考えました。
このような事例の場合には、
地域の病院を転々としたり、
他地域の病院を利用されることもあり、
慎重な対応が必要だと思いました。
何より患者さんとの信頼関係の構築が必要
基本的に『飲み過ぎている』という言葉は使わず、
患者の気持ちを傾聴していくことにしました。
◼️情報共有の必要性
薬局内だけでなく病院も
この患者さんに対しては、
患者さんが不快に思ったり、不満を抱えたりすると、
別の病院に行ってしまう可能性が高いため、
関係職種には情報共有する必要があると感じました。
これは『客が逃げる』とかそんな次元の話ではなく、
患者の悩みが解決されない状態が続いてしまう、
そうならないようにしたいからです。
それに、医療従事者の視点からは、
『眠剤の飲み過ぎ→転倒→寝たきり→介護』
というストーリーを描くこともあり、この点からも、
そうならないようにしていきたいと思ったのです。
ちなみに、この患者さんの薬局内での動きは、
歩行や立ち上がりもゆっくりで、
待ち時間も寝ていることがあり、
おそらく眠剤の効果が出過ぎていると感じました。
上記のストーリーになりやすそうだな、
と思った次第です。
情報共有と書きましたが、具体的には、
・お薬手帳の情報(病院が変わっている)
・どの病院でも同じ薬が出されていること
・慎重な対応を続ける必要性が高いこと(私の意見)
といったことでした。
こうした内容を、薬歴で共有し、薬剤師間で共有し、
病院とも情報提供書や電話で共有しました。
さてさて、この患者さん、一体これから
どうなっていくのでしょう。
長くなってきたのと、
一緒に寝る娘が起きてしまったので、
来週日曜日に続きを書いていきたいと思います。
それではまた来週お会いしましょう。