K SIDE:PURPLE 03
著:鈴木鈴
月日は過ぎていく。
ヒグラシの声を聞く夏の夕べを、金色の落ち葉を掃き清める秋の夜長を、吐く息が白く曇る冬の朝を――紫は、何事もなく過ごしていった。
変化らしい変化は、なにも起きなかった。紫の年齢と学年がひとつ上がっただけで、それ以外は同じ日常が続いていくばかりだった。
変わらない日々の中で、時折、タカさんの言葉を思い出すこともあった。いつかきっと、『これだ』と思えるものが見つかる――残念なことに、その『いつか』はまだ訪れてはいなかった。訪れるかどうかさえ、紫にとっては確信が持てなかった。彼の目で見れば、世の中には美しいものを持っていない人間のほうが数多いのだから。
いつか自分も、そのような人間になるのだろうか。漠然と、そんなことを思いながら、日々を過ごすうちに――
美しいものは、ゴミためで見つかった。
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