見出し画像

K SIDE:PURPLE 03

著:鈴木鈴

 月日は過ぎていく。
 ヒグラシの声を聞く夏の夕べを、金色の落ち葉を掃き清める秋の夜長を、吐く息が白く曇る冬の朝を――紫は、何事もなく過ごしていった。
 変化らしい変化は、なにも起きなかった。紫の年齢と学年がひとつ上がっただけで、それ以外は同じ日常が続いていくばかりだった。
 変わらない日々の中で、時折、タカさんの言葉を思い出すこともあった。いつかきっと、『これだ』と思えるものが見つかる――残念なことに、その『いつか』はまだ訪れてはいなかった。訪れるかどうかさえ、紫にとっては確信が持てなかった。彼の目で見れば、世の中には美しいものを持っていない人間のほうが数多いのだから。
 いつか自分も、そのような人間になるのだろうか。漠然と、そんなことを思いながら、日々を過ごすうちに――
 美しいものは、ゴミためで見つかった。

ここから先は

4,846字

KFC/KFCNサルベージ

¥300 / 月 初月無料

K Fan ClanおよびK Fan Clan Nextの小説等コンテンツを再掲したものです。

K~10th ANNIVERSARY PROJECT~

¥1,000 / 月 初月無料

アニメK放映から十周年を記念して、今まで語られてこなかったグラウンドゼロの一部本編や、吠舞羅ラスベガス編、少し未来の話など様々なエピソード…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?