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上沢投手ホークス入団。どんな業界でも、結局社会は人間同士の関わり合いで回っているのにな、と思う

昨年末、上沢直之投手がMLB挑戦から帰国し、ソフトバンクへ入団することが発表された。

元々僕は上沢投手が好きだった。頭角を表し始めた年は良い若い投手が出てきたとワクワクしたし、膝蓋骨骨折した後に復帰した時は本当に嬉しかった。正直現状納得いかないし、今後応援しようとは思わない。

当方北海道日本ハムファイターズファンのため、かなりファイターズ側にバイアスのかかった意見になってしまうだろうが、一応思ったことを書いていく。言語化の練習も含めて。


何に納得がいかないか?

僕としては、ホークスに入団したことそれ自体は別に仕方ないと思っている。腑に落ちないのはここに至るまでのプロセスだ。

  1. マイナー契約でもポスティングで移籍したいと直訴

  2. メジャー契約のオファーを蹴り、投手育成に惚れ込んだレイズにマイナー契約で入団

  3. 春季キャンプでメジャー昇格が叶わないとみるやレイトスプリング・クローズ条項を行使し、メジャー契約オファーを貰ったレッドソックスに移籍

  4. シーズン終了後に帰国し、ファイターズの施設でトレーニングを実施

  5. 「12年間在籍して育ててもらったファイターズに一番、思い入れがあります。ただ、どの球団でも話を頂けるのであれば『結構です』と言うのではなく、一度話を聞きたいと思っています」と他球団との交渉も匂わせる

  6. この間もファイターズ球団のイベントに参加

  7. ホークス入団決定

正直リアルタイムで見ていた時も、1〜3でかなり考えがブレているなと感じていた。
ただ、人の考えは変わるものだ。

アメリカで活躍できず、1年で夢を諦めて帰国することになったが、ご本人の努力を否定するつもりは全くない。
きっと頑張って、でもうまくいかなくて打ちのめされたんだろう。個人的に気になるのはやはり帰国後のムーブだ。

ファイターズの施設でトレーニングをし、球団イベントにも参加しながら、他球団と交渉するのは流石に筋が通らないのではないかと思う。

おそらく、これらはファイターズ側の好意で「使って良いですよ」と申し出があったものだろう。ただ、帰国後すぐに他球団に行くことを仄めかしている(5)ように、元々自分の中で移籍も視野に入れていたのなら申し出はきっぱり断るべきだと思う。

関係者からは「ナイスガイ」と言われていたようだが、こんな行動を見せられたら、誰に対してもその場その場で耳心地の良い言葉を言ってしまうだけの八方美人なのでは、と邪推してしまう。

さらには渡航時の通訳もファイターズの通訳を伴っていたり、帰国後の怪我の検査等もファイターズにお世話になっていたというのだから、ファイターズの関係者からすれば、これまでの働きが徒労に終わった感があるのではないかと思う。

新庄監督がインスタのフォローを外したらしいが、これが演出でなく本当に怒っているとすれば、上沢選手のために一生懸命動いた関係者を裏切り、そして何より応援してくれるファンを思いやらない行動に怒った・呆れたのではないかと想像する。「ファンは宝物」の精神を浸透させたはずだった新庄監督にしてみればがっかりだろう。

ホークスはオファーすべきでなかったのか

個人的にはホークスが悪かったとはあまり思っていない。

石川投手がFAで退団し、ローテション候補の投手の獲得はチーム状況的に間違いなく必要な中、ルール上獲得が可能な上沢投手の獲得に動くのは理にはかなっていると思う。

まあ、自球団がポスティングを許可しないのに節操がない気はするがそれは別問題だろう・・・。

ルール改定論

近年では有原、上沢両投手によって示されたように、FA権取得前にポスティングで移籍し、その後1〜2年の短期間でNPBに復帰、前所属球団とは別の球団へ入団するという抜け穴的FAが現行ルールでは可能だ。

そもそもがポスティングで移籍した選手が短期間で復帰することは想定されていないのだ。確かに、何らかのルール改正はした方が良さそうに思える。

上沢投手の件を受けて、改めてポスティングを認めることはリスクがあると再認識した球団もあるかもしれない。

今回のファイターズのように、選手の夢を応援してマイナー契約でもポスティングを認めるなどということはまず無くなるだろうというのは当然として、確かな実力者に対しても認めづらくなってしまわないかは心配だ。

自球団の選手が1〜2年後にライバル球団に流出してしまう可能性があるのだから。

ルールは往々にして不完全なものだろう。このように規制の穴をつく人が出てくると、その穴を埋めないといけなくなる。

真面目な人間が馬鹿を見ないように、なるべく公平になるように。

学校のルール、職場のルール、ルールはどこにでもあるが、理想を言えば、細かなルールなんてない方がみんな幸せなはずなのだ。

果たしてビジネスの世界に義理人情は不要なのか

選手としてより良い契約を取るのは当然という意見

これは同意です。スポーツ選手は選手寿命もあり、稼げる時間は短い。何より自分自身の価値をより評価してくれる契約をしたいのは当然だろう。

このノートのように批判しているファンが上沢選手の生活を保証してくれるわけではないのだから。

感情論は言うべきではないのか

一部のOBはプロ野球はビジネスであり、感情論は言うべきではないと主張している。

確かに、プロ野球(選手)はあくまでビジネスだ。

だが、そもそもプロスポーツとは何だろう。見てくれる観客・応援してくれるファンの感情を揺さぶるのがプロスポーツのはずだ。ファンは理屈で応援などしない、感情で応援している。

会ったこともない人間達がグラウンド上で起こす常識を超えたプレー、チームメイトを奮起する咆哮、大逆転のドラマ、それらに心を動かされて、感動して、もっと応援したい、球場に足を運びたい、その結果としてお金を落としていくものだと思う。

「プロ野球の存在意義はそこの街に住む人達の暮らしが少しだけ彩られたり、単調な生活を少しだけ豊かにする事に他なりません」

とは他ならぬ新庄監督が就任時にTwitterで発信した言葉だ。

プロ野球は人々の感情を動かすことで成り立っている「ビジネス」だ。そういった意味で、この件に関してもファンがどう感じるかは自由であり、感情論を否定することはできないと思う(当然選手への誹謗中傷は許されないが)。

だからと言って、何でもファンの言う通りにしろというわけではないが、上沢選手には応援したいと思えるような選手でいてほしかった。

そして、ビジネスで何より重要なのは結局のところ信頼関係だと思う。関係の破綻した相手と取引したいとは思わないだろう。
そう言った意味で、今回上沢選手の失ったものは大きいのではないか。

もちろんそれも覚悟の上だとは思うが。

しかし、野球界、芸能界、世の中には特殊な業界は色々あるけれども、結局は人間同士が関わり合って社会は回っているのだから、自分に関係する人間の感情を考えない行動を取って良いことはないと個人的には思う。

どう「してほしかった」か?

どうすべきだったか、と言うのはおこがましいのであくまで自分がこうしてほしかったと言う話だと、

  • 1年だけファイターズでプレーしてFAを取得し、他球団移籍

これは誰も文句ないと思う。またはファイターズに復帰しない場合でも、

  • 帰国後、ファイターズの施設利用、球団イベントに参加しない

これならまだ批判も少なかったのではないか。

しかし本人は熟慮の上の選択だと言うが、自分の納得のいく選択をしたのならホークス入団会見ではもう少し清々しい姿を見せてほしかった。あれでは「やましい選択をしました」と言っているようなものだ。あんな表情を見せたところで意味はない。

これから何十年か後に、「あの時の選択は正しかった」と自分自身で思えるように頑張ってほしい。応援はしません。


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