軽度知的発達障害児が特別支援学校に 居場所を見つけるまでの長すぎる軌跡〈2〉就学前の医療と福祉サポート
小学校入学前の医療と福祉サポート
入学する前の就学相談の話から書き始めたいと思っていましたが、実は就学相談というものを、私自身も上の子たちの時には聞いたことがありませんでした。学生時代教育学科で小学校教員養成課程にいたため、きっと就学相談についても学んだはずなのですが何も覚えていませんでした。
しかし、すーちゃんが幼稚園年長になり、他の子と比べて発達の遅れや特性が目立ってくるようになり、小学校はどうするのかと悩みだしたころに初めて「就学相談」を知ることになりました。その話だけ聞くと、「準備は何もしてこなかったのか?」とか、「知的障害が分かった時、どうすればいいのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
そうすると、もともと利用していた医療や福祉サービスの話から始めたほうが一連の流れがわかりやすいのでそこから始めることにしたいと思います。就学相談については、後日。医療や福祉サービスを利用することや、知的障害の有無を調べる検査を受けることは、家族それぞれの考え方によって異なりますので、すーちゃんが利用していたケースをお伝えします。
医療
すーちゃんが医療と最初につながったのは、5歳の時でした。3歳児検診の時には「元気な子でいいわね」と発達に関しては特に指摘を受けなかったため、上の子たちと違ってどれだけ大変かを訴えたましたが、今後の経過を見るということにとどまりました。自分自身の中でずっと気になっていたのに、最初の受診までに時間がかかったのは以下の理由があったからだと思います。
小児科医の友人がいて気軽に相談ができていたこと
児童精神科という未知の世界に抱く不安
受診したらすぐに服薬させることになるのかという不安
どこの病院に行けばよいのかわからなかったこと
私が連れていきたいなら連れて行ったらという夫の考え方
上記の理由があってなかなか最初の受診にこぎつけなかった私を動かしたのは、仕事で多くの子どもと関わっていた公認心理士をしている友人の言葉でした。「児童精神科は全然怖くないよ。いわゆる精神病院のようなところを想像しているならそれは全く違うよ。もしよければ感じの良い女性の先生を知っているので紹介するから気楽に行ってみると良いと思うよ。受診したからってすぐに服薬開始しますとかそういうことはないから安心して相談してみて。」というような内容に背中を押され翌日には受診の予約をしました。
初回の受診には、本人もつれていきました。初診は1時間ほどの枠があり、診察室の中で話をしたり、飽きたらそこにあるおもちゃで遊びながら医師が様子を観察したりして終わりました。
そこでまず初めに勧められたのは、病院付属機関で行われている子どもに対する声がけや、対応の仕方を学ぶ「ペアレント・トレーニング」でした。平日日中だったのもあるたまたまだとは思いますが、私が参加していた講座は全5回コースで参加者は全て母親のみでした。その様子をみて、まだまだ障害児育児が母親中心になっているのを感じさせざるを得ない場面でした。というのも、私以外はみな仕事をしている母親でありながらも、仕事を休んで参加していたからです。
このようにして初回の受診を終え、ペアレント・トレーニングを受け、月に一度の定期受診が始まるようになりました。服薬に関しても相談し、現状では必要ない、発達障害や知的障害の診断も必要なときに発達検査を行ったうえで診断名として出すといったものでした。
福祉サポート
幼稚園時代に使っていた福祉サポートは下記の二つあります。
保育所等訪問支援
児童発達支援
保育所等訪問支援
これは、厚生労働省によると《保育所等訪問支援は、前述の児童福祉法の定義にもあったように保育所や幼稚園、認定こども 園、学校、放課後児童クラブなど集団生活を営む施設を訪問し、障害のない子どもとの集団生活 への適応のために専門的な支援を行うものです。》となっています。
すーちゃんの場合は、幼稚園に定期的に訪問してもらい集団で生活していく上での支援を具体的に提案してもらいました。例えば、パーソナルスペースがわかりにくいので、お弁当の時の机の上にわかりやすいようにテープで自分の空間はここまでと視覚的に自分の場所を確保するようにする。歌の歌詞などは文字でも見れるようにするなどです。
このようなサービスを使うことにより、子どもがより園で生活しやすくなるように、そして先生方が支援を必要とする子どもへの接し方や対応法を知るだけでなく、保護者、教育、福祉サービスを連携させ継続させていくことが必要と感じた初めての瞬間でした。
児童発達支援
こちらも厚生労働省によると《児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正 な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行 う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な 援助である。》とありますが、内容は様々で東京都の場合は乱立しているもののそのサービスの質には本当に差があるというのを利用者として、また内部で働いた経験から認めざるを得ない状況です。
児童発達支援サービスは、運動系、勉強系、アート系、音楽系、ソーシャルスキル系と様々な種類のところを見学しました。しかしながら、療育という観点からみて、上記の内容を踏まえて援助を行っているというよりは、そこに来れば楽しい、好きな事をささられる、預かってもらえる、もしくは勉強させてもらえるということを保護者が重要視しているように感じました。身体的・精神的機能の適正な発達を促しているかと言われると大いに疑問が残ります。
健常児と一緒のお稽古をさせたい、もしくは少し大変でもあえてそちらを選択する保護者もいると思いますが、私の場合は、健常児と混ざってのお稽古でしんどい思いをしたことがあり、自分の子どもを健常児と一緒に活動させるには限界を感じるようになったため、児童発達支援サービスは障害児のお稽古というくくりで参加していました。
体を動かすことが好きだったので運動系の児童発達支援サービスを利用していましたが、上の子たちの子育てもあったため、家から近く通いやすいところというのを優先させました。
週に3回1時間ほど担当者と思い切り体を動かすということを楽しんでいましたが、そこに療育的なカリキュラムがあるかと問われれば書面上ではあっても現実にはほとんど無かったと言ってもよいかもしれません。
ただ、当時はとにかくすーちゃんの居場所の確保を家庭と幼稚園以外にしたかったので、本人が安心して楽しく過ごすということに焦点をあてていました。とても楽しく通っていたのですが、楽しい=何でもやってよいわけではないというところで何度かおやっと思うことがあり、回数を重ねたときに辞めることをお伝えしました。
例えば、課外活動の時に「駐車場の発券機を押して券が出てくるのを楽しんでいたので20枚ほどとってきました」「屋上に上がれるマンションがあったので運動を兼ねて階段で上まであがってみました。」と意気揚々と報告があったら、みなさんが親だったらどう思いますか。私は、責任者に連絡をしてすぐに謝罪に行ってくださいとお願いをしました。これは楽しい遊びでもなんでもなく《日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行 う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な 援助である。》というものとは正反対の社会生活の上でやってはならないことです。特性のある子だからこそ、そのような行動をしたことでこだわりを助長してしまう可能性があるので、家庭ではやってはいけないこととして教えていたルールがいとも簡単に破られてしまったのです。
このようなことがあり小学校入学後しばらくしてやめ、他の事業所に変えました。新しく通い出したところはカリキュラムも工夫されていて素晴らしくスタッフの声掛けも良いなと思う面がたくさんありました。ただ、小学生から高校生までが一堂に会するというのは、子どもたちの特性もバラバラなのでそこでの集団生活もなかなか難しいこともありました。すーちゃんは、学校生活が落ち着かなくなったと同時にお休みするようになりそれが今もお休みしている状況ですが、また是非行きたいと思っています。
入学前の医療と福祉サポートについては以上になります。次回はいよいよ、就学相談の内容になります。これは相談といえるのか・・・と思う場面が多々ありました。私自身どうしても、自分の中で言われるがまま、はいはいと納得する正確ではないので簡単にはいかないわけです。
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