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命のストーリーに囲まれて ~老人と海~

50代に差し掛かった頃、祖父はALSと診断され、二つの選択肢を突きつけられた。家族の介護を前提とした人工呼吸器を選ぶか、点滴で数か月後に最期を迎えるか。まだ終わらない人生の熱と、これから待ち受ける人生の困難を抱えて、祖父は人工呼吸器をつける道を選んだ。

へとへとだ、こんなに疲れたことはない。(中略)

どうなっているんだ。こういう一回ごとに意識が薄らぐのではないかという気がしてきた。どうなってるんだ。あと一回やってみよう。その一回をやってみて、魚を引き倒したところで、気が遠くなりかけた。(中略)

もう一度、と老人は心に決めた。とはいえ、既に手のひらは皮膚がずたずたに破れているし、目もおかしくなって映像が断続するようにしか見えない。

老人と海 ヘミングウェイ

人は可能性がある限り、それがどれくらいの可能性なのかわからないなかでそれに望みをかけて決断し、奇跡を信じて挑戦し、そしてその戦いがいつかその結果が成功でも失敗でもなかったことに気づく。

後はベッドで寝てしまう。あれは味方だ。ただ寝るだけで、素晴らしい。まあ、負けてしまえば気楽なものだ。こんなに気楽なものだとは思わなかった。さて、何に負けたのか。「何でもない」「沖へ出すぎたんだ」

老人と海 ヘミングウェイ

人は命をかけて何に立ち向かうのか、これから先の人生で僕が次に命の選択を迫られた時、どんな判断基準でどんな選択をするだろうか。

早くよくなってくれないと困るよ。まだまだ教わることはあって、何でも教えてほしいんだからね。

老人と海 ヘミングウェイ


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