vol.03 Let's talk about politics... 都市とリーダーシップ、Z世代が作るオンラインZINE、屋久島
2020/07/16 配信記事
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東京で都知事選が終わり、今年は投票権がなかった私は、なんだかなあという沈鬱な気持ちにかられている。東京というメガシティを統治するリーダーシップに関しては、選挙が終わってしまった今も、話し続けなければいけないような気がしている。パブリックスペースの活性化や空き家の活用といった話題と同じように、都市のガバナンスや政治について、これからもっといろんな人と議論してみたい。
by Mariko
🎧 Podcast New Release
【#15】GUEST TALK🎤「都市と政治 」-NY在住アーバンプランナー古澤えりさん
(前編)https://bit.ly/2ZvtcoM
(後編)https://bit.ly/2OpFYyB
政治学者・ベンジャミン・バーバーの著作『If Mayors Ruled the World(もし市長たちが世界を治めたら)』に出会ったのは、3年ほど前のこと。彼は、国家レベルの政治システムが世界各国でいかに麻痺しているか、そして、地域レベルでの政治が、複雑な課題解決においていかに重要であるかを論じている。国政レベルでの議論は苦手な人も多いかもしれない。では、市や町、ネイバーフッドを舞台に、都市の政治について、議論してみるのはどうだろうか。実際のところ、都知事や区長、市長はどれくらいのパワーを持っているのか?都市における政治への市民の関与は、どのようになされるべきか?私たち自身、まだまだわからないことも多いけれど、もっと多くのアーバニストと、そんなことを話してみたいなと思っている。まずは、ニューヨーク在住のアーバンプランナー、古澤えりさんと話をしてみることにした。
👀 Good News of the Week
投票率をあげるには?北欧での若者の選挙意識から考える
そこまでの盛り上がりもなく終わった都知事選。他国ではどのように選挙を捉えているのだろうか。オスロ在住のジャーナリスト・鐙麻樹氏による記事では、北欧の、特に若者たちの選挙に対する意識について語られている。北欧では、政治や社会問題について、個人としてその事象を考え、意見を交わす機会が日常的にあるようだ。そういえば、今回ポッドキャストでゲスト出演してくれた古澤さんの会社では、BLMの活動が始まってすぐ、全社で毎日、人種問題について議論する機会が設けられたそうだ。ケンブリッジ・アナリティカ社とfacebook社のスキャンダルを描いたNetflixの「グレート・ハック」も、政治意識と情報についてまた違った視点で考える素材となるのでおすすめだ。
自宅待機中の音を世界からサンプリング。#Stayhomesound
緊急事態宣言と外出規制が解かれた日本だが、第二波の影響もあり、まだ大腕振るっての外出や旅行は憚られる日々が続いている。自宅で過ごす時間が長いと、普段よりも、家で聞こえる音に敏感になっている人も多いかもしれない。イギリス在住のサウンドアーティストStuart Fowkesが主宰するプロジェクト・City and Memoryが、コロナ禍での人々の生活の音を拾いあげる#Stayhomesoundをはじめた。窓を開けた時に聞こえる鳥の声、道路から聞こえてくるサイレンや車の音、隣人の笑い声など、普段の何気ない音をサンプリングするプロジェクトで、世界中から誰でも音源を提出できる。インタラクティブな地図で世界の音源を一覧して視聴できるので、耳で世界を旅しているような気分になれる。
『heartbroken zine』コロナ禍で10代の女子10人が始めたオンラインZINE
8カ国から集まった10人のティーンエイジャーが、若いクリエイターやアーティストに向けたオンラインのZINEをつくり、発信している。内容は多岐に渡り、彼女たちの日常を切り取った「Sunday Funday」というコーナーでは、ミニZINEの作り方から使わなくなったボトルのリサイクル方法などを紹介している。社会問題についても積極的に扱っており、例えば、コロナによって解雇されたバングラディッシュの労働者に向けて、給与が払われるよう訴える方法についてガイダンスをつくるなどしている。彼女たちが身近に感じた違和感から、どう等身大でアクションを起こせるのかを、映像や写真、わかりやすいテキストなどを用いて発信している。自由に様々な感性で社会を切り取っていく彼女たちの視点は、今後もチェックしていきたい。https://www.instagram.com/heartbrokenzine/
👭 Our Urban Diary
次の都市のヒントは、屋久島にある!? by Yukako
あるプロジェクトの関係で、初めて鹿児島県・屋久島に行ってきた。人口約1万3000人、面積約500㎢、周囲約130㎞の円形の島で、「1ヶ月に35日雨が降る」といわれるほど、年間を通して湿度の高い気候の場所だ。島をぐるっと囲んだ海岸沿いにはいくつもの小さな集落があり、島の中でも場所によって、天気が全然違ったりする。ここ屋久島に、様々なネイチャープログラムを提供する「moss ocean house」という宿がある。ここを営むオーナーに屋久島の山や自然について教えてもらうなかで、これからの都市のヒントが実は屋久島にあるのではないのかと思わされることがあった。というのも、屋久島のサイズ感と自然との関係性が、地球との暮らしを考えるちょうど良い縮図に思えたからだ。彼らは文字通り「自然を読んで」暮らしている。道路を作ったせいで流れが鈍くなっている川に人間が手を加えてメンテナンスすることで循環を取り戻したり、風が通りにくくなっている木々に少しだけ手を加えて海まで風が気持ちよく通るようにしたり。実際に手を加えてそれが現実に変化する、その循環を彼らは日々実感しているのだ。風をデザインするなんてこれまで考えもしてこなかった自分には新鮮な体験だった。例えば、丸の内で土地を読んで街をデザインしたらどうなるだろうか?風や水の流れなど、丸の内にも生態系は必ずある。土地の歴史や気候に合わせたデザインを考えると街の配置はどう変わるだろか。近々、どこかの街の理想的な風マップを有志で作って見たいと妄想している。
[おまけ]
📘 写真集「ウィルソンの屋久島―100年の記憶の旅路」
イギリスのプラントハンター、アーネスト・ヘンリー・ウィルソンによる屋久島の写真集では、貴重な屋久杉が伐採される前の、自然のままの島の様子が描かれている。
📗 屋久島の季刊誌「生命の島」
1986年-2009年まで発刊された屋久島の雑誌がなんとも味わい深く、読み入ってしまった。屋久島を訪れた世界中の人たちからのラブレターや、島の季節の植物や土産物の紹介、土木会社が想う新しい島でのライフスタイルの形...など、なんとも渋く、情熱を感じる内容ばかりだ。現在は島の喫茶店「樹林」で全号読むことができる。
伊根の舟屋 by Mariko
梅雨のなか、唯一の晴れの日を見つけて、京都府与謝郡伊根町にある舟屋を見に行った。京都市内から車で3時間ほど。日本三景である天橋立もほど近い、若狭湾に面した静かな入り江に、舟屋の町並みはある。道路を挟んで母屋と離れがセットとなった、昔ながらの街並みだ。海に面した建物の1階は、ボートがそのまま乗り込めるよう、大きく口を開けている。出漁の準備や、漁船や道具の手入れ、魚干物など食料品の物置として使われるのだそうだ。「海で取れた魚を食べ、その内臓や骨をこの1階部分の海に捨てると、今度はタコなどが取れます。フェンスを立てれば天然のプールとなり、子供がここで泳ぐ練習をしたり、小魚などを育てることもできます」と、この場所でカフェと宿を営むCAFE&BB guriのオーナー、當間一弘さんが教えてくれた。面白いなと思ったのは、この集落が重要伝統的建造物群保存地区として選定されたとき、周囲の里山も保存対象に含めるという決定がなされたことだ。周囲の自然環境も含めて、伊根の舟屋の美しさが生まれている。ここに、リゾートホテルなんかがばんと建ってしまったら台無しだろう。以前、石垣島と周辺の島々を巡った時に、リゾート開発に対し地元民が戦っているという話を聞いて、保存対象の範囲をどこまで設定するか、という問いの大切さを、ここ数日よく考えている。
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次回の配信もお楽しみに。
石川由佳子 / アーバン・プロジェクト・ディレクター(WEB/instagram)
杉田真理子 / 編集者・リサーチャー(WEB/instagram)