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佐藤仁志の小説

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僕が書いた小説をまとめました。頑張ってたくさん増えていくといいなー。
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#歳の差

『lifetime』(1-2・2)

 田崎が帰宅した頃、部屋の中は古い写真の中のように暗く、空気が停止したまま、遮光カーテンの隙間から朝日が入り込んでいた。  フローリングの床に置かれた小さな冷蔵庫の唸り声と、浴室の換気扇の音だけが田崎の耳によく届いた。  厚手のダウンジャケットを脱いで玄関脇のポールハンガーにぶら下げる。溶けた雪の雫が数滴、床に落ちて繋がった。  濡れた髪をタオルで拭くと、昨夜、出掛ける前に丁寧にセットしたセンターパートは見る影もなく消え去った。窓枠にハンガーで吊り下げたスウェットズボンに履