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睨み合うように顔を向かい合わせているロードマップは、朝露でしっかりと濡れていた。いや、夜露、というべきだろうか。 白い湯気がもうもうと立ち上る魔法瓶を右手に持ち替えて、左手首の腕時計に目をやる。間もなく午前四時になろうとしていた。 真夜中と変わらない暗闇の中で、千紘のヘッドライトがちらちらと忙しなく左右に揺れている。辺りには、千紘と同じように初日の出を山頂で拝もうとする数名がロードマップを見つめていた。 絵で描かれた登山道を指で追いながら確認する年配の夫婦。温かい