いろんな特性のある人にも読みやすい印刷物をつくっています:台湾編②
コロナウィルスの影響のなか、海をこえた海外の福祉団体ではどんなあたらしい取り組みをしているのでしょうか?ユニークな取り組みを教えてもらっています。
今回は台湾より日本ではまだ聞きなれないイージーリード(Easy Read)サービスの取り組みについて。「この文章読みたいんだけど、、、なんだか読みづらい。 読む気がしないなあ。」 ― なんてことがないよう、なるべく多くの人に分かりやすく情報を届けられるように、印刷物や掲示物を工夫するサービスです。台湾の選挙の時にも、つかわれたんですって。
お話いただくのは、台湾のSandwishes Studio(サンドウィッシーズ スタジオ)、代表のハン・リー(Hang Li )さんです。
写真:Kelly Sikkema on Unsplash
台湾のデザイン+アート+福祉をつなげる活動をしているSandwishes Studio。手がけている仕事の1つにイージーリード(easy read)サービスがあります。
イージーリードとは名前の通り、「読みやすい」文章をつくるために、通常の文章を工夫してみんなに届けるサービス。
イージーリードのおもなユーザーは、知的障害や自閉症の人です。学習障害や精神障害のある人、テキストを読むのが難しい人、外国の人など、このイージーリード本が、内容理解の手助けになってくれます。
さまざまな理由で通常の文章を読むのが困難なひとたちのために、イラストを多く使ったり。簡単な文章を使ったり、余白を多く取ったり。そうやって、誰にとっても「読みやすい」印刷物やウェブページなどを作ります。
今は情報社会。きちんとした情報にアクセスしてもらえないと、不公平な情報格差が生まれてしまうから、ひとりでも多くのひとたちに情報へのアクセシビリティ(利便性)を高めてもらうためのとりくみです。
たとえば、今年は国立のナショナルシアター&コンサートホール(国家両庁院/ National Theater &Concert Hall) 台湾国際芸術祭のパンフレットもイージーリード方式でてがけました。
中を開くと、ドラマ、ミュージック、ダンスの3種目が3色の色わけによりイラストでかかれています。
イージーリードで作成されたものは、文字が苦手な人はイラストを見るだけでどんなプログラムがあるのが理解できるし、逆にイラストが苦手な人は、明瞭に書かれたシンプルな文字説明を読むだけでも、十分理解できるような工夫がされています。
例えば、「演劇を見たいなー」という人は、演劇のカラーの赤を開くと、すぐにどんなプログラムがあり、チケット代はいくらで、どこで買えるのか一目でわかるため、自分の見たいプログラムを探しやすくなります。
これはイージーリード方式でデザインされた演劇のプログラムの紹介。ちなみにこの演劇は台湾の人がよく知っているラブソングがたくさん出てきて、観客と一緒に歌い、泣いて、笑いながら演奏するそうですよ。
多様な人が参加するイージーリードの意見交換会議ではアイデアが熱心に話し合われるそう
こういったイージーリードは専門家の人たちがいて、通常はその専門家の人たちと文字をイラストに描き下ろしてくれるイラストレーターの人たち、そしてソーシャルワーカーと一緒に仕事をします。イラストレーターの人がいることでスムーズに意見交換やアイデア交換ができます。
正確な情報を伝えるために、こうした展覧会のブックレットをデザインするときは実際の会場を訪れます。どこがイベントの入り口か、会場の建物を入念にチェック。
「イージーリードサービスは多くの人に伝わる視覚デザインに改善する課題以外にも、社会福祉の課題もあるんですよ。」とはLiさん。
「例えば、どうやって住んでいるコミュニティーのサービスをうけられることができるか、国から補助金をもらうことができるか。そういう情報を伝えるために必要としているひとたちのためにデザインをします。あなたには申請する権利がありますよということを伝えたり、申請時に必要なものを知らせるんです。」
こういった理由から国や自治体などともイージリードサービスを活用しています。
こちらは障害者証明(日本でいう障害者手帳)の手引き。
証明書をもらうためには、どこに何を持っていけばいいのか。
わかりやすく記載しています。
そして去年2020年の台湾の総裁選挙&立法選挙のための投票ガイドも作成しました。
無事に投票が終わるまでの流れも分かりやすく紹介。
そしてコロナ禍の今だからこそのとりくみも行われました。
今年(2021)も国民投票が行われて、現在作成中のイージーリードの投票ガイド。今度のマニュアルは、感染病予防のため、今後のマニュアルには「投票時の感染防止対策を忘れないでください」というセクションを追加している最中とのことです。
まだ公開前なので、ここでご紹介できないのが残念なのですが、今回のイラストの登場人物は全員マスクを着用。消毒液、手洗い、検温など、、、、会場に入ってからの感染防止のために必要な流れをイラストでまとめることで、来場者の人が投票会場にきたあと、どう振る舞ったらいいのかひと目で理解できるよう手助けをする予定です。
以上、今回は台湾からイージーリードサービスの紹介でした。
イージーリード 作成中!
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台湾編①
*この記事はオンラインでの「コロナ禍における障害のある人の仕事づくり情報交換会」イベントの番外編です。「同じ状況だった海外の団体にも話を聞いてみよう!」と今年の1月〜7月にかけて、たんぽぽの家事務局スタッフ数名がToheの皆さんと話したやりとりをまとめたものです。
(uga)
* 本事業は休眠預金を活用した事業です *
「コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり」は休眠預金等活用法に基づき、公益社団法人日本サードセクター経営者協会 [JACEVO]から助成を受けて実施しています。