無理していいこと・わるいこと
昔仕事で体を壊してひと月休ませてもらったことがある。
その時は朝から終電近くまで(&休日も使ってだったか)とにかくずっと働きっぱなしだった。今じゃブラックと言われてしまうかもしれないけど、その時は自分が初めてディレクションできる媒体というまたと無いチャンスで、とにかく全てを出し切りたいという思いでいっぱいだった。しかし制作条件が少々厳しかった。簡単にいうと通常の仕事よりも作業内容が多かった。結果労働時間がかさんでしまったのだった。
時間もない製作費も少ないという中で、その条件に見合った働き方もできたはずだけど、その時はだいぶ仕事に飢えていて、それまでずっとアシスタントから誰かに付いてヘルプをするような仕事ばかりだったので「やっと自分がやりたいように仕事ができる」という喜びと、いいものを作りたいと思っている相手側の思いに応えたいという気持ちが原動力となり、ただその一心でがむしゃらにやっていた。その限度を超えたところで体を壊した。
頑張り方には2種類あると思う。「自分の喜びのために頑張る」と「やりたいことではないけどやるべきことのために頑張る」。
この2つは大きく違う。前者は言葉の通り「自分のため」。後者は「人のため」。しかもこの「人のため」も、自分がその人のために「やってあげたいこと」なのであれば「自分のため」となる。気をつけるべきポイントは「自分が望んでないことなのに頑張っている」ということ。
実はこの倒れた時期は、自分のやりたいことに燃えてたことの影で、ひどく我慢をしてたことがあった。それでも自分がやりたいことのために無理をして2~3倍と頑張った。でもある日わたしの体は痙攣を起こして手が震え、翌日高熱を出した。入院手前の状況だった。すぐにわかった。ものすごいストレスを抱えていたことと、日頃からものすごい無理がたたっていたことが。
自分が動かないと回らないと思ってた仕事は、会社の皆さんのおかげで滞りなく回っていった。「自分はいなくてもなんとかなってるじゃないか…」とぼんやり天井をみていたのを覚えている。何が良くて何がいけなかったのか。そのとき明確な答えは出せなかった。でも今ならわかる。同じ無理をするでも大きな違いがそこにある。
この時の出来事で教訓となったこと、それは
無理してでも頑張った方がいいことは、「自分がやりたいこと、自分が好きなこと、自分が成し遂げたいと思ったこと」。
無理しては行けないことは「〜すべきに縛られる、やりたくもないのに断れないという理由で行動すること」。
まず頑張ってよかったこと。
実はこの体を壊した時に、目一杯自分を出し切った仕事のおかげで、今現在までにたくさんのお仕事をいただくことができた。この時の雑誌を見てくださった人がご縁になって広がったものだった。今までのデザイナー人生であの時連絡をいただけたことが一番嬉しい経験だった。自分の作ったものが好きでわざわざ連絡をしてくれる人がいること、そしてそれがきっかけになって今につながっていること。自分の限界を超えていいものを作りたいと楽しんだこと、自分の全部を出し切ったことが、こんなに素晴らしい結果をくれた。
そしてもう一つの教訓。この時やりたくもないのに自分を押し殺して無理したことからは何もいい結果は生まれなかった。自分の心と体を蝕ばんで傷ついただけだった。そしてその時の縁は残念ながらあまりいいものではなく、そのうち自然に途切れた。
この投稿を見る人がどれくらいいるかわからないけど、どうかできるだけ「自己犠牲」陥らない人が増えてほしい。自分のやりたいことのための無理はいいけれど、やりたくないことのために無理をすると体も心もおかしくなってしまう。それは体がくれる正しいサイン。もし心が重たくて動けなくなったら、それは自分がやりたいことのためにやっているのか、何かに縛られてやっているのか、そこを冷静に見極めて自分を苦しめないようにしてほしい。
おわり
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