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なぜ美味いと感じるのか? #美食学のすゝめ
「美食学のすゝめ」の第4回は、どうして美味しいって感じるのかについて書く。
「美味い」と感じるのは、人間にとって必要だからに他ならない。
もし、体に必要なものを不味いと感じていたら、そんな生物は生き長えるなんて出来ないだろう。
「食べる」とは、生きるために必要な栄養を体に取り込む為の行為。
だから、美味いって感じないと取り込もうとしなくなってしまう。
美味しさを感じる要素の1つに「旨味」がある。
日本人にはかなり馴染みの深い美味しさだ。
「旨味」という味はかなり最近発見されたもので、1908年に池田菊苗博士が昆布だしの味の研究からグルタミン酸を抽出して、その存在が明らかにされた。
さらには鰹節からイノシン酸、干し椎茸からはグアニル酸が発見されて、出汁の旨味というのが科学的にも解明されていった。
グルタミン酸はアミノ酸の一種。イノシン酸は主に肉に含まれる。どちらもタンパク質を取り込むために必要な美味しさだ。
人類は火を使えるようになる前は、他の肉食動物が食べ残した腐肉を漁っていたそうだ。
腐肉を食べる以外は木の実や果物、草、根茎といった植物を食べていたと考えられている。
こういった植物を食べるのは非常に効率が悪くて、かなり大変だった。
木の実や果物は猿や鳥や虫たちという、かなりの強敵たちと競争しないとダメだったし、根茎を得るには頑張って穴を掘らないといけないし、そうやって得た根茎や草は物凄い長い時間をかけて咀嚼しないとダメで、栄養も少ない。さらには不味かった(笑)。
だから、動物の肉はとても貴重なご馳走だった。
タンパク質、脂質、炭水化物も豊富に摂れて、ビタミンやミネラルといった他の栄養価も高い。
勘違いしている人が多いけど、実は野菜よりもお肉の方が栄養はたっぷりあるし、含まれている種類も豊富。
火を使えるようになれば肉はさらに美味しく食べれた。(メイラード反応と呼ばれる加熱時に起きる糖とアミノ酸の反応によって旨味や香りが増鮨効果があったりするので、美味しくなる。)
さらには殺菌もできて、死のリスクが減った。
肉を食べてこなかったら、人類はとっくの昔に絶滅していただろう。
もし初めて肉を食べた人間がいたのなら、「なにこれめっちゃ美味い!!」って思ったはずだ。
それで「おい!お前もこれ食ってみろ!」ってなって、みんなが「うめーーー!!」ってなった。
その美味しいと感じる体験が無ければ肉を食べようとは思わなかったはずだ。
なぜなら肉を食うにはそれなりのリスクがあった。
腐肉を含めて、獲物を狙っているのは人間よりも遥かに強いライオンみたいな肉食獣。
同じ獲物を狙えば鉢合わせる危険も高い。
さらには石器なんかも無い時代だと、馬みたいな草食獣を走って追いかけ回して、バテさせて狩りをしていたと考えられている。
人間の身体は真夏でも長距離をそれなりのスピードで走り続けられる、非常に優れた構造になっている。
馬は熱中でぶっ倒れても、人間はぶっ倒れないのだ。
ぶっ倒れないといっても非常に大変な仕事である事には違いない。
もし不味かったらそんなことをしてまで追い求めはしなかっただろう。
グアニル酸は干し椎茸に含まれる旨味成分だけど、干し椎茸は生椎茸よりも栄養価が高いことで知られている。
干した方が美味く感じられるのは、生で食べるよりもより多くの栄養を摂取するように仕向けられているかのようにも思える。
ここまでは旨味について。
もう一つ甘味についても少し触れておきたい。
甘味も美味しいと感じる味の代表格だろう。
人によっては中毒的に好きになってしまって、毎日過剰摂取していたりする。
今の時代ならコンビニ行ったり、ウーバーイーツ頼んだりですぐに簡単に食料は手に入る。
甘いものが手に入らないなんてことはないだろう。
でも、昔々はそうではなかった。
甘くて美味しい果物は、木登りが苦手な人間が猿や鳥に勝てるわけがなくて、そう簡単に手に入るものではなかった。
だけど、糖は非常に短絡的にエネルギーに変えられる栄養なので人間はそれを渇望し追い求めているわけだ。(人間以外の生物も同じく)
現代では何の労もせずに必要以上の糖を手に入れられるけど、そうなったのは人類の歴史で見ればほんのつい最近の出来事。長い期間、糖を渇望してきた私たちの身体は今でも糖への貪欲な欲望は枯れることがない。
だから、甘いものは美味しく感じてしまうのだ。
他にも夏にめちゃくちゃ汗をかいて、ミネラルが体から抜け出ていると、ミネラルをたくさん含んだものが普段よりも美味しく感じられたりするなど、人間が必要とするものを美味しく感じるシステムがある。
人はなぜ美味いと感じるのか?
それは究極は生きるために必要だから、そう感じるのだと言って間違いないだろう。
だから「空腹は最高の調味料」なのだ。
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