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プロジェクトを成功に導く8つのポイント(3):阻害要因を取り除く

RPA導入のプロジェクトでは、人や組織の「抵抗」が伴う場合も少なくありません。声を大にして反対する人もいますが、多くは水面下で無言の抵抗をします。このような無言の抵抗は決して無視できず、プロジェクトが途中で立ち消えになったり、骨抜きにされたりする可能性があります。ここではプロジェクトを推進する上での「阻害要因」について、その問題点と対応について説明します。

なぜ人は抵抗するのか

なぜRPA導入に抵抗する人たちがいるのでしょうか。これは、もともと人は変化が好きではないからです。慣れ親しんだこれまでの環境に対して、よく見えない新しい環境へ移ることには、誰しも「漠然とした不安感」を持ちます。RPA導入といっても「これはリストラにつながるのではないか、自分はクビになるのではないか」と不安に思う人もいるかもしれません。また年配者やシステムが苦手な人にとっては、「新しいテクノロジーについていけないのではないか」と不安になることもあります。

このような漠然とした不安を抱える人は、必ずしも積極的な反対活動をするわけではありませんが、協力を拒んだり、効率化できない理由を一生懸命説明したりします。つまり「後ろ向き」ということです。このような不安感をいかに軽減し、安心感、期待感へ転換できるかがポイントとなります。     

抵抗を引き起こす要因

抵抗する要因は企業や人によってさまざまです。たとえば、ある企業では取り組みの説明が不十分で、何をやりたいのか、何を目指しているのかが誰にも理解されず、プロジェクトを始める前から紛糾してしまったことがあります。これはコミュニケーションの失敗でした。

また別の企業では、数年前にシステム導入で大失敗をしたため、新しいシステムの導入に最初からアレルギーを持っていました。このような状況では、いくらコミュニケーションを行っても最初から聞く耳を持たないため、取り組みの説明はまったく聞き入れられませんでした。このケースでは取り組みを説明する前に、まず過去の失敗プロジェクトを総括し、いったんアレルギーを取り除く作業が必要でした。つまりプロジェクトの阻害要因をきちっと特定し、それに合わせた対応をしなければ意味がないということです。

RPA導入に抵抗を示す理由には、他にも次のようなものがあります。

阻害要因への対応

小さな会社が小さく始めるRPA導入には阻害要因など最初からないかもしれません。逆に大手企業が大規模なRPA導入を始める場合は、それなりの対応策が必要と思われます。関係者が多くなればなるほどコミュニケーションが行き届かなくなり、人と人との軋轢も生まれやすいからです。

また阻害要因の有無は企業のカルチャーにもよるため、人や組織の抵抗に心配がなければ特に対応も不要ですが、心配が少しでもある場合は一度調べてみたほうがよいでしょう。

阻害要因への対応は次の2つのステップで行います。

①阻害要因の特定

まず何が阻害要因かを特定する必要があります。上記にRPA導入に抵抗を示す要因をいくつか例示しましたが、これはあくまで一般論であって、企業固有の阻害要因は調べてみなければわかりません。先ほどの例のように、過去の失敗がアレルギーになっているような個別の要因は、一般論からは出てこないからです。

阻害要因を特定するためは、ステークホルダーに対してヒアリングをする方法が早いでしょう。この場合のステークホルダーとは、プロジェクトの推進に影響を及ぼす人たちを指し、次のように大きく3者に分かれます。

プロジェクトメンバーに後ろ向きの人がいるとプロジェクトは進みません。自分への不利益の心配や、ITへの苦手意識などはプロジェクトメンバーの典型的な不安要素です。

プロジェクト関係者とは、プロジェクトメンバーへ協力する周りの人たちを指します。この人たちは全面的に協力してくれる必要がありますが、プロジェクト関係者も本業で忙しかったり、そもそも無関心であったりすると、プロジェクトが遅々として進まない可能性があります。

トップマネジメントとは、企業のトップと各部門のリーダークラスです。プロジェクト関係者の上司にあたるわけですが、リーダーが取り組みに後ろ向きであると、その部下たちは協力しづらくなります。部門には部門の優先事項があるため、リーダーによっては取り組みを軽視する人もいるかもしれません。

またリーダークラスになると積極的に反対活動をしたり、ネガティブな言動をとったりする人もいます。その理由もさまざまで、リーダー間の利害関係が背景にあったり、性格的に大きな声を出したがる人であったり、あるいは存在感や影響力を誇示したいだけの人もいます。

いずれにしても3つのステークホルダーを対象にヒアリングを実施します。具体的には、ヒアリングすべき対象者をリストアップし、事務局が中心となってヒアリングを行い、各自の持っている不安要素、課題感、積極性について調査します。

ただし本心はなかなか言わないかもしれません。本当は消極的であっても、後ろ向きとのレッテルを貼られることを恐れ、言葉では積極的と言うかもしれません。その場合は、「周りの人はどう感じているか」を聞いてみます。自分のことは言いづらくても、他人のことは言いやすいからです。そうすると、たとえば「年配の方はパソコン操作を心配している」とか、「〇〇部長はRPAにネガティブだ」といった本音が聞ける可能性が高いでしょう。もちろんヒアリングの匿名性は約束しておかなければなりません。

②対応策の検討

阻害要因が明らかになれば対応策はおのずと見えてくるはずです。たとえばパソコンへの苦手意識が壁になっていることがわかれば、事前にパソコンのトレーニングを実施したり、ITヘルプデスクなどのサポート機能を用意したりする必要があるでしょう。またリストラへの警戒心がネックになっている場合には、効率化した後のリソース余剰をどのように扱うつもりなのかの考え方について、ていねいに説明すべきです。

重要なことは阻害要因を特定した上で、ファクトにもとづいた対応策を講じることです。やみくもに考えられる対応策を打っても非効率でしょうし、本当に必要な対応策が抜け落ちる可能性があります。「へたな鉄砲も数撃ちゃあたる」とならないように気をつけましょう。

少し難しいのが声の大きいリーダークラスへの対応です。特に大企業では、何をするにしても最初からけんか腰になる人が時々います。そしてプロジェクトを頓挫させるに十分な発言力や影響力を持っています。このような場合、プロジェクト推進へ特に影響力のある人を「キーマン」と位置づけ、特別な「コミュニケーションプラン」を用意して対応にあたることが解決策の1つとなります。

プロジェクトに批判的なキーマンは、うまく味方につけると逆に強力な推進者になってくれることが多いです。批判的だからといって無視したり、会話を避けたりすると、ますます反対姿勢を強めます。対応策はむしろ逆で、コミュニケーションを密にとることです。

声の大きいリーダーは言いたいことがあるので、その言いたいことを積極的に聞きに行きます。キーマンにサプライズがないように、何かアナウンスする場合には必ず事前に説明をしておきます。定例ミーティングにあえて出席してもらってもよいでしょう。密にコミュニケーションをとり続ければ、そのうち理解してもらえるはずです。

本来、コミュニケーションプランとはキーマンだけではなく、すべてのステークホルダーに対して用意すべきものです。プロジェクトをうまく推進していくためにはコミュニケーションのやり方が非常に重要だからです。ここではキーマンだけを対象に取り上げましたが、もし余裕があれば、すべてのステークホルダーを対象に検討してみるとよいでしょう。


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