『デザインのまなざし』のこぼれ話 vol.9
マガジンハウスが運営している、福祉をたずねるクリエイティブマガジン「こここ」で、グッドデザイン賞の連載『デザインのまなざし』の最新エピソードが公開されました。
第9回に登場していただいたのは、 2022年度グッドデザイン賞を受賞した「だいかい文庫」(兵庫県豊岡市)を運営する一般社団法人ケアと暮らしの編集社の代表理事、守本陽一さんです。
守本さんが館長を務めるだいかい文庫は、まちと人、まちとケアなど、さまざまな関係性を紡ぐ「シェア型図書館」。本を媒介として気兼ねなく入ることのできる空気を作り、まちの人たちの居場所となりながら、医療福祉の専門家に困りごとを相談できる窓口にもなっている場所です。
そして、その中心にあるのが「一箱本棚オーナー」の仕組み。一口2400円から、毎月定額を図書館に出資してくれる人が、本棚の所有者となって自分のおすすめする本を置き、希望する方は交互に店番もできるシステムです。現在、一箱本棚オーナーさんは90組ほどで、2020年12月のオープンから2年半で2500冊くらい、オーナーさんたちの本が貸し出されています。
医師であり、現在は保健所と診療所に勤務されている守本さんは、「病院の中だけでは解決できない」地域の課題に取り組むために、この図書館を立ち上げました。
このnoteでは、本編には文字数の関係で載せきれなかった、守本さんがデザインの重要性を感じたきっかけのお話を、こぼれ話としてお伝えします。
ー守本さんの著書やnoteの記事を拝見していると、「デザイン」という言葉がすごくよく出てくるのですが、昔から興味を持っていたのですか?
守本:子どものころから新しいものを作るのは好きでした。例えば小学校の児童会の取り組みで、「みんなで読書日本一になろう」という目標を立てたときは、すごろくみたいなマップを作ったりして。読んだページ数ごとに各地を回っていって、最終的には全国制覇できる……みたいなしくみを考えて、遊んでいましたね。
ー工夫しながらいろんな人を巻き込むことが、すでに当時から好きだったんですね。
守本:それはあったと思います。大学生のときはワークショップがめちゃくちゃ好きで、心肺蘇生を学ぶイベントを開催したりしていました。そういう医学系のワークショップでは、どうやったら多くの人に参加してもらって、一定の達成基準を満たして学んで帰ってもらえるかが大事です。ですから、インストラクショナルデザインの視点を取り入れてプログラムを構成していました。
ーなぜデザインが大事だと思ったのでしょうか?
守本:もともと、僕自身がそこまでコミュニケーションが得意なタイプではないんです。知らない人同士が集まる交流会みたいなところで、ガンガンいけるタイプではなくて。だから、向こうから関わろうとしてくれる人がいると嬉しいですし、そもそも関わりやすいように配慮されているイベントに参加したときは、本当にいいしくみだなと思いました。それが自分の原体験かもしれません。
あとは学生時代、地域で医療教室を開催したときに、全然人が来てくれなかったという経験もあって。だからこそ、関心を持ってもらうための、入口のところからちゃんとデザインしないといけない、とあらためて強く思ったんです。