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今週のグッドデザインを紹介します(10/26 〜11/1)

本日から、2024年度グッドデザイン賞受賞全件を展示する、「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」を開催しています。
今日は、10月5週、11月1週(10/26〜11/1)に紹介した2024年度グッドデザイン金賞7点をまとめてご覧ください!



10/26 障害者シェアハウス+シェア店舗[はちくりはうす]

障害のある人たちが施設の中に閉じた形で生活するのではなく、建物1階のカフェを中心に地域の人々と混じり合って自然に暮らせる場を実現している。社会とは本来こうあるべきではないかという一つの姿を見事に提示している。

はちくりはうす

受賞者によるデザイン紹介
障害者と介助をする人達にとって、このシェアハウスは建物内で関係が閉じた従来の施設ではなく、同様に障害のある人々や地域の人々も関わる場であり、ひらかれた環境の中で社会生活を営む事ができる場所である。障害者自立支援の為の居宅介護事業所とショートステイルームを併設し、1階玄関横には日替わりのシェア店舗が表通りに面している。

審査委員からのコメント
障害者の方達が施設の中で生活するのではなく、地域の人々と混じり合って自然に暮らせる場が実現されているのが素晴らしい。障害者と母親やヘルパーの方達が一緒に暮らせるせるだけでなく、1階のカフェに地域の人々が色んな形で関われる仕組みができている。ここを中心に地域の人々の輪が広がっていくような魅力的な場になっている。社会とは本来こうあるべきという姿が、障害者の娘さんを持つ一人の母親の力で見事に提示されている点を高く評価した。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/24820

10/27 集合住宅[天神町place]

居室を囲む中庭の存在が、居住者にとって、緩やかでありながら強烈な関係性を生み出している。この関係性の距離感が極めて現代的であり、それが建築デザインによってもたらされていることが秀逸である。高層集合住宅に新しい可能性を生み出した建築として高く評価された。

天神町place

受賞者によるデザイン紹介
高層ビルに囲まれた旗竿地における賃貸集合住宅の計画。ゆがんだU字型のボリュームによって各住戸は、周囲のビルの隙間と、中庭の両方から光と風、視線の抜けを得ている。中庭では、将来的に様々なコンテンツを想定しつつも、一人でも居たくなる居場所づくりを第一に目指し、都心の賃貸住宅における住民の適度な関係と距離感を作りだした。

審査委員からのコメント
高層集合住宅にまだこのような新しい形式があったのか、と気付かされる建築である。共用部は極端に少なく、各室は数珠繋ぎとなってU字型を構成しており、中庭を囲んでいる。刻々とうつろう光と影、人々の暮らしが適度な距離感で垣間見える中庭の風景は、見ていて時を忘れるような体験である。光、風、視線が交錯する中庭の環境そのものを共有することで、緩やかでありながら強烈な関係性が構築されている。この関係性の距離感が極めて現代的であり、それが建築デザインによってもたらされていることが秀逸である。また、中庭に複雑な影を生み出す外観は、林地残材を活用した型枠によって生み出されており、設計者が型枠化までの試行錯誤を行って実現に結びつけた点についても高く評価したい。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/27550

10/28 多世代共生の複合型福祉施設[深川えんみち]

街から建物内に一本の道を通すことで、施設に所在する高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばの利用者や地域の人々の顔が見える場所を生み出した。これからの福祉施設のあり方に大きな影響を与えるプロジェクト。

深川えんみち

受賞者によるデザイン紹介
高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばの3つの事業からなる、旧斎場を改修した複合型福祉施設。江東区深川の賑やかな街から建物内に道を引き込み、その道をきっかけに高齢者と小学生、未就園児と親御さん、地域の人々が集い交流することで、様々な縁を紡ぎ、豊かな地域社会をつくる核となることを目指した、街とつながる福祉施設。

審査委員からのコメント
包括的地域社会に対する挑戦的な解答である。まずリノベーションとして、街に対して閉じられていた壁面が開かれ、新たな顔が生まれている。そこがデイサービスになっているのだから驚きである。施設らしさは全く感じられない。建物の中に道を通し、人々の顔が見える場所を生み出した。この形をさまざまな人たちが合意していったことにプロジェクトの感動がある。道を通し、街角をつくるには、私設図書館を街側に配置し、利用者さんの見守りをするのだという。設計者は、街の人たちにとって多世代の場が、自分たちの暮らしの豊かな風景をつくることに合意しているように、ビジョンを形にした。この役割は、これからの福祉施設に対する影響として計り知れないほど大きいはずだ。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/25586

10/29 CACP ''Designing?''

中国・四川省成都市で、地元自治体の許可と支援を得て、少額投資でシンプルな設計方法を採用し、より良い住まいづくりを実現。ボトムアップかつコミュニティ参加型の社会的実践として、大きな効果を持つモデルケースになり得る。

CACP ''Designing?''

受賞者によるデザイン紹介
CACP "Designing? "は、都市のインフォーマル・スペースを再構築するCACPプロジェクトの空間的実践であり、放置された自転車小屋をダイナミックな公共スペースへと変貌させる。軽量のスチール製ユニットがジグザグに回転し、境界を融合させる。建築や家具には、地元で入手可能な材料やリサイクル品が使用されている。全工程において、地域住民の参加を得ている。

審査委員からのコメント
地方から大量の人口が流れ込む大都市の老朽化した住宅団地向けに設計されたプロジェクト。プロジェクトチームが第三者として積極的に介入し、地域住民やコミュニティ組織と連携しながら、地元の自治体の許可と支援を得て、少額投資でシンプルな設計方法を採用し、地域の放置自転車置き場を住民のための公共スペースに生まれ変わらせた。地域環境の整備や生活の質の向上、より良い住まいづくりを共に行うという、ボトムアップかつコミュニティ参加型の社会的実践としての実現可能性と重要性が十分に表れており、大きな社会的効果を持つモデルケースとなり得ることが明らかである。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/24555

1030 再生処理プロダクトブランド[SALWAY]

鮮やかな青の矩形とボールド書体によるロゴタイプの要素を輸送箱から製品解説動画に至るまで一貫して展開することで、再生処理に関連する商品の信頼性や合理性を的確に伝えている。

SALWAY

受賞者によるデザイン紹介
医療機関の再生処理で使用される製品をセレクトしたプロセスブランド。「再生処理」は医療器材を洗浄・滅菌し再び使用可能にする業務であり、医療の安全を支える極めて重要な業務である。先進する欧州よりも20年遅れている日本の再生処理を「再生」させるために、知識レベルや問題意識を高め、厳格な欧州基準へ導くことを目的としている。

審査委員からのコメント
医療器材を洗浄・滅菌し再び使用可能にする「再生処理」で使用する製品セレクトのブランディング。意識や浸透の点で海外に遅れを取っている日本の「再生処理」を更新し先行する欧州基準へ導くことを目的としている。鮮やかな青の矩形とボールド書体によるロゴタイプの要素を輸送箱から製品解説動画に至るまで一貫した展開を行うことで再生処理に関連する商品の信頼性や合理性を的確に伝えている。ブランドサイトに掲載される滅菌技師などの関係者インタビュー記事も非常に丁寧に取材されている。ここからもオウンドメディアを通じた現場の活性化により「再生処理」業界の底上げを目指す熱意が伝わってくる。医療現場の裏側は私たち一般患者からは見えにくい。そういった現場に光をあて、その価値をデザインで向上することに挑む傑出した取り組みである。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/22186

10/31 雑誌[プラグマガジン]

20年にわたり発刊し続けている、岡山の地域情報を発信するファッション・カルチャー誌。自らの雑誌や主催するイベントを通じて、普段交わる機会が無い地元に存在するコミュニティや人々を有機的に繋げ、さまざまな動きを生み出している。

プラグマガジン

受賞者によるデザイン紹介
2004年創刊、20周年を迎えた岡山県発のリージョナル・マガジン。地域のいまをアーカイヴしながら、地方創生の新たなアプローチをミッションに掲げ、ローカルにオルタナティブを提案。ファションやカルチャーを軸に、地元政財界からアンダーグラウンドまでを一冊の中で融和させた独自編集と関連イベントによって新たな地域デザインを実践。

審査委員からのコメント
近年リアルメディアとしての雑誌、とりわけ地域情報を提供するタウン誌は苦境に立たされている。その中で、20年にもわたり発刊し続けている本誌は、それだけでも賞賛に値する。また所謂タウン誌やミニコミなどとは一線を画し、ファッション・カルチャー誌として高いクオリティとクリエイティブを実装している点において、目を見張るものがある。世代やジェンダーなどの”つながり”をテーマにした媒体は数多くあれど、直接的ではなくファッションやカルチャーを媒介にすることで、押しつけがましさをなくし、実質的にそれぞれのクラスターが有機的につながっていく様を見るにつれ、今後の地域課題解決に向けたヒントを与えてくれている。雑誌というレガシーメディアに端を発するものではあるが、改めてその可能性を感じさせてくれた。本誌及びその活動全体を通してまさに「カッコいい」と言いたい。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/27473

11/1 流域地図[YAMAP流域地図]

水の流れを示す流域を視覚化し、山を含めた自然資本の価値を分かりやすく伝える地図。ハザードマップの視覚化など、災害対策として活用できる。

YAMAP流域地図

受賞者によるデザイン紹介
「YAMAP流域地図」とは、私たちが暮らす場所を行政区分ではなく、水の流れを基礎とした“流域”で表現した地図です。山・川・街・海を含めた大地の広がりである流域を、地図上で視覚化し、山を含めた自然資本の価値を分かりやすく伝えることに役立ちます。また、流域全体で治水対策を行うなど防災減災での活用も想定した地図になります。

審査委員からのコメント
まだデータがビジュアル化されていない水域の情報が、一般の人々にとってアクセスしやすく、分かりやすく閲覧できる点に好感を持った。また、ハザードマップの視覚化など、災害対策としても活用できること、さらにUIのグラフィックが洗練されている点も評価が高かった。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/21058

2024年度グッドデザイン賞受賞展は本日から

本日から11/5まで、今年のグッドデザイン賞1,579点をすべて展示するGOOD DESIGN EXHIBITION 2024を東京ミッドタウンで開催しています。本日ご紹介した受賞作も、実際にご覧いただけます。
会場では、来場者が金賞受賞作からお気に入りの1点に投票し、「みんなの選んだグッドデザイン」を決めるイベントを開催。お近くにお立ち寄りの際はぜひお越しください!

GOOD DESIGN EXHIBITION 2024
会期:11月1日(金)-11月5日(火)
11:00~19:00 (11月5日は18:00閉場)
会場:東京ミッドタウン各所
入場無料


この連載では、グッドデザイン賞インスタグラムで毎日1点ずつアップしている受賞作品をまとめています。
インスタグラムもあわせてご覧ください!
https://www.instagram.com/good_design_award/

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