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どうして“あの人”は仕事しないの?——職員格差が生まれる理由と解消策

当社には、職員さんの個別面談のご依頼をいただくことがよくあります。そんな中で、よく耳にする不満のひとつが、「できる職員とそうでない職員の差が激しすぎて、できる職員ばかりが忙しくなる一方、できない(というより、やらない)職員は何もしなくなる」というものなんです。

でも、よく話を聞いてみると、「本当に仕事ができない」というよりは、「やるかやらないか、あるいはやりたい仕事かやりたくない仕事か」という違いが大きいように感じます。実際、やりたくない仕事をしなくても済むような職場なんて、本来はなかなか考えにくいものですよね。ところが、介護業界では、それがまかり通ってしまっているケースが少なくないようです。

そうなると、真面目に頑張る職員さんほど不満がたまり、バーンアウトしてしまったり、最悪の場合は退職してしまったりするんです。現場にとって、これは本当に深刻な問題です。正直、仕事ができるのにやらない職員さんには退職してもらいたいところですが、慢性的な人材不足の中では、それもなかなか難しい。仕方なく、なだめながら働いてもらっているのが実情なんですよね。

ただ、こうした状況を放置すると、遅かれ早かれ組織は破綻に向かってしまいます。だからこそ、早急な対策が必要なんです。一番手っ取り早いのは、仕事の成果や取り組み姿勢をしっかりと評価に反映させること。最近では「メンタルヘルス」と並んで「キャリアアップ」という言葉もよく聞かれるようになりましたが、成長の道筋を明確にし、本人が成長したいのかどうかを定期的に確認していくのが大切だと思います。

そこで、わかりやすい例えとして「高速道路の車線」を使って考えてみましょう。目的地に速く到達できる順に、追い越し車線・走行車線・登坂車線と3つありますよね(法定速度はここでは無視してください。キャリア形成に法定速度なんてありませんからね(笑))。もちろん、自分の限界を超えて無理に飛ばすと、ハンドル操作を誤ったりオーバーヒートしたりするリスクがあるので注意は必要です。

  • 追い越し車線を快調に走るのは、人より早く仕事を覚えて、より上位の仕事を積極的にやっていこうとする職員さん。

  • 走行車線をマイペースで走るのは、与えられた仕事をきっちりこなすことを良しとする職員さん。

  • 登坂車線をゆっくり走るのは、「私は遅いから、どうぞお先に」という感じで、のんびり進む職員さん。

大まかにいえば、組織の中では追い越し車線が2割、走行車線が6割、登坂車線が2割というイメージでしょうか。そして、それぞれのペースで目的地に着いたら、また次の目的地に向かって走り続けていくわけです。
当然、いくつも目的地をクリアしていく職員さんは、その頑張りを高く評価されるべきです。でも、実際には、そこが十分に評価されていないケースも多いようですね。

もし組織が3つの車線を用意せずに、1つの車線しかなかったらどうなるでしょう? 一番遅いペースに合わせざるを得なくなり、全体が渋滞してしまいます。渋滞するとイライラしますよね。そのイライラが悪いストレスとなって、組織全体に広がってしまうんです。
また、走行車線を走っている職員さんは、自分がどの車線にいるかを意識していないことが多いので、時々は本人と評価者の両方の目で「自分はどの車線を走っているのか」を確認し合うことが必要だと思います。

走行車線を標準と考えるなら、「もっと意欲があるなら追い越し車線も走れますよ」という選択肢を提示したり、1年以上登坂車線を走っている人がいれば、「ずっとそのままでいいの?」と本人に問いかける必要もあるでしょう。場合によっては、処遇を変えることだって検討しなければいけないこともあります。

キャリアの作り方は十人十色で、家事や育児との両立なども含め、それぞれにさまざまな事情があります。ですから、どの車線が良いとか悪いとか、単純に決められるものではありません。ただ、職員さん一人ひとりが「今、自分はどの車線を走っているんだろう?」と自覚すること、そして組織として3つの車線を用意しておくことが、いわゆる“大きな職員格差”を生まないための対策になるんじゃないかと思います。

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