ベテラン介護職が気をつけるべきキャリアの落とし穴：キャリア・ドリフト
皆さんは『キャリア・ドリフト』という言葉をご存知でしょうか？私は『キャリアデザイン入門』（大久保幸夫著）を読んで初めて知りました。
実はこのキャリア・ドリフトは、介護職でよく見られる危険な現象であり、今回は注意喚起の意味を込めて紹介します。ぜひ自身のキャリアを振り返りながらお読みください。
キャリアには「筏下り」と「山登り」という2つの段階があるとされています。まず「筏下り」は初期キャリアのイメージで、初めての仕事に一生懸命取り組む時期です。この段階では、川の下流にゴールがあるわけではなく、そのプロセス自体に価値があります。自分がどこに向かっているのか分からなくても問題ありません。目の前の急流（仕事）に向き合い、全力で取り組む中で、問題を一つずつ解決していく。その過程で仕事のスキルや対応力が身についていきます。この時期は、明確なゴールがなくても構わないのです。
しかし、ここで大切なのは、「筏下り」が適しているのは初期の段階に限られるということです。10年も経てば急流は緩やかになり、全力を出さなくても日々の仕事がこなせるようになります。この状態で「筏下り」を続けると、ついには川から海へ流れ出て、どこにいるのか分からなくなる。このような状態を「キャリア・ドリフト（キャリアの漂流）」と呼びます。介護の仕事を10年以上続けているベテランのスタッフは、キャリア漂流していないでしょうか？
「筏下り」をしている間は周りの景色を楽しむ余裕はありませんが、海に出てしまうと漂流するしかなくなってしまいます。そのため、ある程度の経験を積んだ後は、一度立ち止まって自分を振り返ることが重要です。自分にできること、したいこと、価値を感じることを改めて問い直すことが大切です。そして次の段階、つまり「山登り」に進む準備をするのです。川の下流に到達したら筏から降り、次に登る山を見つけましょう。
介護という仕事の「筏下り」を終えた後、どのような「山登り」を始めるか、それぞれの立場で一度じっくり考えてみることをお勧めします。