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【EP4】彼(発達障害者)の特徴

発達弟と接していて、僕がカサンドラ症候群になった理由を端的に言い表すのは、実はとても難しい。なぜならその理由の一つひとつはとりとめもないことだからだ。

たとえば「約束を守らない」「すぐ忘れる」「だらしない」「管理ができない」──

人間であれば、誰しもこうした側面はあるだろうし、ミスをすることだってあるだろう。しかし発達の場合、これが病的に顕著なのである。

もちろん「発達障害」と一言で言っても、その症状は多種多様であり個人差がある。程度の差もあるし、特性の差もあるだろう。そのため「発達障害とはこういうものだ」と断定的な表現ができないのが、社会的理解や医師の診断を難しくしている一つの理由かと思う。

ちなみに僕は、彼はADHD(注意欠如多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム、いわゆるアスペルガー症候群)の複合と、鬱などの二次障害を合併していると見ている。医師の診断をもらうにはある程度の観察が必要であり、時間がかかるという。僕はかなり早い段階から彼の発達障害を疑っており、それに関するネット情報や書籍などにもずいぶんと目を通してきた。

もちろん専門家でない以上、安易な判断はできない。医師に正しく診断してもらえるよう、発達障害を疑い始めたころから彼の行動や言動をデータ化してきた。さらに正確なデータを作るため、最終的にはデータだけでなく彼の主観としての自覚症状やささいな癖、気になる点などもヒヤリングして折り込み、資料としての高精度化を試みた。結果としてそのデータから分かるのが、上記諸々の症状である。

現在彼は、取り急ぎ二次障害の症状を緩和するための漢方を処方してもらっているようだ。とりあえずそれなりの症状は認められたということだろう。

さて、こうした障害を持つ人間が周囲にどういう影響を与えるか。

たとえば社内で完結するような忘れ物やだらしなさであれば、周囲が寛容であったりサポートしてあげたり(実際にはこれもかなり難しいのだが)すればとりあえずは何とかなるかもしれない。問題なのは、納期を忘れたり守らなかったり、タスク管理やほうれんそう、PDCAがまったくできないあるいはしないという実務的なところにある。

単純な話「これをいついつまでにやっておくように」と指示してもできず、さらには完了していないのに「できました」と、最終的にはその場しのぎの嘘をつくのだ。いずればれる嘘とわかっていても──である。

本当に育児とそう変わらないのだ。

もし私の気持ちを知りたければ、職場に幼児を連れていき、ほかの同僚達と同じようにチームで仕事をさせてみればよい。大人の常識では考えられないミスをするだけでなく、自分のミスを自分で処理しないのが当たり前とでもいわんばかりの幼児にあなたのリソースはみるみる奪われ、やがては自分の仕事を何も達成できなくなり病むだろう。時間の問題である。まさにこの状態がカサンドラそのものだと思う。

「大人と幼児は違うだろう。だって大人は自分でご飯を食べられるし、自分で飲み物を用意して飲むことだってできる」って?

食べ散らかしてそれを掃除したり、その辺に放置された空のペットボトルや缶を片つけるのは誰か?あるいは事あるごとに毎回「それを片付けなさい」と指示しなければならないのであれば、幼児と何が違うのか?

さらに彼は何度注意しても道中での歩きスマホをやめず、挨拶や返事もろくにできない。加えて、謝るときはしおらしく謝るのだが、同じミスを何度も繰り返す。形式的に謝罪しているだけで、反省している素振りはない。「謝って許してもらう」が目的になってしまっており、「反省して改善する」ことにまで思慮が及ばないようだ。仕事をする上でこれらは、チームパフォーマンスを下げるに十分過ぎるものであった。

思うに彼は、目の前のことしか見えていないのだろう。タスク管理やスケジュール管理ができないのも、先を見越す想像力あるいは知力がないからではないだろうか。掃除がまともにできないのも同様、物事の順序や道理というものに思いを馳せることができないため、何をするにしても場当たり的なのである。

彼の一連の特性を見ていて、僕は「これはある種の知的障害なのではないか」と感じた。言語に問題がないため一見そうとは分からないが、こうした情報処理が人並みにできないというのはつまりそれを司る脳部位に問題があるわけで、認知機能が正常に機能していない──と解釈できはしないだろうか。

一方で脳機能に関わらず、慢性的な軽度の鬱状態にあるため意欲や気力がなく「分かっていてもできない」という状態に陥っている可能性もある。あるいはそれ以外に僕や本人はもちろん、専門医にも分からない因果があるかもしれない。

この謎めいた症状は、当人以上に周囲を戸惑わせ、苦悩させるものである。

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