シャーロック・ホームズの凱旋
今回読んだ本はこちら。
※ネタバレ注意!!
シャーロック・ホームズの凱旋
森見登美彦
中央公論新社
私が、好きな作家の一人である森見登美彦さんの作品が1月に発売されたということなので、早速購入して読んでみた。
シャーロック・ホームズといえば、探偵ものの小説だが、森見さんがよく書いているのはファンタジーなので、一体どういう物語なのか期待に胸を膨らませながら読んだ。
読んだ結果「面白かった!」
恥ずかしながら、読書好きと言っておきながら、私はシャーロック・ホームズを読んだことがない。なんとなく断片的な知識があるのみである。
そんな私でも楽しめる作品なんだろうか。
そんな不安もあったが、全く問題がなかった。むしろ、読んだことがなくても十分楽しむことができて、シャーロック・ホームズそのものを読みたくなった(今度読みたい)。
推理的な要素もありつつ、やはりファンタジー。
後半は「有頂天家族」や「夜は短し歩けよ乙女」のようなどんちゃん騒ぎ。期待どおりの展開なんだけど、ホームズとワトソンの友情がしっかりと描かれていて、なかなかに熱い展開で、そこが良かった。
作品の雰囲気としては、イギリスのロンドンなのだが、場所が京都というチグハグな感じだった。個人的なイメージとしては、洋食と和食を食べているみないな感じ(和洋折衷?)。ケーキと大福を食べている感じがした。ような気がする。
本書は、前半「ヴィクトリア朝京都」という架空の街で、シャーロック・ホームズに登場する人物が、登場し、物語が進んでいく。
基本的に、登場する人物が少々残念で、ホームズとホームズの宿敵であったモリアーティ教授はスランプに陥っており、ワトソンもホームズが事件を解決しないから執筆が進まない。お互いの傷を舐め合っているそんなグータラ感を読んでいると、やはり森見作品といえばこれだよという感じがして、クスりと笑える。
中盤に、ホームズのスランプを解決すべく、ワトソンが奮闘し、後半にかけてパラレルワールドである架空都市「ロンドン」が登場し、どんちゃん騒ぎとなる。
はじめは、ヴィクトリア朝京都とロンドン、どちらが現実で、どちらが物語の中なんだろう。そう思ったが、どうやら、パラレルワールド的な展開らしい。
最終的には、パラレルワールドの謎自体は深まったものの、丸く納まってハッピーエンドという結構好きな展開だった。
実際にあった小説の設定を活かして、作者のオリジナルの要素を加える。私は、小説を読むばかりで、全く書いたことがないため、完全な想像の話になるが、シャーロック・ホームズは有名な小説なのに、そこに手を加えるのはとても勇気のいる行動ではないかと思う。
なんとなく、シャーロック・ホームズという作品に、作者の「愛」を吹き込んだそんな感じのする作品だった。
やはり、原作の「シャーロック・ホームズ」も気になるので読むしかない。