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研究室生活を乗り切るためにー発表スライドの作り方ー

大学3年生・4年生で研究室に配属される大学生が、研究室生活を乗り切るために、現役大学教員が一つの方針を提案するこのシリーズ。第3弾は発表スライドの作り方である。

研究室に配属されると、スライド(パワーポイントやkey note)を使って発表を行う機会が山のようにある。そして、どんなに研究で手を頑張って動かしていても、論文を読み込んで内容を理解していても、発表スライドがある程度きちんと作られていないと、聞き手には全く伝わらず、思いがけない大惨事になったりする。ここでは、『上手な』スライドの作り方というよりも、基本的な、抑えておかなければいけないポイントを紹介しよう。

スライドの枚数は発表時間(分)×0.8~1 枚

発表時間に合わせてスライドを作ったり、話す内容を取捨選択することは求められる大切なスキルだ。発表時間が15分なのに20分話すことは論外だが、15分全て使って話してしまっては質疑応答の時間がなく、発表した意味が半減してしまう。スライドは15分の発表時間(質疑応答のぞく)なら12-15枚程度にしよう。

1スライド1フレーズ

一つのスライドで言いたいことは、一つにしよう。例えば、図を貼りまくって1枚のスライドでたくさん示したり、実験の結果と考察を同じスライドで話したり、議論を2つも3つも一つのスライドで話したりすると聞き手はほとんど分からない。『このスライドは〇〇について説明するスライドです』と明確に説明できるようにスライドを作ろう。もし、「それではスライドの枚数が多くなってしまいます」というのなら、話す内容を絞ろう。
僕がよくやることの一つに、スライドの最下部に、そのスライドで言いたいことを1フレーズ書くというものがある。これをしておくことで、聞き手がちょっと話を聞き漏らしても、「あ、このスライドはこれが言いたいスライドなのだな」と追いついてきてくれる。最悪、話す内容が頭から飛んでしまっても、そのフレーズを読んでおけば、話は先に繋がるはずだ。

図は大きく文字は少なく

発表スライドで最もやってはいけないのが、「聞き手の聞く気を奪う」ことだ。よっぽどあなたのファンかアンチでもない限り、聞き手は大抵、ぼんやり話を聞いている。そして、見づらいスライド、繋がらない話によって途端に聞く気を失っていく。そうするとせっかく準備した発表がまたも意味を失ってしまう。
見づらいスライドの代表格が『図が小さい』『文字ばかり』のスライドだ。ならば、逆をやればいい。図は大きく、文字は少なくしよう。グラフの縦軸や横軸、凡例の文字も大きくしないと読めなくて、何のグラフなのか聞き手にはわからないので気をつけよう。
文字を少なくするテクニックの一つに、文章を書かないというものがある。「てにをは」をつけるとどうしても読む部分が増える。例えば、「図は大きく文字は少なく」は「図:大、文字:少」にしてやる。そうすると、聞き手は読む部分が少なくて済むにも関わらず、言いたいことは伝わるはずだ。あとは話すときに「てにをは」を補ってきちんとした文章で話してあげればいい。

「ご清聴ありがとうございましたスライド」はいらない

発表の最後に「ご清聴ありがとうございました」だけを書いたスライドを持ってくる人がいる。これは賛否両論あるかもしれないが、僕はこれはいらない、無駄なスライドだと思う。こんなことは口で言えば済むことで、必要なのは、発表内容をまとめたスライドだ。まとめスライドを最後に出しておくことで、聞き手は話をもう一度整理することができる。一回話を聞いただけで内容が分かる人はそんなに多くないので、復習する時間をあげることが必要だ。だから、まとめスライドも、長々と文字を書くのではなく、やったこと、わかったことを簡潔に示す必要がある。図示できるものは図示してもいいかもしれない。

原稿は作らない方がいい

原稿を作って話す内容を固め、本番でもその原稿を読む、という人がいる。僕はこのやり方はオススメしない。話す内容が飛んだらどうしよう、覚えられない、という不安はよく分かる。しかし、大抵の場合、原稿を読むとスピードが早く、スライドに書いてあることよりも膨大な情報を話されるので、聞き手はついていくことができない。発表する人もスライドを見ながら、思い出しながら、ちょっと考えながら話すくらいのスピードが聞き手もついていきやすい。だから、スライドを作るときにも、自分が話す内容のヒントを仕込んでおくといい。前述したスライドの最下部に1フレーズ書いておくのもこのためだ。

発表練習と質問用スライド

発表の準備が整ったら、発表練習をたくさんしよう。1人で練習することも大事だが、やはり先輩や指導教員にみてもらうことも大事だ。特に初めてのスライド作りはいくらここで書いたことを意識してもなかなかうまくいかないものだ。必要なパーツが抜け落ちてる可能性もあるし、そもそも話がうまく作れていない可能性もある。いろんな人に見てもらってブラッシュアップしよう。
スライドを作ると、発表時間に入りきらなかったスライドが出てくる。これは質問に対応するスライドとして、スライドの後ろの方に入れておこう。質問に対してスッと新しい図が出てくると「準備してるな」という感じがする。

兎にも角にも内容がないとどうしようもない

ここまでスライドの作り方の基本を紹介したが、いくら綺麗なスライドを作れても、中身がなければ結局意味がない。質問に答えるためにはきちんと論文を読み、手を動かしていないといけない。きちんとした中身と相手に最後まで聞いてもらうスライドを持って、発表に臨んでほしい。