研究室生活の乗り切り方ー卒論の書き方ー
今年もあっという間に年の瀬が近づいている。年の瀬といえば、卒論・修論の季節だ。
大学3年生・4年生で研究室に配属される大学生が、研究室生活を乗り切るために、現役大学教員が一つの方針を提案するこのシリーズ。第4弾は卒論の書き方である。
今回は、日本語の書き方、というのは置いておいて、卒論の大きな流れの作り方について書きたい。いくら上手な日本語、わかりやすい日本語が書けても、そもそも内容が卒論に見合っていなければ意味がないからだ。
スケジュール感
まず、中身をどうこう悩む前に、スケジュールについて考えよう。
いつまでにどの程度のことが終わっていないといけないのか、知らないということはとても不安なことだ。
2月初旬に卒論仮提出の期限が設定されている弊学でのスケジュール感を並べてみよう。もちろん、制度や指導教員の考え方が違えば、スケジュール感が異なるので、注意してほしい。
12月初旬 卒論書き始め
1月 初旬 指導教官へ初稿提出
1月 中旬 指導教官からの添削結果を受けて修正しもう一度提出
1月 下旬 指導教官からの添削結果を受けて修正
2月 初旬 卒論仮提出
卒論の位置づけ
卒論の中身、何をどれだけやってどこまで書くのか、は早めに指導教官と相談しよう。その相談の助けになるかはわからないが、私としての卒論の位置づけを書いておく。
私は、卒論は車輪の再開発、もしくは、車輪の設計図の書き起こしでいいと思っている。つまり、実際にめちゃくちゃ手を動かして何か結果めいたものが見えなくてもいい、ということだ。大事なことは、自分の研究テーマ、分野でこれまでどのような研究が行われてきて、どこに問題があり、どんな解決方法が想像されるのかをきちんと理解し、論理立てて説明できることだ。
だから、実際に自分がやったことは一番新しい研究の理論を理解した、とか、その研究の計算ができるようになった、とか、それでいいと思う。実際、最新の研究の再現をするのもかなり大変なことである。
レビューの重要性
私は自分で何か新しい結果を産むことを重要視していないが、一方で、レビュー(先行研究の理解・紹介)をかなり重要だと思っている。
可能であれば、自分の研究分野・研究テーマの先行研究を、その分野・テーマの最初の一本から網羅的に記載し、特に自分のテーマに重要の2、3本をページ数をかなり割いて紹介するといいと思う。そうすることで、自分の研究がどんな問題を解決しなければならず、また、これまでにはどのように試みられてきたのかを理解することもできるし、伝えることもできるからだ。
逆にここをおろそかにすると、自分の研究の位置づけが不安定になりがちだ。
章立てを考える
レビューの重要性を意識したら、章立てを考えよう。
大抵は、
・はじめに
・先行研究のレビュー1
・先行研究のレビュー2
・自分の研究の手法(まだやっていなくてもこれからやるやり方)
・結果(まだやっていない場合、期待される結果)
・考察
・まとめ
・参考文献
のようになると思う。
あとは、それぞれの章で大まかにどんなことを書くか考えて、徐々に書き出せば良い。
書く順番は何も「はじめに」から書くことはなく、書きやすい、例えばレビューから書いてもいい。むしろ、「はじめに」は他の大部分を書いてしまってから、その他の大部分の導入になるように書くと書きやすかったりする。
図の重要性
卒論にどんな図を載せるか、は非常に重要だ。さらに、ぼんやりと思い描いているだけでなく、実際に載せる図を作成して、その図に対してよく考えることが重要だ。なので、図の作成には早めに取り掛かったほうがいい。特にそれまで慣れていない形式や描き方でグラフを作成することが増えるので、慣れるまではかなり時間がかかる。さらに、図を書く前にこんな感じかなと考えていた結果と、実際に図にしてみた結果は異なる場合も多い。それまで考えていなかったこと、見えていなかったものが見えてきたり、考えなければいけないことが増えたりするというのは良くある事だ。
引用の書き方
最後に非常にテクニカルなことを書くが、引用の書き方はきちんと調べて、文中での引用、参考文献リスト、共にしっかりと書こう。いくつかスタイルはあるが、統一することが大事だ。ピリオドやカンマの有無、カッコの全角半角に気をつけよう。
私の場合は、
・文中で引用する場合
Tanaka et al. (2020)では、田中・他(2018)の結果に基づいて…
・文末でカッコの中に引用する場合
いくつかの論文では、〇〇であると述べている(Tanaka et al., 2020)。
・参考文献
Stix J, de Moor JM. Understanding and forecasting phreatic eruptions driven by magmatic degassing. Earth Planets Space 70, 83 (2018).
二行目以降の半角4文字分の字下げを忘れないようにしよう。
最後に
初めて書く卒論はわからないことだらけだろう。できれば、書いたら章ごとでもいいから、小まめに指導教員や研究室の先輩・同期に読んでもらうことをオススメする。また、レビューへの比重の置き方などはかなり私の思想によるところが大きいので、指導教官との密なコミュニケーションを忘れないでほしい。
さて、書いて気がついたが、この文章は大学院に進学する人の卒論をイメージして書いている。大学院に進学せず、就職する場合、私はもう少し、手を動かす、動かせるようなテーマをやるようにしている。レビューの重要性は変わらないが、少しボリュームを減らして、自分がやったことをしっかりと記述するといいだろう。