これから、円ドルはどうなる? _161円の円安から139円の円高へ。なぜこんなに?
下の図は、4月から10月2日までの円ドル推移と、米国10年金利の推移を重ねたものです。
7月3日に161.94円を付け、9月16日には139.57円の円高になっています。
円高が進んだきっかけは、7月11-12日の為替介入と7月31日の日銀の利上げです。
この図は同じグラフですが、
※の部分で円ドルと金利の変化が一致していることに留意してください。(筆者が縦軸を調整して一致させています)
緑色の①の部分では、金利が低下傾向なのに、円安が進んでいます。そして、円ドルの線は②の部分で金利の線に近づき、金利と同じような動きをする形に戻っています。その後、金利が低下するのに合わせて円高が進みました。
すなわち、※の部分では、円ドルの変動は金利変動で説明できるのに対し、①②の部分は為替ディーラーなどの投機的な動きによって変動していると考えられます。図にすると以下のようになります。
161円から139円への円高進行のうち、約半分は投機的な動きで、残り半分は金利の変動によると解釈できます。
次に、①の投機的な動きについて、詳しく見ていきましょう。
この5月、6月の時期、日銀は「しばらく緩和を維持する」と見られており、5月8日や6月19日には日銀の発表や発言に反応して円安が進みました。
また、この5月、6月の時期は、Nvidiaなどのハイテク株が好調でNasdaqが値上がりしています。
5月2日15,758から7月11日18,871へ、2か月の間に18.4%も上昇しています。世界中が米国ハイテク株を買っており、日本からも円をドルに換えて米国株に投資する動きが広がりました。これは円安要因と思われます。
下の図は、FXのスワップポイントの推移を重ねてみたものです。スワップポイントとは、取引をする際の通貨間の「金利の差」が元になっており、毎日受け取ることができるもので、現金化することもできます。
この時期のスワップポイントは、金利よりも、円ドルの推移に近い動きをしていることがわかります。この時期は円安が進んだので、FXは含み益が発生しており、スワップポイントが上がったのだと思われます。
スワップポイントが上がると、円をドルに換える魅力がさらに高まり、円売りドル買いが促進され、さらに円安になるという流れができていたと考えられます。
下の図のように、為替を動かす要因はたくさんあります。
しかし、野口悠紀雄氏が言うように
「投機資金」が圧倒的に大きく、FXや為替ディーラーの相場観が為替を左右しているのが現実です。
以上を踏まえて、まとめると
この5月6月は、このような流れで円安が進んだと思われます。
今後の円ドル
そもそも「為替が金利の動きに連動する」という現象も、為替ディーラーの相場観によるものです。今後も「金利がどうなるかで円ドルが決まるという相場」が続くと思われます。
すると、米国の金利は、FRBの利下げによって低下し、円ドルも円高に向かうと予想されます。ただし、イールドカーブがあるので、10年金利は下がっても3%台を維持すると予想しています。そして、その金利レベルならば、円ドルは140円±5円程度と予想します。
その後は、コロナでばらまいた緩和マネーの回収が進み、債券バブルがしぼむことによって、金利は少し上がり、少し円安になると予想します。これが可能性の高いメインシナリオだと考えています。
一方、上の図に点線で示した「円安進行シナリオ」は、例えば、以下のようなことが起こる可能性があるということです。
この7月は巻き戻しによって、元の金利連動に戻りました。しかし、戻りきらないということがあると予想しています。その場合、170円、180円という円安もあり得ると考えています。
1992年にジョージ・ソロスが英国ポンド売りをしかけて、英国当局に勝ち切った例がありますが、それと同じようなことが起こる可能性があると私は見ています。当時の英国はERM(欧州為替相場メカニズム)に縛られて金利を上げることができず、介入も限界があり、ポンド防衛に失敗しました。
今の日銀も「金利を少しずつしか上げられない」という制約※を抱えているので、似たようなことが起こらないとは言えないと思います。
※日銀が少しずつしか金利を上げられない理由については、ここ↓を参照
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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