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さつりくサッちゃん:01

さつりくサッちゃん(殺戮幸子)#01

(……血のにおいが、取れない……)
赤ワインをこぼしたような洗面台を見詰めて
サチコは大きく嘆息する。
又、触りたくない命を壊してしまった。
殺める度に成長して
生きるためには武器を捨てられなかった。
「暗殺者」と言うMAXバッジは
人生LIVEの最高勲章らしい。
……要らない、要るはずがない。

サチコにはReNと言うパートナーが居た。
仕事仲間であり、痛みの共感者だった。
ReNも「暗殺者」だったが
基本的には武器を必要としない戦闘スタイル。
全身凶器、みたいな四字熟語が適当だが
彼はむしろ、狂気と形容した方が正しいのかも知れない。

殺戮幸子は今日も血塗りの指先を洗う。
どんなに器用に立ち回っても
返り血を浴びない日は無かった。
理解していなかったかも知れないが
それは暗黙の儀式(ルーティン)と位置付けられるのかも?

殺めることは嫌いだったが、生の心臓を見ることは
心がときめいた。
グロテスクだけど、可愛らしい塊。
種族によっては「核」と表現する者たちも居た
「心」の「月」「蔵」なんとも詩的な表現だ。
心臓を壊すことだけが暗殺ではなかった。
脳をぐちゃぐちゃに破壊すること
胃カメラのように、銃口を突っ込んで撃鉄を鳴らす行為。
下品と鼻をつままれても、殺意の輪舞は躍動を止めない。
ReNだけが理解してくれた。
彼のためだけに、今日も生き殺そう。

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