「マックスウェルの悪魔」
「マックスウェルの悪魔」
都築卓司
どうして重力があるのに雲は浮いていられるのか、
どうして沸騰していないのに水は蒸発してしまうのか?この問いにきちんと答えられる人って少ないんじゃないかと思います。
実際エネルギー安定を考えると、重力に惹きつけられて全部下に落ち切っていた方が安定なんですね。
でも、現実はそうじゃあない。たとえ無風でも。
なんで?
そこに現れるのが、エントロピー。
本書は、そんななんだかよくわからないけど凄そうな物理用語ランキング上位の“エントロピー”に焦点を当てたブルーバックスの優良書です。
“タイムマシンを実現させて過去をよみがえらせ、永久機関を動かして、世間をアッといわせてみせる。人類が滅び、宇宙に終焉が訪れるとすれば、マックスウェルの悪魔こそ、救世主か?この不可思議な悪魔に目をつけながら、時間の向きを決めているという「エントロピー」を、他に類を見ない面白さとわかりやすさで解説する。”
高校物理だと、エネルギーの“量”に関する第一法則が重視されるあまり、“質”に関する第二法則はさらりと流される傾向にあります。実際第二法則はちょっとふんわりしたところがあって、その曖昧さから「ひょっとしたら成り立たない場合もあるんじゃあない?」と思わせてくれる隙があって、エセ科学界隈では大人気の領域です(笑)そんな領域に現れるのが本書の主人公?「マックスウェルの悪魔」。
別名、エントロピーの法則を壊す者。
”仕切りの扉を開閉するだけで、物を運んだりはしない。混ざってしまった粒子を通したり通さなかったりすることで片方の部屋ともう片方の部屋に種類に分けるだけ“
拡散して混ざってしまった物質を、扉のオンオフだけでより分ける、そんな悪魔が存在するとなぜ世界を揺るがすほどの事態になってしまうのか?
丁寧に専門性を失わずかつ分かりやすい稀有な語り口で展開されていきます。
しかしもしそんな悪魔がいたら、、、
養豚場の肥育部門で出荷する豚のより分けをぜひやってもらいたいですな(笑)