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米国で流行している「やせ薬」とは何か?

こんにちはK.Iです。私は港区のIT企業で係長をしている30代A型の男性です。

今回は「米国で流行している「やせ薬」とは何か?」というテーマで書きたいと思います。

はじめに

みなさんは最近、米国で「やせ薬」が流行しているという話を聞いたことがありますか?

アメリカでは肥満で悩んでいる人がとても多く、肥満は国民の共通の悩み・課題でもあります。
また「薬」の最大のマーケットは米国です。
この2つの要素から、米国で「やせ薬」が流行しているようです。

「やせ薬」と表現していますが、正確には「肥満症治療薬」と言った方が良いでしょう。文字通り治療という医療行為に使用するための薬だからです。

肥満症治療薬で有名なのは、イーライ・リリー社が開発した「ゼップバウンド®」と言われています。これは肥満症の治療に新たな選択肢を提供する画期的な薬だと言われています。

この薬についてビジネスメディアの「Pivot」が動画で取り上げていたので、ご紹介します。
個人的にPivotの中でもお気に入りランクの上位に入る動画ですので、ぜひご視聴いただければと思います。

<紹介動画>

以下で動画の内容を抜粋して書きたいと思います。

食欲を抑える

肥満症治療薬を用いて体重を落とすメカニズムは「食欲を抑える」→「体重減少を引き起こす」という形になるそうです。

食欲というのは生物にとってとても大切な欲求です。食欲を失うことは生命を維持する上で致命的なことになってしまいます。究極、食べなければ餓死してしまう可能性すらあります。

食欲・睡眠欲・性欲が人間の三大欲求と言われますが、どれも身体機能や地球上に生命を維持する上で必要な欲求です。

そのため食欲は色々とカバーされていて、なかなか「食欲を抑制する薬」は見つけることができなかったそうです。

脳ではなく、腸にアプローチした

この「食欲を抑える」という目的に対して、イノベーションが起こりました。

それは「脳」じゃなくて「腸」をハックすることで、結果的に食欲を抑えるというメカニズムです。

それでは「腸」をハックするという点をもう少し具体的に見ていきます。
そのために「糖尿病の薬」の話をします。

糖尿病の薬が「やせ薬」に応用された

「肥満症の薬」の有効成分は「糖尿病の薬」と全く同じだそうです。

この「糖尿病の薬」が「肥満症の薬」に転用できたのはなぜでしょうか?

ここで「とある成分」が登場します。それは「アメリカ毒トカゲの唾液」から見つかった物質である「インクレチン」というものです。

この「インクレチン」はもともと人類の小腸にあり、「インスリン」を作らせるホルモンとのことです。

「インスリン」というホルモンの働きは以下の通りとされています。

糖分を含む食べ物が消化酵素で「ブドウ糖」に分解され、小腸から血液中に吸収される
血液中の「ブドウ糖」が増えると、すい臓から「インスリンが分泌」される
→インスリンにより「ブドウ糖」は筋肉などへ送り込まれ、「エネルギー」として利用される

糖尿病では「インスリン」が出にくいので、血糖値が上がってしまいます。そのため「インクレチン」を使って「インスリン」を出せないか?というのが糖尿病治療薬のスタートでした。

また「インクレチン」が「インスリン」を作ると、結果的に「お腹いっぱいだよ」という信号を脳に出すことになります。

ブドウ糖が血液中に増えると「インスリン」が分泌されるため、「インスリンがでる」=「ブドウ糖が摂取された」=「食事している」と脳が判断するのだと思います。

このようなメカニズムで「インクレチン」が「お腹いっぱい」という信号を結果的に出し、食欲を抑えることに繋がるのです。

インクレチンの分解

しかし、人間の体内には「インクレチン」ができるとすぐに分解する作用があると言われています。食欲を抑えてしまう生命にとってマイナスな物質は体内には存在できないのでしょう。

この課題を解決する「ある薬」が開発されることになります。

人間の体内にある「インクレチン」と同じ役割を担い、そして人間の酵素では分解しにくい同じ構造を持った薬が2005年に開発されました。ノボ・ノルディス社の「オゼンピック」という糖尿病の薬です。

この「分解されにくい」というのは、1週間たっても分解されにくいそうです。

糖尿病の薬に予想外の「副作用」があった

この糖尿病薬を使っている患者さんにある変化が起きました。
なんと患者さんたちに「著名な体重の減少が起きた」のです。

糖尿病の薬の「副作用」として体重の低下が起こったのです。

予測していなかった薬の作用は「副作用」として扱われるとのことですが、「糖尿病の薬」が予期せぬ「体重減少」を引き起こしてしまったのです。

糖尿病の薬として開発されたものの、「インクレチン」と同じ役割を担う成分を有していたため、患者の食欲を抑え、体重の減少が引き起こされたのでした。

このノボ・ノルディスク社の薬よりも痩せる効果が高いと言われるのが、先に紹介したイーライ・リリー社が開発した肥満症治療薬「ゼップバウンド®」とのことです。

イノベーションの連続の結果

ここまで「やせ薬」ができた経緯を説明しました。「やせ薬」に到達するまでに少なくとも3つのイノベーションが起こりました。

①毒トカゲのある成分(インクレチン)から「血糖値をさげられる」ことを発見した
②体内で分解されないされにくい、インクレチンと同じ構造を持つ薬を開発できた
③副作用として体重減らす効果が確認された

このようにして現在、米国では肥満症治療薬が使われ始めている状態になったようです。

ちなみにこの薬は飲み薬ではなく、注射する必要があるそうです。
週に1回、お腹に注射を打つと脳が「お腹は十分だから食欲を作らなくていい」という反応になるそうです。

この作用は長く続くと言われています。
体内の酵素で分解されたり、おしっこで排出されずに体内に留まり、1週間たっても注射の効果は半減しないと言われるそうです。

やせ薬を使うことのリスク

冒頭でも書きましたが、この薬は「やせ薬」でありながらも、「肥満症治療薬」という表現が適切だと思います。あくまでも「治療薬」なのです。

つまり、この薬は「ある一定以上の体重や肥満に関する病気を持っている人」に向けて開発されたものであり、美容目的で開発された薬ではありません。

この薬を使用するリスクとして考えられるのは「すでに痩せている人が使うと、食欲が低下して衰弱する」ということです。

過去に糖尿病の治療薬を使用した高齢者が亡くなってしまった事例も実際にあるそうです。

動画の中で紹介されていますが、最近は「美容目的でオンラインで診療を受けて手にする人」がいるらしいです。また「個人が自分で輸入するケース」もあるそうです。

この薬には吐き気を含めた副作用があるそうなので、医療者に定期的に相談できない状態でこれを使うのはリスクがともなうと動画の中で語られています。

また「肥満症は医療行為であり、美容目的の薬ではない。」「本当に必要な人に届かなくなる。」「糖尿病の方への薬が足りなくなってしまうことが起きている。」といった旨の発言もありました。

あくまでも「医療行為」に使う薬であり、美容目的で個人が使用するにはリスクが伴うということは、私たちはよく理解をする必要があると言えます。

おわりに

最後に私の感想を述べたいと思います。

わたしの感覚では「普通の人が気軽に使えるものではない」と思いました。

まず新しい薬であり、利用者がどのようなリスクがあるか個人が十分に理解できないと思います。

また、医療行為に使う薬であるという前提に立てば、肥満で健康リスクが高い人が使用するものだと思います。
比較的、日々の生活習慣から健康的な体形をしている人が多い日本人には、広く浸透しないのではないかと思いました。

長文になりましたが、以上が「米国で流行している「やせ薬」とは何か?」になります。

またの機会にお会いしましょう。それでは、また。

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