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【映画感想】『温泉シャーク』 DIY精神溢れる娯楽特撮怪獣映画の傑作
『温泉シャーク』 監督 井上森人
109シネマズ木場で観賞。イトーヨーカドーの中の映画館でこういう映画を観られる奇跡…
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昨年2023年から「クラウドファンディングで国産サメ映画を作ってるらしいぞ…。ネタなのかマジなのか分からん…」と、サメ映画好きやネタ好きツイッター廃人の間でだけは有名だった謎の映画。本当に全国の映画館で公開しちゃった…!
貴重な邦画のサメ映画
洋画では、ハリウッド大作からYouTube動画まで無限に増殖を続けるサメ映画ですが、邦画にはサメ映画はほとんど存在しません(ゼロではない)
そもそも、サメ映画の母体ジャンルであるモンスター映画自体が邦画には非常に少ない。大昔の作品を除けば、有名な作品は、諸星大二郎の実写化『ヒルコ 妖怪ハンター』(1991)や、姥捨山の婆エクスペンダブルズVS人喰い熊の映画『デンデラ』(2011)、みんな大好き『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-03【人喰い河童伝説】』(2013)。
あとは中田秀夫監督の森のやつくらい。比較的見かけるシチュエーションは、怪獣映画の途中で小型の怪獣が出てくる場面かもしれません。
それくらい邦画ではマイナーなジャンルな上にインディペンデント映画とあっては、昨年の時点での私の予想では、公開されるのは池袋シネマロサだけであろう…と勝手に決めつけていました。
それが…
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(公式ホームページ7/17より)
でも、面白いの?
世の中のサメ映画には、予算やセンスの問題で実際にサメの出る時間は僅かで、尺稼ぎの会話シーンばかりの作品も多く、大作以外で普通に面白い作品を見つけるのは、砂漠から砂金を見つけるような謎の執着が必要です。
昨年2023年に奇跡的に製作された国産サメ映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』も、忍者対サメという絶対面白そうなコンセプトにもかかわらず、巨大なサメとのラストバトルはわずか2分で瞬殺。メイン要素は残酷時代劇アクションという、サメ目当てとしては満足度の低いものでした。
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『温泉シャーク』も期待せずに挑みましたが…
めちゃくちゃ面白かった
熱海で起きた謎の連続失踪事件。その犯人は、温泉に出る古代サメの仕業だった!
そういうおかしな話を正面からやるだけで偉いですが、『温泉シャーク』には序盤から最後までサメがジャンジャン登場してくれます。嬉しい!
しかしそれは序章に過ぎない…
観光地をサメの脅威が襲い、人命を守りたい警察と経済を優先させたい市長が対立するという、基本の『ジョーズ』を踏襲したストーリーは、何度も予想外の展開を繰り返しエスカレートしていきます。
いつの間にか、まるで『シン・ゴジラ』でも観ているかのような国家の存亡レベルの壮大な災害にまで膨れ上がっていきます…!
温泉シャーク対策会議で専門家が異様な早口で喋り、場所や施設、スーパーメカ(←!?)などに、やたらテロップが表示される『シン・ゴジラ』パロディ演出は、劇中では真面目な場面なのに笑ってしまいます。
『シン・ゴジラ』は、「2016年の日本に初めて怪獣が出現したシミュレーション」のような、リアルな現実的状況から、徐々に虚構の度合いが濃くなり、無人在来線爆弾の登場あたりから、完全に昭和の特撮やアニメみたいな虚構に染まるグラデーションの付け方が見事な作品です。
『温泉シャーク』も、それを上手くリスペクトしています。
連続失踪事件を捜査する警察のお話から始まり、広告代理店の仕込みにより、サメでバズりたいYouTuberが乱入して騒ぎと被害が大きくなっていく…、というような、2024年のリアリティを感じさせる展開がどんどんエスカレートしていき、いつの間にか怪獣映画になってしまいます。
怪獣、出ます。
後半は、ある謎のヘンな人物の参戦により、これ『呪術廻戦』か?とでも思えるような、熱いバトル要素も加わる。なんなんだよ。
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『温泉シャーク』は、いま絶対に映画館で目撃した方がいい怪獣特撮映画であり、DIYとユーモアと熱と、もしかしたら社会風刺まで込められた、楽しい娯楽映画の傑作です!
私が行った回は、舞台挨拶でもイベント上映でもない通常の上映回でしたが、上映後は場内拍手喝采でした!
劇場を出ていくお客さんの表情はみんなニコニコしていました。
私は観たい映画が常に沢山あるため、休みの日は普段、同じ日に複数の映画をハシゴすることも多いのですが、『温泉シャーク』が予想の100倍くらい面白く、その幸福な余韻がたまらなく良かったため、その日は続けて他の映画を観る気分にはなりませんでした。
こんな気持ちになったのは『デッドプール2』(2018)以来だぜ…
みんなも↓の予告を見たら仕事を抜け出してすぐ観に行きましょう!
ちなみに
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本物の温泉シャークさんに襲われたことがある(自慢)
だいあぱん さんは物理無効なのでギリ助かりましたが、だいあぱんがいなければ即死だった…
急に だいあぱん とか言われて意味不明な方は
こちら↓
↓私の映画などの感想記事まとめです。
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