【展覧会感想】松濤美術館『空の発見』展〜「青い空と白い雲」は当たり前ではない
空の発見 渋谷区立松濤美術館
2024/9/14(土)~11/10(日)
松濤美術館は、存在は知っていましたが、なんとなく絵画展が少ない印象があり、これまで行ったことがありませんでした。
地図で調べてみると、渋谷駅から結構離れている。駅から歩いた所にあるBunkamuraから、さらに奥に進んだ先にあります。その日は暑かったので渋谷駅で東急に乗り、一駅目の神泉駅で降りました。
神泉駅から住宅街を通り、松濤文化村ストリートという車道を渡った先に美術館がありました。
空の発見 とは
昔の日本絵画には「雲」が描かれることはあっても、「青い空、白い雲」に代表される、今の日本人が頭に浮かべるような「空」の概念は一般的ではなかった。という解説から展示が始まります。
確かに言われてみれば、昔の屏風絵は背景が金色だったり、水墨画なども紙の色をそのまま背景にしているかもしれません。
そこから、日本絵画が西洋絵画の「空」の概念を徐々に取り入れ、時代を経るにつれ様々な空が描かれていく過程。それを同じ時代の日本絵画と西洋絵画を並べ、現代アートまで歴史を追っていく展示構成です。
そのように観賞していくと、江戸時代の浮世絵や泥絵などにも空に青色が徐々に加えられていく様が分かり、とても興味深い構成でした。
素晴らしい風景画の数々
展示品の中には、モネや葛飾北斎のようには一般的知名度の無い、知らない日本人画家の作品も沢山ありました。
私は風景画が好きなのですが、気に入った作品がいくつもありました。
私は知らなかったのですが、武内鶴之助という画家のパステル画が何点も展示されており、どれも素晴らしい作品でした。
会場は、上階のフロアと地下フロアの2会場に分かれています。地下の近代〜現代の展示にも様々な素晴らしい作品がありました。
ポスタービジュアルになっている、香月泰男〈青の太陽〉は、関東大震災と戦争を描いた作品を集めた第5章『カタストロフィと空の発見』に展示。
実物は、いつまでも眺めていられる素晴らしい絵画でした。まさか戦時中の苦しさを描いた作品だったとは…
この大きな作品も会場で観ると、一見モネ風の美しい風景画なのですが、じっくり凝視していると、日本軍の特攻が描かれているのが浮かび上がる作品。
当時は戦意高揚のために描かれたのだと思いますが、こんな美しい絵が描ける芸術家も、そのような作風にしなければ作品を発表できなかった、あるいは評価されなかった(強制されたかは分かりませんが、少なくとも世の中がそのような空気になった)と考えられます。
今の視点で観ると、戦争が、人の命と生活だけでなく、あらゆる表現の自由も奪う恐ろしいものだ、ということが伝わる作品になっています。
この次の現代アートの章も面白い作品ばかりでした。
美しい作品が沢山観られるだけでなく、勉強にもなり、芸術家が作品に込めた様々なメッセージも受け取ることができる素晴らしい展覧会です。
11/10(日)までやってますが、今はまだ空いているので早めに観に行くのがおススメです。
展覧会ホームページ
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