【映画妄言】『ラブライブ!』は隠れSFじゃないか説
映画『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』監督 河村智之、脚本 田中仁、キャラクターデザイン 横田拓己
丸の内ピカデリーで観賞
アニメ『ラブライブ!』は、いわゆる「アイドルアニメ」ジャンルにあたるシリーズです。このジャンルや、アニメ自体に興味が薄い方から見ると、こういったアイドルアニメは全部同じに見えるかもしれません。しかし、『ラブライブ!』シリーズと他のアイドルアニメには、明確な差異があります。
部活でアイドルをやっている
『ラブライブ!』シリーズには前提として、「スクールアイドル」という架空の設定があります。現実世界の高校における吹奏楽部などの部活と同じように、スクールアイドルの部活が多くの高校に存在するという架空の世界設定です。
スクールアイドルは、基本的に事務所に所属する芸能人ではありません。また、アニメの劇中では金銭の発生している様子も見受けられません。現実のアイドルのように、1回○○○○円のチェキ会を回すような描写も無かったと思います。
アイドルとしての活動はライブがメイン。劇中の日常シーンでは時おりファンとの交流が描かれますが、例えば甲子園に出た選手が街中でファンにサインを求められるような、ほほえましくさわやかなものになっています。
『ラブライブ!』シリーズはまず、「スクールアイドル」という架空の設定ありきの作風となっています。この「現実とは異なる架空の社会設定をベースに展開する物語」というのは、SFではないだろうか…?(SF推察①)
他にも、シリーズに共通して気になる要素があります。
それは…
男が極端に少ない
『ラブライブ!』シリーズで気になる特徴の一つに、画面に出てくる男性が極端に少ない、という面があります。
一応、家族が出てくることはありますし、背景に小さく男性らしき人物が描かれていることもあるのですが、基本的には男性がほとんど出てきません。
他の女性アイドルアニメと比べてみます。今のアイドルジャンルの始祖『アイドルマスター』シリーズでは、そもそも主人公のプロデューサーが男性です。
女の子向けアイドルアニメの伝説『アイカツ!』シリーズには、ネームドの男性キャラが教師やアーティスト、学校の生徒などで普通に登場します。
劇中ではアイドルと呼ばれないこともありますが、女の子向けアイドルアニメのもう一本の柱「プリティーシリーズ」でも、男性のメインキャラが多く登場、作品によっては恋愛も描かれます。
その中の傑作『プリティーリズム レインボーライブ』(2014,監督 菱田正和)においては、群像劇メロドラマが描かれますが、主人公9人のうち3人は男性。その人気はスピンオフの男性アイドルアニメ『KING OF PRISM』シリーズに発展しました。(見てください)
他の女性アイドルアニメと比べると、『ラブライブ!』シリーズには男性が不自然なほどに登場しないのです。アイドルものですが、「熱狂的な有名男性ファン」のような描写もありません。感覚的には、画面を占める女:男の割合は1000:1くらいです。
この「男がいない」状況は作劇的に考えると、シンプルに、スクールアイドル同士の関係性の魅力に徹底的に絞ったドラマづくりが理由だと考えられます。(百合の間に男が挟まる可能性を徹底的に排除=ユートピア)
しかしそれは作り手の視点/都合です。
私は『ガンダム』シリーズの宇宙世紀をアニメの描写から考察するのと同じように『ラブライブ!』世界を考察します。
『ラブライブ!』シリーズを観ていて、その「男不在」の劇中描写から、以前から私は「ユートピアの裏にあるディストピア感」を薄っすらと勝手に感じていました…
もしかしたら…
男性の大半が死滅した世界
なのではないか…?
疫病、遺伝子組み換え食品の影響、その他もろもろの複合的な事情により、生まれてくる男性の割合が激減。それが当たり前になるくらいに年月が経過したユートピア/ディストピアSF世界。それが『ラブライブ!』世界なのではないだろうか…?(SF推察②)
SF説に拍車をかける『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』
この記事の頭に挙げているアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(以下 虹ヶ咲)は、『ラブライブ!』第3作目のシリーズです。(『ラブライブ!』シリーズは、4作目、5作目も既に展開中。複数のシリーズが平行してメディア展開を続けているのも珍しい特徴です)
『虹ヶ咲』は、お台場を舞台/聖地として展開する作品です。ファンなら全員認識していることですが、タイトルにもなっている高校「虹ヶ咲学園」は、現実世界ではなんと、東京ビックサイトに該当する立地/建物です。
アニメ『虹ヶ咲』劇中では、綿密に取材された東京ビックサイトの背景美術の中で学園生活が描かれます。(その「少し不思議な違和感」が、『虹ヶ咲』特有の魅力にもなっています)
ビックサイトと背景美術の比較は、ファンによる多くの先行研究があるので、そちらをご参考ください↓
【ニジガク】お台場をひたすら歩く虹ヶ咲学園聖地巡礼レポートPart1~学校見学!東京ビッグサイト編~ - ひだまりPはこう語った (hidamarie.net)
『虹ヶ咲』は、明確に東京ビックサイトが存在しない、現実とは別世界です。「スクールアイドル」設定の時点でパラレルワールドですが、「虹ヶ咲学園」の存在は、パラレルワールド度に拍車をかけています。
しかし、学園にしてはあまりにも東京ビックサイトと酷似しすぎています。「男性ほぼ滅亡説」と合わせると、もしかしたら、「過去に東京ビックサイトがあったが、学園に改築された未来」である可能性(SF推察③)も出てきました…(←!?)
いやいや、『ラブライブ!』はあくまでも現代劇ですよ!?
というご意見もあるかと思います。
ところが、今回の映画『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』において、さらに気になる描写が現れました。
超技術「いつでもどこでもライブ配信アプリ」
映画『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』(以下 映画『虹ヶ咲』)では、お台場を離れ本州も飛び出し、沖縄で開催される大会にチャレンジするスクールアイドル達が描かれます。
今作は、フランス映画などに多い「ヴァカンス映画」としての側面もあります。スクールアイドル達は、沖縄の様々な名所での観光を満喫します。
アイドルアニメ全般においてライブは、登場人物の心情を発露したり、ドラマが盛り上がった場面の演出として披露されます。
映画『虹ヶ咲』では、「ヴァカンス映画」を展開しながら、自然な流れで複数のライブが披露されます。その為に、新たな設定が追加されました。それが「いつでもどこでもライブ配信アプリ」です。
今作の大会は、参加したスクールアイドルらが、ライブの中継やおしゃれ写真、おもしろ動画などを各々投稿。視聴者からのポイントを競い合うルールとなっています。
劇中ではこの超未来アプリにより、「観光中に気持ちが高まったら即ライブ」が可能になりました。
私の推しである近江彼方ちゃん(かわいい)は、ジンベエザメで有名な「沖縄美ら海水族館」の水槽の前で気持ちが高まってしまい、普通に水族館に来てる他のお客さんもいる中でライブしてしまいます。
※↓ PV17秒~参照
グリーンバックも無しのライブ背景や照明などの変化。宇宙刑事ギャバン並みの瞬間早着替えなど、どこまでがアニメ視聴者だけが見えているミュージカル&PV風演出で、どこまでが劇中で実際に起きている演出かは分かりません。
しかし、このアプリが超凄いのは確かなこと。また、大会と関係ない「沖縄美ら海水族館」のお客さんも気にしておらず、水族館スタッフから注意を受けたりもしていません。彼方ちゃんの突然のライブが「社会的に認知されている、いたって日常の行為」であると考えられます。
つまり、超凄いアプリが開発されただけでなく、それが社会に浸透している、かなりの未来社会であると考えられます。(SF推察④)
『ラブライブ!』はSFなのではなかろうか
推察①「スクールアイドル」という「架空の社会設定をベースにしたお話」
推察② 男性人口が激減し、年月が経過した未来世界の可能性がある
推察③ ビックサイトの無いパラレルワールドである。あるいはビックサイトが学園に改築された未来の可能性がある
推察④ 謎の超テクノロジーライブ配信アプリがあり、それが社会に浸透した未来世界である
『ラブライブ!』は、みんなが気づいていないだけで、実はSFなのかもしれません…(おわり)
関連記事
⇩キャストや音響監督など同じスタッフが多く関わっている名作アニメ『キラッとプリ☆チャン』の紹介記事です。ニジガクファンは全員お読みください。
⇩映画、アニメ、読書などの感想記事まとめです
よろしければお読みください。