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【読書感想】水野しず『正直個性論』 誰かが電撃を浴びせねばならぬ
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文学フリマで購入
会場特典として、著者手書きの個性ポストカードと購入者のニセの似顔絵(←!?)をその場でステッカーに描いてくださいました。私は自分のニセではなく、たまたま偶然連れていた だいあぱん のニセモノを描いてもらいました(上のやつ)(自慢)
YouTubeの宣伝「好きなことで生きていく」というキャッチコピーに代表される、好きでもないことで日々生活している多くの人を言外に強迫しておきながら、実はカネカネ言っているだけの個性観。お金に換金できない個性を持つ人は「自己責任(by小池百合子)」として排除する、間違った個性観。
そんな価値観が、「いやな感じの人」たちによって流布されている世の中に、怒りの電撃。
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お前は本当の「個性」と、それを背負った生き方について本気(マジ)に考えたことがあるのか?
と問い詰める。
そして、そんなクソ社会(by宮台真司)で奈落に落ち、心が傷ついた多くの人に具体案を提示し、手を差し伸べようとする本。
・ゆとり教育に対する『ドラゴン桜』
・『デスノート』と『鬼滅の刃』の比較
・『鬼滅の刃』実質『宇宙戦艦ヤマト』OP説
・『封神演義』の妲己のコスプレでLADY GAGAのコンサートに行った知人の話
・庵野秀明にとって『エヴァンゲリオン』の終わらせ方がどれだけ心の負債になっていたか
など、
様々な漫画やアニメの教養も参考にして、この間違った「個性」問題をわかりやすく、納得のいく流れで紐解いていきます。
この作品、おもしろエッセイに見せかけて、実際は社会学の論文です。
また、真剣に怒りながらも、
(※筆者は『まごころを、君に』の終わらせ方で完全に納得しています。)
のような、ユーモアが全編に散りばめられているのが楽しいです。
前作『親切人間論』(2023.3.31 講談社)を読んでいた私は、前作で『機動戦士ガンダム 』のギレンの演説論だけで30ページも割かれていて、読んでも読んでもしつこくギレンの演説の話をしてるのに驚嘆しましたが、今作でもまだしつこくギレンの演説の話が出てくるのにかなり笑いました。日本一ギレンの演説について語れる作家さんでしょう。
日々の生活ですり減って困窮している人は、この本を読むと、気持ちが楽になるとともに、自分が何をしたらいいかのヒントになるかもしれません。
おススメです。
好きな箇所
実は美大のみならず、この世はやってる感だけで運営されている残念なやらせスタジアムがかなり多いのです。むしろ、大学の時は馬鹿にされていたチェーンの飲食店とか、どの店に入っても、すごい企業努力を重ねていて、何もかもが涙ぐましいクオリティーに仕上がっているので、本当にあの閉鎖的で歪んだ価値観は何だったんだろうと思いました。自分の心が楽しいことをすればいい、これだけのことが、わからない。
そうなってみると、周りにいる人の見え方もガラリと一変しました。私にとって関わっていて楽しい尊敬できる人間の特徴を一言で申し上げるとこうです。
『自分の心にとって意味のあることをやっている人』
いや、当たり前だろと思われるかもしれませんが、こんなにシンプルなことができている人って、実は本当に少数派だなと言う印象なのです。かなり多くの人が、いつかは自分にとって意味のあることをやる人生にしようと思いつつ、死ぬ瞬間まで、世間にとって意味のあることだけをただひたすらやり続けていたりします。
目次
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この『正直個性論』を読んで、私は2023年に見た映画の中で第1位の素晴らしい作品『映画プリキュアオールスターズF』のメッセージとリンクするものを勝手に感じてしまいました。
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プリキュアに影響を受けて姿を真似たらプリキュアなのか? いや、「美しき魂」を伴わずに暴力をふるうだけのそれはプリキュアではない。
映画・アニメ等の創作物に気軽に巨大感情のエモみを感じ、共通体験としての感性を発露してスッキリして終了の私たちに、創作物に感動したお前自身は本当に行動が伴っているのか? と投げかける傑作です。観てください(宣伝)
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