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究極のカフェ『アラジン』

『カフェ・アラジン』

昨年夏、夕暮れを待って訪れたところは私がずっと行きたくて待ち望んでいた屋台『カフェ・アラジン』。足利市で51年間も営業されている。

この屋台で飲んだ珈琲の味を私はこの先も忘れられないだろう。

私が普段訪れる喫茶店とは似つかずシンプル極まりない究極のカフェスタイル。

この屋台カフェは戦前外国船の料理人だった阿部弥四郎さんが外国で見たコーヒースタンドが忘れられず、65歳の時に開業。現在は二人の息子さん、哲夫さんと次郎さんがカフェをずっと守っていらっしゃる。

左が哲夫さん、右が次郎さん
屋台は創業当時のまま

屋外でランプの灯りで飲むネルドリップの珈琲の味は格別。コクはあるけど後味はすっきり。おかわりしたくなる味で私は三杯もいただいた。

居合わせた二人のお客さんはかれこれ40年近くこのカフェに通い続けているそうだ。

自然に店主と客同士で会話が始まる。訪れた夜はロスアンジェルス在住の私の友人が居たので、大谷翔平の話題で大いに盛り上がった。

地元の高校生もここの珈琲を飲みに訪れるそうで、またこのカフェで出逢って結婚するカップルも何組もいたそう。

ここでさまざまなご縁と時が交差していくのだろう。

今では駐車場の一角、簡易屋根の下での屋台営業だが、二年前まではずっと十字路の角で営業、毎日自宅から屋台を運び設営すること約50年。夏は突然の雷雨に降られ全身ずぶ濡れになりながら撤収したことは数え切れないそうだ。

半世紀もの長い年月、変わらずに街角で珈琲だけを淹れ続け、立ち寄る人々に寛ぎの一杯を提供してきた阿部親子。彼らの生き様と美味しい珈琲を感じるには、作り込み過ぎる空間はいらないのだ。


薄明りの元飲む珈琲は格別
創業者弥四郎さんが中東で購入されたランプ

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