上っ面研究記⑴「オフィーリア」

上っ面研究記⑴「オフィーリア」

最近の文學界で、市川沙央さんが、『オフィーリア23号』というタイトルの小説を載せていた。まだ、内容を読む前に、この時、とっさに浮かんだのが、小林秀雄の『おふえりあ遺文』だった。オフィーリアとは、オフエリアと、同音だなと思った。無知な自分を晒す様だが、オフィーリアとは、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『ハムレット』に登場する女性であるらしい。シェイクスピアは、『マクベス』しか読んで居なかったため、気付かなかったのだ。すると、太宰治の『新ハムレット』が脳裏を過るのは、当然のことだった。

ここで、学生時代以来、長らく読んで居なかった太宰治の『新ハムレット』を冒頭から読み返すと、この様な文章が蘇る。

「人物の名前と、だいたいの環境だけを、沙翁の「ハムレット」から拝借して、一つの不幸な家庭を書いた。」『新ハムレット』/太宰治

ここで、沙翁(さおう)という名前が登場する。沙翁を検索すると、シェイクスピアの事を指すと書かれて居る。市川沙央さんの、ペンネームの由来は、このシェイクスピアの事を指す、沙翁(さおう)から来ているのではないか、とふと思った。勿論、推測の域を出ない考察ではある。上っ面の考察である。

この様に、遡及する形で、「オフィーリア」の名前を知ったのだが、確かに、『オフィーリア23号』も、『おふえりあ遺文』も、『新ハムレット』も一度は通読したはずなのに、この名前の使用の流れに気付かなかったのか、不徳の致すところではあるが、勿論最大の失敗は、シェイクスピアの、『ハムレット』を読んで居なかったということに尽きるのだが、一連の流れが、克明に繋がって、疑問が氷解した次第である。タイトルだけに引っ張られた、上っ面研究記⑴は、「オフィーリア」について、であった。

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