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第12篇『銃声人語』

侮蔑の雷管
嘲笑の薬莢
正義感の火薬を詰めて
軽口の弾頭で塞ぐ

承認欲求の撃鉄
快楽物質の撃針
引鉄は気楽に引こう
Enterキーを叩くように

銃口は選り取り見取り
文字通り口に
ペンを握る指先に
アカウントの数だけ並べて
スレッドの許す限りうちまくる

悪は何処だ
呵責なくうてる的は何処だ
正義に浸れて暇も潰せる
愚かな馬鹿は何処にいる

酷いことなどあるものか
みんなが挙ってうっている
何処の誰かは知らないが
悪い奴に決まっている

正義は我にあり
悪を働く方が悪いのだ
反論する奴もまた悪だ
どれだけうたれても自己責任

そしていつか狼狽える
殺してしまったその後で
そんなつもりは無かったと
言葉をうち込んだその口で

知っていたはずだ
銃弾は銃口には戻らない
deleteキーなどありはしない
うたれた誰かの心には

俺は
私は
悪をうちたかっただけなのに
そう叫ぶ声すら既に
人ではなく銃の声

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